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悪魔の鏡

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悪魔の鏡
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エピローグ:金鋭峰は知っている


「ご苦労だったな。下がっていいぞ」
 報告を受けた金鋭峰は、部下達を部屋から退出させると残念そうに窓の外を眺める。
「鏡の製造主には逃げられたか……。手引きした者はずいぶんと食わせ物だな」
 バビッチ・佐野の工房を捜索した者たちの話によると、彼らが踏み込んだ時すでにもぬけのからだったという。
鋭峰は誰を責めるつもりもなかった。もとより、今回の強行捜索には半ば彼の私情も含まれていたのだ。いきさつからごたごたあったらしいが、もう事件は終わったのだ。あの錬金術師が空京を去り彼らの前に姿を現さないなら、もう放っておいてもいいだろう。
事件に巻き込まれ連行された者たちも、あの後ほどなく解放され無事に帰っていった。何の問題もないのであった。
「ありがとうございます、団長さん。辺境の貧困救済にまで手を差し伸べられる、あなたの度量に感服いたしました」
 執務室のソファーでのんびりとお茶を飲んでいた御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が微笑んだ。彼女は、鏡を使った物資の倍増計画をまとめ、堂々とやってきたのだった。
 今回の事件は、金鋭峰とシャンバラ教導団が主立って指揮を執っていたと言っていい。だから、彼女はバビッチ・佐野を辺境の村まで送り届けてきた後は、一人で行動せずに、敢えて鋭峰の元へと相談を持ちかけたのだ。物資支援の増強計画は成功するだろう。その時の手柄と民衆からの尊敬は鋭峰と国軍が持っていけばいい。聡明な少女の瞳はそう語っていた。
 鋭峰は皮肉げな表情を崩さずに言う。
「ふん。相変わらずソツのない娘だ。抜け目のなさといい、大胆で図々しいところといい、御神楽環菜にそっくりだな。……彼女は壮健か?」
「おかげさまで、幸せにやっております」
「それは結構だ」
 鋭峰は、頷く。舞花の提案を黙認しようという合図だった。これにより、彼女の保有していた悪魔の鏡とバビッチ・佐野の放置は確定したのだった。後は人々のために役立つだろう。
「君なら、万一にも粗相はないだろう。あとはよきにはからえ」
「良いお返事をいただけて、来た甲斐がありました。……団長さんの気苦労とお心遣いをお察しいたします」
「私は、これでも物分りはいいほうなのだよ。部下には甘い顔を見せないだけでな」
 鋭峰はふっと笑って、デスクの上に置かれた小包を見た。それは、つい今しがた彼宛の荷物として届けられたものだった。
「おや、まあ……、それは……」
 舞花もそれを見て驚いた表情になる。
「そう、悪魔の鏡だ。私とて、救済手段を考えていないわけではなかったのだよ」
それは、つい今しがた彼宛の荷物として届けられたものだった。
 ふと虫の知らせで、鋭峰は執務の合間に普段あまり馴染みのないネットオークションなる電脳競売に参加してみたのだった。とても気になる鏡が出品されているのを見つけたので落札したのだが……。この送られてきた荷物の中身がそうだった。2023年のネットオークションは反応も早いのだ。その日のうちに手元にやってくるとは便利な世の中になったものだ。
「まだまだつめが甘いな、諸君……。この鏡は、私自身の手によって処分しておこう。自分自身への戒めとして……」
 彼はいつもの冷笑を浮かべると、何事もなかったかのごとく忙しい日常へと戻っていったのであった。

担当マスターより

▼担当マスター

車 修理

▼マスターコメント

 みなさま……、大変お久しぶりでございます。車 修理です。いつもお世話になっております。

 想像をはるかに越えた大幅遅延により、みなさまに多大なご迷惑おかけしましたことをお詫びいたします。
 
 理由としましては、私事に追われていて執筆の時間が全然取れなかったことにあるのですが、そんなことリアクションを待っておられたみなさまにとってみれば全く関係のない話でありまして。
 言い訳にすらならないので、何も申し開きはいたしません。

 で……、時間をかけた挙句のリアクションが「ごらんのありさま」です。
 本当にいつもありがとうございます。
 軽く済ませるつもりが、いつもどおりの有難いディープなアクションに対してみっちりお返しをさせていただきました。
 どこか楽しんでいただけるところがあれば、幸いです。

 
 また、まことに勝手ながら、このシナリオを区切りにしばらく活動を休止させていただきたいと思います。
 時間の取れない日々が続きそうですので、みなさまのご期待に答えられにくくなりそうだからとの判断です。

 夏ごろには再起動出来たらと考えておりますので、その頃まで覚えておられたらまたお相手いただきたく思います。
 私も、またみなさんに楽しんでいただけるようにたっぷりと鋭気を養って参ります。
 
 
 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。