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ハロウィンパーティー OR ハードロケ!?

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ハロウィンパーティー OR ハードロケ!?

リアクション

 
6/ ダイビング

「ふああっ!?」
 瀬乃 和深(せの・かずみ)は、女装している。
 あちこち通り過ぎていく、陽気な幽霊たちにいちいち怯えてはそうやって悲鳴を上げる妹、瀬乃 月琥(せの・つきこ)の様子を大いに楽しみながら。
 
 大画面の、キロスの様に対する反応は、和深の周囲では十人十色。
 ルカルカは、けらけら指差して笑っているし。
 詩穂は、「こんなことになってたんだ……」とばかりにやや、ドン引いているし。
 柚と三月は、苦笑いをしている。
 ああ、それに。キロスそっちのけで耀助をひたすら探している、悲哀たちなんてのも。
 
「なんだなんだ、魔女のくせにお化け、怖がってるのか?」
 
 かたかたしている妹に、意地悪く笑う。もう少し、弄ってやろう。そう思っていた。
 だが、和深の想像していたより、月琥のほうはいっぱいいっぱいで、沸点を突破していたらしく。
「にゃあああーっ!!」
「あ、おい月琥っ?」
 暴走気味に、突如彼女は走り出す。その前方には、ハロウィンの扮装としてはポピュラーなジャック・オー・ランタンのかぼちゃマスクを被ったローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)
 それ、重くないの? 本物のかぼちゃでしょ? としきりに訊ねるフルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)を彼は連れていて。
「いや、そりゃまあ明らかに重いけど……ってぶほっ!?」
 その彼に、月琥は飛び込む。鳩尾に直撃を喰らって、斃れて。
 そんなローグの上にマウントポジションをとり、頭のかぼちゃマスクに手をかける月琥。
「ふんぬっ!!」
「ちょ、ちょっとあなたっ!?」
 マスクが引っこ抜かれて、ローグの顔が露わになる。代わりに、それを月琥がすっぽりと頭から被る。
「へっ!?」
 そこからの動きも、実に機敏だった。
 重いはずのかぼちゃマスクを被っているとは思えないくらい素早く彼女は立ち上がり、踵を返し。
 さんざ彼女の怖がりっぷりを茶化していた和深のもとに、突撃してくる。
 やばい、と思った時にはもう遅かった。月琥は、最後のひと足を踏みきっていた。和深の視界は、真っ暗になった。
 
 顔面へとまっすぐに直撃した──かぼちゃマスクの、ヘッドバッドによって。
 

 
 
十月上旬(パーティより一週間前)シボラ ジャングル地帯 
動物観察小屋近く 温泉
 
 
 緒方 太壱(おがた・たいち)は、むせ返り、咳き込んでいた。
 嫌と言うほどに、胃の中いっぱいにお湯を呑んでいたからだ。
 
「……大丈夫ですか?」
 
 いや、それだけならばいい。
 どうにか、簀巻きにされて温泉へと投げ込まれたその無茶な恰好のまま湯の中から這い上がりはしたものの。
 両腕が不自由なまま辛うじて立ち上がり、そこから逃げ出そうとしたところで、今申し訳なさそうにバスタオル一枚を巻きつけただけのまさに湯上りの姿で太壱の背中を擦ってくれている東 朱鷺(あずま・とき)が温泉の周囲へとしかけていたインビジブルトラップの麻痺に、かかってしまった。
 結果、今度は麻痺した状態でお湯の中にどぼん。そりゃあ、溺れるさ。
「すいません、まさか人がひっかかってしまうなんて」
「いや……いいって。気にすんな」
 引っかかったのは、完全に事故なんだから。しゃーない。そこは切り替えていこう。
 おもいっきり太壱をここに投げ込んでいった誰かさんたちは完全に故意、ギルティだけれど。
「それにしても、お猿さんたち……極楽猿、現れませんねえ」
「ほんとーはいないんじゃねーのかあ?」
 ごろりと仰向けになって、背中に落ち葉がべたべたとくっつくのも気にせず、太壱は大きく息をついた。
「なんだかみなさん、向こうに急いでましたけど。ガイドさんに連れられて」
「知ったこっちゃねえや」
 ずぶ濡れの身体を、晴れ渡った太陽の光がぽかぽかと照らして乾かしてくれている。ひとまず、しばらくはそうしていようと太壱は思った。
 
「縄、ほどきますね?」
「あー。ゴメン、助かる」
 
 そしてそれは、故意によるものではない。
 太壱の縄を解こうと、前のめりに屈みこんで手を伸ばしてくれた朱鷺の、バスタオルに隠された胸元が時折ちらちらと見えること。
 そのラッキーも、これまたひとつの事故といえた。
 

 
 ──そして、だ。
「あっ?」
 木々が、明らかな重みとともにみしみしと音を立てて、頂上から激しく揺れていた。
 その上を移動する、動物の動きひとつひとつと重力とを受けて。
「あ、あれ全部極楽猿!?」
 キロスが、そう言うのも頷ける。
 だって、目の前の木という木、すべてといっていいくらいの幹にはそれこそ、猿、猿、猿。
 皆が、同じことを思っていた。
 
 ──極楽猿、いっぱいいるじゃん。
 
「さすがにここまでいっぱいというのも……」
「さんざ温泉で張り込んだり、夜通し観察してたりなんてのは一体なんだったのかと……」
 柚が、三月が素朴に、けれどまったくもって正論の感想を吐く。
「と、とりあえず! あいつらにトリックなりトリートなり成功させればこのロケ、終わりなんだよな!?」
「うん、P(プロデューサー=レティシア)からはそう言われてるね」
 
 だったら、やろう。とっとと終わらせよう。
 意気込んで身構えるキロス。
 だが……残念ながら、彼は出遅れた。
 
「いけない、逃げろっ!!」
「え?」
 
 飛んできたのは、章の声。
 振り向けば、既に走り出している章と、他の面々と。
 そして。スピーカーマイクを手にして大きく息を吸い込んだ、水着の樹の仁王立ち。
 歌う気だ、と気付いたところで、時すでに遅い。
 キロスと樹の距離は、猿たちとの間以上にまさしく至近距離。
 
 そこから先のことをキロスは、よく覚えていない。
 ただ、カメラのフラッシュと──そして次々、木々から落ちていく極楽猿たちをうっすらと、見たような気がする。それだけだ。
 

 
「さーて! それじゃあ行ってみようか!」
 美羽が、屋根の上。天高く拳を突き上げる。
 パーティ会場で各々既に盛り上がりまくった観衆は、彼女の動作に合わせて同じように腕を振り上げる。
「案外、冷静なんだね」
 いつの間にか屋根の上に上がってきていたルカルカが、先ほどから黙りこくっているキロスに話しかける。
 手には、カボチャのプリン。参加者のひとりが作ったという話だけど、なかなかにおいしい。
「……観念したっつーか、いつ発射されるかわからないだろ」
 なんかもう、ひどい目遭いすぎたしな。
 肚、くくったってことだね。肩をすくめ、ルカルカは苦笑する。
 
「ま、怪我したらヒールくらいはかけてあげるから」
 
 某が地上からこちらに向けているカメラにピースをつくって、黒ドレスのルカルカは踵を返し去っていく。
 理知が、きらきらした目で楽しみだとばかりに、カタパルト上を見上げている。
 沙夢が、いい感じに酔っぱらっている。
 忍が──決定的瞬間を一枚に収めようと、スタンバッっていた。
「あー、もう! よし、いつでもこい!」
「お、言ったね! それじゃー、みんな!!」

 せー、の。

『キロスくん、お願いします!』

 そして一隻の舟が、夜空高く舞い上がった。
 
−fin−
 

担当マスターより

▼担当マスター

640

▼マスターコメント

 ごきげんよう。ゲームマスターの640です。お待たせしました、リアクション『ハロウィンパーティー OR ハードロケ!?』をお送りしましたが、いかがだったでしょうか?
 ……えー、はい。
 趣味に走りすぎですね、はい。まあどこからどう見ても、わかる人にはわかる感じになってるとは思いますが。反省。
 全体的にやはり、ロケに行かれた方のほうがシチュエーションの豊富さの関係で動きが多くなってしまってますね、はい。これも未熟さを反省。
 書いてる側はめちゃくちゃ楽しく書けたのですが、皆様はいかがでしたか?楽しんでいただけたなら幸いです。
 
 それでは、また。次のシナリオガイドでお会いできることを祈りつつ。


※記念アイテムにつきましては2012年11月22日(木)中までにお送りする予定です。