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リアクション
「勝負なのじゃ! エリザベス!」
「な、なんなんですぅ? 突然――あ」
お風呂につかっているエリザベスの元へと、神奈は歩いて言っていた。
だが、突然神奈の姿が水音とともに消えた。
「ふひゃはっ」
神奈はお風呂から顔を出すと、体制を立て直しエリザベスの方へと向かう……が
「ぷひゃっ」
足下がおぼつかない神奈は足が滑りふたたびお風呂へと顔を沈めた。
「……ありゃ、酔ってる?」
たまたまエリザベスの方へと遊びにきていたルカルカが神奈のほうへと向かうと、抱え起こしてあげた。
「うう、かたじけないのじゃ……じゃなかった、勝負なのじゃっ!!」
「しょーぶですぅ?」
「あ、ごめん手が滑った〜」
ルカルカは持っていた神奈の手を突然離した。
と、とたんに一緒にお風呂に沈むと、神奈の体をくすぐり回した。
「ひゃははっ、な、なにをするのじゃ〜!」
「ここ〜、ここがよいの〜?」
「やーめーるーのじゃーわははははっ!!」
酔いがきてることもあり、逃げることはおろか、くすぐられることでの感覚が通常の倍になっていた。
「わっはははは、おもしろいのですぅ、私もまざりたいのですう!」
おそらくまだ幼い心というのがあるからなのだろう。
これを端から見ていたエリザベスは、沈められる神奈をみて笑っていた。
「おう、気持ちよく遊んでこいや」
カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)はエリザベスの頭をぽんっとかるく叩いて送り出した。
「な、ひ、卑怯じゃぞ〜! さ、さくや〜」
さらにエリザベスにもくすぐられる神奈。
笑い死にそうだった神奈は、たまらず咲耶の名を呼ぶが、咲耶はきてくれなかった。
「え、咲耶さん? あ、さっきの人なら……ほら」
「むにゃ……もう飲めない……す〜」
ルカルカが指さす方をみて神奈はこの作戦がすべて失敗だったとそのとき初めて悟った。
神奈は先の飲み合いすでに酔いつぶれて眠っていたのだった。
そもそも、ワインを飲みながら作戦を指示した参謀こと十六凪は酔っていたのだ。
酔ってる人がまともな作戦をたてれるわけが無かった。
「ぬ……ぬかったはははっ…じゃゃああわははははっっ!」
笑い後で悲鳴がお風呂には響き渡った。
「エリザベスどの、もうそのくらいにせぬと……ルカも綾村どののところへ行きませぬか?」
「「たのしいから、やだ」ですぅ」
夏侯 淵(かこう・えん)はすこしあきれながら二人に提案を促す。
だがエリザベスとルカは口をそえ断ってきた。
「はあ……しょうがない……」
無理矢理止めるべく淵は、お風呂の中へと入ろうとする。
「あ」
が、淵から巻物が床に転がる。
同時に淵は、浴場の天井につきそうなくらい大きな竜へと変化してしまった。
「お、おお?」
その見晴らしの良さに、淵は思わず感動していた。
「急に視界が高くなったみんなが小さく見えるではないか! もう、ちみっことは言わせぬぞ!」
「お姉さんもういっぱいくれ〜」
「良いぜ」
少し離れた場所で朝霧 垂(あさぎり・しづり)はお酒を加工していろんな人に呑ませていた。
「うまいぜこれ、ヴィンテージ物?」
「ヴィンテージじゃないぜ、発酵をあげさせて10分で作った」
そのお酒は、裏方でワインを作っているポータラカ人に【ゴッドスピード】をかけて、超速発酵を更に加速させできあがった「超有名銘柄の日本酒」だった。
それを、相田 なぶら(あいだ・なぶら)はおいしくいただいていた。
「何だあれ」
「うおおおおっ、なんだあのでっけーの!? これは、俺、勇者の出番だろ!! 行くぞ!」
なぶらは竜の足下へとかけだした。
「おい、淵、何変化してんだ!」
「へっへー、おまえちみっこいな!」
淵は下から声をかけてくるカルキノスをおちょくった。
「こいつ……俺が変化したっておもわれるじゃねえか……ん?」
カルキノスは、淵の足下へ向かっていく人影、なぶらを見た。
「うおおおおおおおおっ」
「なんだあ? いたくもかゆくもねえぜっ!」
なぶらはその辺に落ちていたデッキブラシと木桶を構えカルキノスに立ち向かう。
が、まったくダメージは与えられない。
「うおおおっ、デッキーブラシー!」
それどころかデッキブラシはいともたやすく折れてしまった。
「おおー、なんかよくわからねえが、なぶらのやつがんばってんな」
ワイン風呂でカレン・ヴォルテール(かれん・ゔぉるてーる)はなぶら達の戦いを観戦していた。
「しっかし、なんだあのドラゴン……でっけーなー」
「良い迷惑だぜ!」
若干その戦いを垂は快くは思っていなかった。
なぜなら、彼らが暴れれれば暴れるほど埃や砕けた壁の破片が散る。
そのためワイン風呂が汚れるからだった。
「ったく……けっこう大変なんだぜこのくらいの規模のワイン風呂をきれいにするっていうのは」
愚痴を言いながらも垂は黙々とワイン風呂を【清浄化】していく。
「へ、へえ、そりゃあ大変だぜ?」
あまりカレンにはよくわからないことだった。
「しっかし、あれだけでっかいとなぶら助けに言った方が良いかもな……」
「か〜れ〜んっ!」
「うおっ!?」
突然カレンの背後から、女性の手が伸びてきた。
「あははは〜、私よっちゃったかもです〜」
「ふぃ、フィアナ様!?」
フィアナ・コルト(ふぃあな・こると)は顔が真っ赤になっていた。
そのままのばした手で、カレンの胸部を抱きしめる。
(フィアナ様が! まさかフィアナ様が私なんかに!! やべええええええっ)
心の中で発狂、歓喜、拍手喝采していた。
「どおーしたのです〜? なんかはんのうがうすいれすよ〜?」
「いっ、いえ、なんでもありません!」
「えへ〜なら、いいんですよ〜。それにしてもこんなすべすべお肌……ずるいです〜」
「ふ、フィアナ様そこは、あっ! だっ、だめです!」
「ん、今良い反応でしたね? ここ?」
「あっ」
フィアナの手が、カレンの体の至る所を探り回りはじめる。
(やばっ、昇天する!!)
そのこそばゆさ、きもちよさに体が自然に震える。
「フィアナさま、もっともっ――」
「ここ? ここがええのん? アハハハハ」
どんどんフィアナの手は胸部から足へと移っていき過激な物になっていった。
(も、もうなぶらとかどーでもいいや。今の天国を楽しむ!)
その後もフィアナとカレンの戯れは続いたようだった。
ルカルカ達と淵の竜化にカルキノスとダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は頭を抱えていた。
「おい、どうすんだ?」
「とりあえずルカとエリザベスの犠牲者を先に助けねば……あっちのほうが死人が出かねない」
ダリルが冷静にこの状況を打破するべく方法を考える。
「おーけ、俺がルカからどうにか救い出せないか試してみる」
カルキノスはそういうと、振り返りルカ達へと向かう。
「おい、おめーら。そのへんにしておけ。死人がで――」
「わーっ、獲物がふえたよ〜」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」
カルキノスはルカルカの怪力にはあらがえず、無様にお風呂に沈められてしまった。
「……カルキノスの犠牲は無駄にはせん」
ダリルは小さくつぶやきながら合掌した。
「なんの騒ぎかと思いきてみれば」
鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)が騒ぎを聞きつけて駆けつけてきた。
ルカルカ達の状態を見て何が起きたのか一瞬でわかったのか、ため息をついた。
「こりゃあ、大惨事だ」
「ルカを止めるのを手伝ってもらえるだろうか」
「しょうがないですね……」
「あと、そちらの方」
「え、俺かい?」
お風呂を浄化し疲れていたところだった垂に声をかけると、小声で何かを伝えた。
「できるか?」
「あー、まあできないことはないが……」
「では。お願いする」
そういうとダリルと真一郎はルカ達の方へと向かった。
「あ、真一郎!! わ〜、真一郎だ〜」
「っとと……酔ってます?」
「酔ってないよ〜」」
ルカは真一郎の姿を見ると一目散に、真一郎に抱きついた。
真一郎は高鳴る胸を押さえ、ゆっくりと抱きついてきたルカをおろす。
エリザベスの方をみると、そちらはダリルがすでに確保した後のようだった。
「し〜んいちろ〜」
「なんですか?」
「えへ、呼んだだけだよ〜っとととと」
天使のような笑顔で言うルカに真一郎は見とれてしまうが、それよりもこけそうになるルカに現実へと引き戻された。
「ともかく、そろそろあがりませんか? なんだか酔ってしまって」
「えー、やだー。もっと飲むー一緒にのもうよ〜」
「静かな場所、外で二人っきり飲んだ方が良いとおもいません?」
「あ……うん」
真一郎が平然と説得する。どうやらルカの扱いには慣れたとばかりだった。
ルカもその説得に納得したのか深く頷いた。
「それじゃあ、行きましょう」
「わーい〜」
真一郎はしっかりとエスコート、ルカは照れながらも、うれしそうにお風呂を出て行った。
「さすが、真一郎だ……あとは淵だが」
「こっちは終わったぜ?」
垂が報告にくる。その手には大量のお酒が入ったかごがぶら下がっている。
「しっかし、竜に聞くような強いお酒なんて初めて作ったぜ……」
「すまんな……たすかった」
竜化した淵は垂の背後で、人間の形となってぐっすりと眠っていた。
ダリルと垂の行った作戦は、ごく簡単な物でお酒で酔わせるというものだった。
そのためには竜にでも効くお酒を大量に造る必要があった。
まさに垂の【ゴッドスピード】でさらに発酵させたお酒が役にたったのだった。
たくさんの人が眠ることでどうにか騒ぎは収まったのだった。
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