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リアクション
「急げ―、急いで空になった風呂桶にワインを供給しろ!」
お酒をお風呂に供給するシステムは至ってシンプルで、とても手間のかかるものだった。
謎の出来事により、ワイン風呂が空になったことにより裏は慌ただしくなっていた。
セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)はワインをせっせと、風呂桶に運び通していた。
「よっと……この忙しい時にマネキはどこいったんだ!?」
「さあー、どんどん飲むぞーっ!!」
浴場の酒飲み場スペースでひときわ元気良くレナ・メタファンタジア(れな・めたふぁんたじあ)がお酒を飲んでいた。
「ほら、飲んで飲んで!!」
「は、はい」
「む、わらわもか?」
レナはグラス2個、お酒を注ぐと草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)と神崎 輝(かんざき・ひかる)にそれぞれ配った。
二人はグラスをゆっくり飲んだ。
「ほう、これがお酒というものか……なかなか旨いのう。お変わりはもらえるかの?」
羽純は味を占めたのか、物足りなそうな表情で周りを見回した。
「にゃははははのは〜たのしいーですよ〜っ」
ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)は風呂場をクルクルと回りながら歩き回っていた。
羽純はそんなホリイの水着を引っ張って、止めた。
「はへ? どうしたんですか〜」
「おぬし酔っておるのか?」
「あはは〜よってないですよ〜っ。ただたのしいんですよ〜あははっ。あ、そうだ飲みます?」
そういうと、ホリイは黄色い液体の入ったボトルを取り出すと、羽純に渡した。
「ふむ、なになに……ウースキー?」
ウイスキーを羽純は天を仰ぎ、ウィスキーボトルの中身を空にしていく。
「わはは〜すっごいです〜。こんなきついお酒があっという間になくなっていくです〜」
「はやふにゃあっ!!」
羽純は飲み干したボトルを投げ捨てるとふらふらとどこかに歩いて言ってしまった。
「こ、これがお酒……飲んでも大丈夫ですよね?」
「大丈夫ですよ〜、ちゃんと未成年でも飲める用にしてます!」
お酒を参加者達に配る役を受けていたメビウス・クグサクスクルス(めびうす・くぐさくすくるす)がお酒をつぎながら答えた。
一瀬 真鈴(いちのせ・まりん)は興味深そうに、自分が飲むであろうお酒のラベルをみた。
そのお酒のラベルにはゴシック体で書かれた「銘酒「熊殺し」」、その下には「未成年向け版!」と手書きで粗雑に書かれていた。
「では、の、飲んでみます」
真鈴は少しだけ、お酒を飲んでみた。すると、目をつぶって、苦そうな表情を浮かべた。
「す、すごい味です!!」
「あ、あとこれ師匠からです!」
メビウスが後ろから大皿いっぱいに乗せられた【焼きあわび】を出される。
おもわずその大きさに真鈴は目が点になった。
「す、すごいです。いったいどこからこんなに……」
「ふふふ、私の秘密兵器があれば簡単なのだよ」
でかい招き猫、マネキ・ング(まねき・んぐ)が笑いながらメビウスの隣に現れた。
その手には、同じく大量の焼きあわびが抱えられていた。
「そこの人も、食べるといい。なかなかおいしいぞ」
「わーっ、ボクももらって良いんですかーっ!? うれしい〜です〜」
輝が目を輝かせながらアワビをみた。
輝の顔はすでに真っ赤になっており、片手にはすでに銘酒「熊殺し」が握られていた。
どうやらメビウスからもらって、すでに酔いに酔っているようだった。
「そういえば、このお酒はどうやってつくったんでしょうか?」
「それは師匠が作ったんですよ!!」
輝の言葉にすかさずうれしそうに応えたのはメビウスだった。
「い、いったいどうやって作られたんでしょうか、私、気になります!!」
真鈴が少し顔を赤くしながら聞く。
どうやら、ゆっくりとお酒が真鈴にも回っているようだった。
「ぱっかぱっぱ〜、酔いどれ放射能〜これを使うと(以下略)なのだよ」
「「おおー」」
全員が自身の取り出したアイテムに驚いてる中、マネキは後ろに向かって薄気味悪く笑っていた。
「ふふふ、これは我らからのサプライズだ……今に成果が出てくる」
「で、何が目的なんだ」
「それはもう、こうやって我の力を見せつけることで、我の偉大さに皆々平伏するだろう」
「また、ロクでもないこと企んでるのか」
ため息をつきながらセリスは、マネキの後ろに立っていた。
「げっ、いつの間にそこに」
「暇なら手伝え! ワイン風呂が空になってて大変なんだ。あとアワビを風呂に流すのは禁止だ」
マネキはそのまま、セリスの監視下の元でワイン運びを手伝わされてしまうことになった。
「あ、すまない、ワイン風呂はもうちょっと準備に時間がかかるから待ってくれ」
「わ……わかった。いそぐのだ……」
お風呂場の上で若干干からびてきているタコのような生物にセリスは声をかけた。
一方、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)と阿部 勇(あべ・いさむ)は静かに隠れて飲んでいた。
ただし、甚五郎のお酒は他の人に比べればゆっくりだし、勇はウーロン茶だった。
「あれ、お酒飲むのが遅いです〜?」
ひょっこりと、輝が甚五郎の前に現れる。
「ふん、お酒はやたら馬鹿みたいにガブ飲みする者ではない、静かにゆっくりと飲むものだ」
言い切るとグラスを揺らし、入っている氷が心地よい音を響かせる。
すると、輝はその隣の人が気になった。
「あれ、これお酒じゃないです?」
「ぎくっ」
勇はたじろいた。
そして、しばらく何かを考えると、すぐに答えた。
「あ、えっと。僕は車の運転をしないといけな――」
「えーい、のめのめーっ」
「ぎゃー、やめてください!」
断ろうとする勇に、遠くから聞きつけたレナが【お酒のセットされたレティ・ウォータージェット】で口を狙い流し込もうとする。
「ほら、甚五郎さんももっとのみましょうよ〜、おいしいお酒もってきましたよ!」
輝が甚五郎のグラスにウイスキーをなみなみに注いだ。
「……ちょっと多くないかこれは」
「大丈夫ですよ、たくさんの出る甚五郎さんならイッキいけます!」
輝は胸元で両手をグーにして、甚五郎を期待して見てきていた。
その様子に甚五郎はウイスキーを一気飲みした。
「ふっ、なかなか悪くない味だ」
一息入れようとした、甚五郎だったがすでにそのグラスには次のウイスキーがそそがれていた。
「ひ、一息いれてもいいだろ?」
「ダメです! ボクも飲みますからどんどん飲みましょう!」
二人は少々の間、飲み合いが続いた。
「ぼ、僕はさきに失礼します!」
レナのレティー・ウォータージェット攻撃に懲りたのか、勇は足早に浴場を脱出しようと出口へ向かった。
「そうは行かないであります!! イングラハム!」
突然の声とともに茶色い触手がワイン風呂から伸びてきた。
空になっていた風呂桶はいつのまにか、満杯にまでワインで埋まっていた。
「わわわっ!?」
「うおおっ!?」
「えっ、ボクも〜うわああ〜」
甚五郎、勇、輝が触手によって空に浮かび上がる。
「すぴ〜……すぴ〜」
ほかにもホリイが触手の中で寝ていたり、マネキやメビウスたちもじたばたしながらも触手に捕まっているようだった。
「この触手はさっきの!!」
同じように触手に捕まったセリスが声を張り上げた。
触手の正体はまさに、干上がりかけていたはずのイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だった。
イングラムはワイン風呂の中に浮かんでいた。
その上には葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が両手を腰に当てて、満足げな顔で周りを見渡していた。
「みんな酔っぱらうのでありますよ!!」
「は〜はっはっは」
急に甚五郎は笑い始めた。
「こういう、お酒の飲み方もよかろう。勇にもよい機会だ」
「じょ、冗談じゃないですよ!! 僕、お酒ダメなんですよ!?」
甚五郎と勇の会話を聞き届けた吹雪は叫んだ。
「作戦決行であります!!」
「わかったのだ」
吹雪のかけ声とともに、茶色い触手が一気にワイン風呂へと引き込まれる。
「うわあああああああああああああああああっっ!!!!」
勇の悲鳴とともに大きな水音が響く。
「ミッションコンプリートであります! よくやったであります、イングラハム」
その悲鳴の後、ワイン風呂にのこったのは。
本当に満足そうにワイン風呂につかった吹雪とイングラハム。
そして、顔を真っ赤にした勇達だった。
「ほへー……あ、眠い……」
勇はそのまま、お風呂を出ると寝込んでしまった。
「ふむ、ワイン風呂にダイブするなんて早々できるものではないな。なかなかこれはこれでたのしいぞ」
静かに飲むことが通だと楽しんでいたはずの甚五郎は、この状況をどうやら楽しんでいたようだった。
「ふふふ、まだターゲットはたくさん居るのであります!」
「ところで若干よってきたのだよ……」
意気込む吹雪だったが、対照的にイングラハムは目がうつろになりかけていた。
「ど、どうしたのでありますか!!」
「お酒が……体に回ってきて……体力も限界なのだ」
どうやら、先ほど風呂が干上がっていたことが、体力を消耗させ酔いやすい状態になっていたようだった。
イングラハムの触手は徐々に動くことすら難しくなっていた。
「くっ……ここで作戦は打ち切りでありますか……無念であります」
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