校長室
学生たちの休日10
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★ ★ ★ 「こ、これは、この物体はなんでありますか?」 地下に下りたノール・ガジェットは、謎の物体に遭遇して困惑していました。 まさか、本当にクリーチャーに出会うなどとは……。 それは……、筆舌に尽くしがたい形状をしていました。魚介類やら、獣の肉やらがむきだしで合体していて、ねっとりとした粘液状の物が全体をつつんでいます。臭いは凄まじく、まるで腐臭のようです。それが触手のように大根や人参を生やしていて、うねうねと移動してきます。まさか、生きているのでしょうか。 「駆逐するであります。状況開始!」 ノール・ガジェットが目からガジェットさんビームを発射しますが、クリーチャーは素早く逃げました。およそ常識外れです。 「いったい、どうしたらいいのであります……」 だんだんと追い詰められて、ノール・ガジェットが焦りました。そして、ついに、クリーチャーが襲いかかってきました。 「やられる……」 そのとき、クリーチャーの後ろに人影が現れました。一瞬の早業で、クリーチャーを……食べてしまいました。 「ごちそうさま……です。楽しかったですよ……。ふふふふふ……」 なんだか満足そうに、ネームレス・ミストが言いました。アーマード・レッドに地下のこと歩聞いて、興味を持って下りてきていたのでした。どんなゲテモノでも、ネームレス・ミストにとってはごちそうです。 ★ ★ ★ 厨房の地下では戦いが繰り広げられたわけですが、広間の方も似たようなものです。 飲めや歌えで、最後には何がなんだか分からなくなってしまいました。 「それじゃ、このバカは回収していくぞ。世話になったのう」 ルシェイメア・フローズンが、ジャイアント・ピヨにアキラ・セイルーンを乗せて、八神誠一たちに言いました。 他のお客さんたちも、三々五々に帰っていきます。 「さて、後片づけ……。げっ、厨房の地下扉が開いている……。あそこには、オフィーリアの失敗した料理が封印されていたはず……。いったい、何がどうなったんだ?」 驚きつつも、ちょっと怖くて確かめに行けない八神誠一でした。 ★ ★ ★ 「お蕎麦できたわよー、涼司く……あなたー」 山葉 加夜(やまは・かや)は、夫の山葉 涼司(やまは・りょうじ)とともに、ツァンダの我が家へと里帰りしていました。山葉涼司は新しくニルヴァーナ創世学園に転属となったため、メインの住居は現在ニルヴァーナになっています。けれども、やはり我が家はツァンダに残しておいたのです。 今までは、パートナーたちとみんなが集まって、わいわいとパーティーのように過ごしながらの年越しでしたが、今年は初めての夫婦水入らずの二人っきりです。嬉しくもあり、ちょっと照れくさくもあります。 「いただきまーす」 二人で声を合わせると、山葉加夜と山葉涼司は年越し蕎麦を食べました。 「さて、そろそろカウントダウンかな」 炬燵の中でのんびりと足をのばしながら、山葉涼司が言いました。 「今年はいろいろあったなあ。激動と言ってもいい年だったぜ。さて、来年はどうなることやら」 「楽しい年になるといいですね」 感慨深げに言う山葉涼司にむかって、山葉加夜が言いました。 仲良くテレビを見ていると、ツァンダや空京神社が映し出されて、カウントダウンが始まります。 「10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……」 「あけましておめでとう!」 テレビの放送と共にカウントダウンを一緒に行った山葉涼司と山葉加夜が、声を揃えておめでとうを言い合います。 「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 あらためて炬燵板の上に両手をつくと、山葉加夜が深々と頭を下げて山葉涼司に言いました。 「いえいえ、こちらこそ、今年もよろしく。そのお……奥さん……」 少し照れくさそうに、山葉涼司が同じ格好で挨拶を返します。 なんだか、正月から、似た者夫婦なのでした。