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【メルメルがんばる!】老夫婦の小さな店を守ろう!

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【メルメルがんばる!】老夫婦の小さな店を守ろう!

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「これはいったいどういうことなの?」
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)香 ローザ(じえん・ろーざ)に尋ねる。
 店舗主人をロープで縛りあげた香は手を止めて、途方に暮れる老婦人を見つめながら言った。
「奥さん。説明してあげてください」
 香のパートナーである賢狼は老婦人に寄り添っている。
「……ここにあるヌイグルミは私達の一族なんです」
「え?」
 ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が声を上げた。
「キマクは恐ろしい場所でした。歩いているだけで蛮族に襲われ、心やさしい者であればる程、他人を気づつけまいとするものであればあるほど、騙され、陥れられ、殺されていく」
「それと、ヌイグルミがどういう関係を?」
 ユーリカは理解できないという表情で老婦人に尋ねる。
「ヌイグルミを襲う人などいないでしょう?……だから」
「それで、一族を全員ヌイグルミにしたんですか?!」
 非不未予異無亡病は信じられないといった様子で声を上げた。
「主人は高名な魔法使いです。命を劣化させることなく、一時的に人間をヌイグルミ化させ、戦闘から守ろうとしていたんです」
「えーと。このおじいちゃんいい人なの?悪い人なの?」
 ユーリカはグルグルになる頭を抱えて、非不未予異無亡病に尋ねる。
「……本人の意思でないのならば、それはやっちゃいけないことです」
 香が重い口を開く。
「おじいさんは、一件頼りなく見える風馬さん・ノエルさん・榊さん・そしてメルメルさんを守ろうとしてヌイグルミ化させたのかもしれません。ヌイグルミ化された方々は全員心やさしい方々でしたから。だけど、みなさん、それぞれの意志でこの店を守ろうと集まってくださったんです。なにも出来ないまま、戦闘の集結を待つだけだなんて、彼らはどれだけ心苦しいことか」
 香は店舗の屋根に上り、戦況を見つめていたのだ。そして、店舗の主人が、魔術で人間をヌイグルミにしていたのも目撃していた。事の真意を見極めるため待機していたところ、非不未予異無亡病らがあわやヌイグルミ化されようとした。そこを阻止したのである。
「イコンに乗っていたそのヌイグルミは?」
 非不未予異無亡病が老婦人に尋ねる。
「この子の、兄です」
 指し示したのはクマのヌイグルミである。それはメルメルが買い取って行ったヌイグルミだった。
「メルヴィア少佐の手元にいられるのであれば、この子の安全は守られる……そう判断したんです」
「勝手よ!」
 ユーリカが大声を上げた。
「安全か安全じゃないかなんて自分で判断できるわ!ましてや兄弟の仲を勝手に切り裂いてなんか欲しくない!……だからか……だからお兄ちゃんは妹を守るためにイコンにまで乗りこんで、妹さんを取り戻そうとしたんだよ!」
「わしらが引き取った子なんじゃ」
 目を覚ました主人がぼそりと呟いた。
「仲のいい兄弟でな。しかし、わしらではこの子たちを無事に大人まで成長させることはできないと思ったんじゃ」
「それが勝手って言うのよ!」
「ユーリカ」
 非不未予異無亡病がたしなめる。
「このヌイグルミは、もう」
「え?」
「お兄ちゃんの方は、ずっと昔に死んでいる……そうですよね?」
「ああ」
 香もユーリカも声を失った。
「7年前のことじゃ。夜襲に遭って……殺されたんじゃ。妹は幼くてな。わしはヌイグルミを作り、お兄ちゃんは姿を変えてオマエの傍にいる、と手渡したのじゃ」
 近年、落ち着きを取り戻したかに見えたキマクだったが、地上げや実力行使による立ちのき要求は激化の一途をたどり始めている。一族を守るため、大切な人を守るため、老人は禁じられた術を用いていたのである。
「ほんとうに姿を変えて、妹を守ろうとしていたのかもしれないですね」
 非不未予異無亡病は沈痛な面持ちで、ボロボロになったヌイグルミにそっと手を触れた。
「……もとに、戻せるんですか?」
 香は老人に問う。
「もちろんじゃ。この攻防戦が終わるころ、術は解ける。明日になれば元の姿に戻れるだろう」
 ガガガアアン!と室内のドアを蹴破る音がした。ロングブーツが床をけたたましく鳴らす。現れたのは数人の蛮族である。
「居やがったか!……もたもたしてねーでさっさとここを立ちのきやがれ!」
 香らが戦闘態勢に入ろうと一気に構える。
「おいおい。汚い足でここに来たらアカンやろ」
 現れたのは狼木 聖(ろうぎ・せい)である。蛮族の襟首をつかみ、店外に叩き出す。
「わいは地上げ屋っちゅうもんが嫌いなんや。弱いもん食いもんにして利益こさえるなんぞ、孤児院出身のわいには許せへんわ」
 放り出された蛮族目掛けて神凪 深月(かんなぎ・みづき)は百獣拳や握砕術「白虎」で叩きのめしている。
「この下衆共よ。五体満足で帰れると思わない事じゃ。お主らが理不尽に誰かを泣かすなら、わらわは激痛で泣かせてやるのじゃ!」
「失礼しました。あ。ここにはあいつら一歩も入れへんから、どうぞ安心しててな」
 背後に襲いかかる蛮族を振り返りながら、其の顔面に拳を埋める狼木。サングラスを上げてうかがえるその瞳には怒りの文字が浮かび上がってみる。
「神によう祈っとき。どうか命だけは救ってください・・・・ってな!!」
 鬼の鉄甲を次々と蛮族の腹に打ち込んでいく。くの字になりながら倒れ込む蛮族の背をジャンプ台にして、神凪は居合刀の峰打ちで敵の肋骨をへし折り、着地と同時に羅刹眼を効かせながら言い放つ。
「奪うヤツは、わらわが奪う!」


「にゃーにゃーにゃー」
「のーのーのー」
ちび あさにゃん(ちび・あさにゃん)キャロ・スウェット(きゃろ・すうぇっと)セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の戦いぶりを応援しながら、誰にも解読できない会話を繰り広げていた。
「にゃーにゃーにゃー」(ボク、メルメルにあったんだけどさ、ヌイグルミになっているもんだからビビっちゃって逃げちゃったんだよー)
「のーのーのー」(分かんないのー分かんないのー)
 うず高く積まれていく蛮族の山を見上げながら、二人は感覚だけで「なんか仲良くなれそう」と幸せな気持ちでいた。