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酔いどれバトル IN イルミンスール大浴場!

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第2章 疑惑と暴走

「ほう、ほど良い温度か……。ただでさえ酔いやすいお酒だが、これにより血行が良くなりさらにアルコールが体に回りやすくなる」
 アクリト・シーカー(あくりと・しーかー)が、短パン姿でワイン風呂に浸かりながら、色々と調べているようだった。
「しかし、見事に生徒達は酔いが回ってるようだな」
 アクリトは酒池肉林になっている生徒達を見回しながらワインに口をつけた。
「む?」
「よー、アクリト一緒に飲もうぜ!」
 ビニール製袋にたくさんのお酒をつり下げて、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)がアクリトの方へと寄ってきた。
 ラルクははじめからアクリトのためにお酒を準備してきていた。
「ふむ、それもまた一興か……」
「おうよ、秘蔵の梅酒も持って来たぜ」
 そう言いながらラルクはアクリトのグラスに梅酒をなみなみ注いだ。
「何か君、企んでいないか?」
「な、なにをおっしゃる、純粋に飲みたいだけだぜ!」
 楽しそうにグラスにお酒をつぐラルクに違和感を覚えたアクリトは聞いた。
 ラルクは上手く問いかけを交わすと、どんどんお酒をついではアクリトに飲ませていった。
「少し失礼してもよろしいか?」
 お酒を飲み合っていると、叶 白竜(よう・ぱいろん)が申し訳なさそうに入ってきた。
「おお、大丈夫だよな」
「うむ、まったく問題ない」
 ラルクがアクリトに確認すると、アクリトも深く頷いた。二人の顔は少々赤くなっていた。
「うわ〜凄いな、いかついおっさんが3人並んで……アツクルシイ」
 少し離れたところ、世 羅儀(せい・らぎ)は酒に浸かる男達を眺めつつぽつりとこぼした。
 がたいの良い事はもちろん白竜は入れ墨まで入っており、まさに『漢』という字がぴったり合う集まりだった。
 というのも心配な事があったためだった。
「だいぶ酔ってたからなあ、アクリト氏に粗相をしなければいいけど」
 そんな羅儀の不安はすぐに的中することになる。

「つまり普通のワインよりも酔いやすいってことなんですね」
「そうだ、あとはビタミンP――」
 ホットワインの効果、お酒の効力など、白竜はアクリトにお酒についてさまざまな質問をしていた。
 それを聞き流しながら相づちをラルクは打っていた。
「ラルク君、聞いていますか?」
 空返事であるラルクにアクリトは振り返った。
「お、おう。それよりも暑くねーか?」
「え、言われてみれば熱いような気もするが」
「よし! アクリト、水着脱ごうぜ!」
 そういうとラルクは立ち上がりアクリトの短パンに手をかけようとする。
「た、短パンは脱がなくてもよいのでは」
「堅いことをいうなよー、俺も脱ぐぜ!」
 ラルクは自分の短パンにも手をかける(フリ)をする。


「そういえばアクリト氏に聞きたかったんですが、ゲイって本当ですか」
「え」
 白竜から発せられた言葉に思わず二人は固まった。
「お、おう。そういやぁ、いろんなところからそんな噂がたってるぜ」
 ラルクももともとは、聞きたかったことだった。
 むしろそのために酔わせる作戦だったが、まさか先手を打たれるとは思っていなかった。
「なるほど、試してみるかね?」
 軽く笑みを浮かべながら、冗談でも言うかのように言う。
 平然とした表情でお酒を飲み続けていた白竜だったが、それを聞くなり突然立ち上がった。
「私の体をどう思いますか?」
「ほお、良い体だな。実に良い」
 ふらふらになった白竜から発せられた言葉にアクリトは手をあごに当てながら答えた。
 よく見れば、白竜の手は自身の短パンへと手がかけられていた。
「それは興味あるぜ!」
 ラルクが楽しそうに笑いながら、勢いよく白竜の短パンに手をかけ、半分脱がせようとする。
 アクリトはじーっと何かを考えるように、白竜の股間を見ていた。
「どうです? 私――だっ!?」
「よーし俺も――お?」
 が、白竜は奇声とともにワイン風呂へと前のめりになって倒れた。
「お、おお?」
 倒れた白竜の後ろに立っていたのは、羅儀だった。
「あー、すみません。ちょっとこの人酔ってるみたいで」
 白竜の腕を引っ張ると、そのままワイン風呂の外へと引き上げてしまった。
 残されたアクリトとラルクはしばし、羅儀に短パンを持って引きずられていく白竜を眺め続けた。