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モンスターの森の街道作り

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モンスターの森の街道作り

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プロローグ

「――と、説明は以上です。何か質問はありますか?」
 街道作り当日。あらかじめ渡されていた手順や注意事項をまとめた資料の説明をあらためて終え、村長は集まった冒険者達にそう聞く。
「特にないよ。こういった仕事に慣れててとっさの状況判断能力がある冒険者が中心になって動き、指揮を執る。村の人達はそれを手伝う。基本的にはそういう事だろ?」
 村長の確認の声に熾月 瑛菜(しづき・えいな)はそう返す。見渡すと他の冒険者達も同じような見解をしているようだった。
「はい。特にモンスターへの対処に関しては完全に一任する形になると思います」
「あたしらは自由に動けてその中で村の依頼を達成すればいいわけだ」
 瑛菜は村長の説明をそうまとめる。
「……けど、やっぱり大変なのは薬草の植え替え作業か。村の人達をちゃんと守れればいいんだけど」
 そう言って瑛菜は少しだけ難しそうな顔をする。
 今回の依頼の一番重要な部分である薬草の植え替え。その大体の手はずが一部の冒険者と村人たちが植え替え作業を行い、それを他の冒険者達が護衛するというこうとになっていた。街道を作る森のモンスター達は薬草が生えているところでしか襲ってこないという習性を持っている。そのため他の場所では危険性は低いが、そこでの活動だけ危険が伴っていた。
「どうにかして追い払った後にアテナ達だけでやるってのは無理なのかな? 瑛菜おねーちゃん」
 難しい顔をしているパートナーにアテナ・リネア(あてな・りねあ)はそう聞きます。
「いや、難しいんじゃない? この間の調査の時、薬草持って帰ろうとした人が朝から日暮れ近くまでゴブリンたちに襲われ続けたらしいし。手段を問わなければ可能だろうけど……それじゃ依頼の一文に背くじゃん」
 手段を問わない……つまり森のモンスターを全て狩り尽くしてからゆっくりと街道作りを始めれば安全に作業をすすめることが可能だろう。一日や二日時間をかければおそらくここに集まった冒険者達ならできる。だがそれはここに集まった冒険者達の望む所ではないし、この村の総意にも反する。
 可能な限りモンスターを殺さない。それが今回の依頼のある意味一番重要な点であり、同時に難しい点でもある。
「大丈夫ですよ。アテナさん。村の人達は多少の危険があってもモンスターたちとの共存を望むとちゃんと話し合って決めてます。それに冒険者の方達が護ってくれると信じてますから」
「だってさ、アテナ。これは手を抜けないじゃん」
 村長の言葉を受け、どこか不敵な感じのする笑みを浮かべて瑛菜はアテナにそう言う。アテナもその笑顔を見ていつものような無邪気な笑顔をした。
「うん! アテナも頑張るよー」
 そうアテナは気合を入れる。周りの冒険者や村人たちもまた気合は十分のようだった。
「それじゃ、村長。行ってくるよ」
 冒険者達を代表して瑛菜は村長に出発を告げる。
「はい。行きましょう。瑛菜さん」
 それに一緒に行くような返事をする村長。
「……もしかして、村長も一緒に来るの?」
 面倒な事になりそうだという顔を隠せずに瑛菜はそう聞く。
「村の人達だけに任せて長たる私が安全な場所にいるわけにはいきません」
「安全な場所で待機してるってのも立派な長の仕事だよ……って言っても聞く様子はないか」
「ごめんなさい瑛菜さん。迷惑をかけるかもしれないのは分かっています。でも私、それでも知りたいんです。彼らがどのように森と暮らしているのか」
 彼らとの共存のためにと言う村長の言葉に瑛菜は一つため息をつく。
「あんたもあたしと同じだよ。世渡りが下手だ」
 全然似てないけどねと瑛菜はそう付け加える。
「あたしや他の冒険者の言葉にちゃんとしたがう。これが条件だよ」
 瑛菜の言葉にぱーっと明るくなる村長。
「よろしくお願いします、皆さん」
 そうやって頭を下げる村長を連れて一同は街道づくりに向かった。