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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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 裁が果敢に戦いを挑んでいる中、そこに向けてとある機体が応援に向かっていた。
 桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)セラフィートである。
 前回、ツァンダでの戦いで中波した愛機を改修し、煉は真っ向から“ドンナー”に挑むつもりでいた。
 煉はセラフィートのコクピットでサブパイロットのエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)に語りかける。
「今度は真っ向勝負で奴らに勝つぞ」
「煉、バックアップは任せときな。お前は思いっきり暴れて来い!」
 すぐに返ってくる頼もしい声に頷くと、煉は更に語りかけた。
「敵はドンナータイプという報告だから到着までに機体の調整を済ませてきたが」
 土佐に乗艦して葦原島に向かう間、煉のもう一人の仲間であるエリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)がセラフィートの整備と調整を行った為、今回のセラフィートは対・“ドンナー”用の対策が施された状態となっている。
『こちらのイコンではやつらのような柔軟な動きはムリだが予め決められたパターンの動作であれば話は別だ。予め各種剣術の動作パターンを組み込んでおき、現場到着までエリーに頼んで最終調整を施したからな』
 しっかりと操縦桿を握り締め、煉がペダルを踏み込んだ時だ。
 裁を相手にしていた“ドンナー”はセラフィートに気付いたようで、即座に回頭すると、こちらに向かってくる。
 それに対し、煉は更にペダルを踏み込んだ。
 セラフィートの推進機構が一斉に起動し、瞬間移動の如く高速移動で“ドンナー”との距離が一機に詰まる。
 “ドンナー”へと急接近しながら、セラフィートは覚醒時の使用を前提として作られた超高出力ビームサーベル――デュランダルを抜いた。
 相手もそれに対応すべく“斬像刀”を構え、防御姿勢を取ろうとする。
 だがそれよりも早く、セラフィートは光刃を“ドンナー”に叩きつけた。
 防御姿勢が完成するよりも前、不完全な防御ごと押し込むように剣を叩きつけられたことで、強引に押しこまれた“斬像刀”が“ドンナー”の肩口に激突し、他ならぬ“ドンナー”自身の肩口が破損する。
『これが剛剣、示現流の剣技だ』
 広域通信で相手に向けて言うと、煉は操縦桿を繰る。
 するとセラフィートはデュランダルをの納刀し、空裂刀を抜き放つと、示現流蜻蛉の構えをとる。
 そのまま最高速度での飛行へと入るセラフィートの中で、煉は胸中に呟く。
(最強の一撃で決着をつけるこの誘い、乗って来るか?)
 煉の懸念とは裏腹に、“ドンナー”は“斬像刀”を大上段に構え、同じく最強の一撃で決着をつけるべく最高速度での飛行へと移行した。
 両機とも空戦機動をとっていながら、その勝負はまさに剣術の仕合。
 最高速度で飛行する両機はやがて正面から激突する。
 刃と刃が打ち合う、甲高く澄み渡った音が蒼空に響いた後、無事に残っていたのはセラフィートだった。
 互いの技は互角。
 その状態で僅かに差を付けたのは、先刻、“ドンナー”が肩口に負った損傷だった。
 セラフィートがすべての速度と体重をかけて繰り出した渾身の剛剣。
 それを受けてもなお、“斬像刀”は折れることなく耐え抜いた。
 だが、破損した肩口をその加重に抗しきれず、強引に押しこまれた“斬像刀”が上半身を直撃し、“ドンナー”は大ダメージを受けたのだ。
 まるで最初から一つのパーツであったかのように、胴部へと“斬像刀”をめり込ませ、“ドンナー”は落下していく。
 そして、空中で自爆装置が起動し、“ドンナー”は木端微塵に爆破四散した。
 見事に“ドンナー”を倒したセラフィートだが、その反動は小さくなかったようだ。
 今の一撃で機体各所にダメージが入ったようで、コクピットにはアラートの表示と音が溢れている。
 もし、後ほんの少し状況が違っていれば、断ち切られていたのはどちらかわからない。
 改めてほっと胸を撫で下ろし、安堵の息を吐く煉とエヴァであった。