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 A Hard Day’s Night

 メルヴィア達が店に帰ると、店長達が店内に残っていた。
「店長、帰りが遅くなってしまいすみません」
 メルヴィアは店長に向けて深々と頭を下げる。
「いやいや。聆珈君達が無事でよかった。今日は給料日だからね。残っていたんだよ」
 笑顔で店長は言うと、ユーシスに視線を向けた。
「と、言う事です。では、皆さんにお給料渡しますね」
 ユーシスから白い封筒に入った現金を受け取ると、ふと新しいぬいぐるみが欲しかった事にメルヴィアは思いだした。
「メルヴィア。このお金メルヴィアにあげるよ」
 ルースが受け取ったばかりの封筒を差し出してきたが、メルヴィアは受け取りはせずに手で制する。
「それは嬉しいのだが、その気持ちだけで十分だ。彼女にでも使うといい」
「……そうか。そうだな。ナナに何か買っていくか」
「なぁ、メルヴィア。このぬいぐるみをあげるよ」
 シャウラの呼びかけにメルヴィアは振り向くと、かわいく白い猫のぬいぐるみを持って立っていた。
「今日は私の誕生日ではないのだが。それに、特別な記念日と言うわけでもないな」
 何故ぬいぐるみを用意しているのか判らずに、メルヴィアは考えこむ。
「俺はメルヴィアに会える日はいつも特別な記念日なのさ」
 さらっとキザなセリフをシャウラは言い、メルヴィアにアピールをしたのだが逆効果だったのには気がついて居ないようだった。
「すまないな。意味も無くプレゼントをもらう訳にはいかないんだ」
 そうきっぱりとメルヴィアはシャウラに言うと、
「それでは先に失礼する。お疲れさまでした」
 メルヴィアは店長に一礼すると、女子更衣室へと去って行った。

 その後――

 行き場を失った猫のぬいぐるみは、星姫の提案によりハロウィンの魔女の帽子を被せられて店の前へと置かれることになったのだが。
 かわいいとの評判により、十月からの店の売り上げが少しだけ伸びる事はまだ誰も知らない。