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リアクション
第七章 迷子たちの動物園
迷子センターではノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が連れてきた『ペットたち』でプチ動物園状態になっていた。
ノーンの契約者である御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は仕事で忙しいのかおらず、空京にはノーンだけがやってきていた。
迷子センターで迷子のお世話をすることに決めていたノーンは『ペットたち』を連れてきたのだ。
”聖獣:エンゼルヘア”、”聖獣:カーバンクル”、”ももいろわたげうさぎ”、”涅槃イルカ”、”スペースゆるスター”だ。
”聖者の導き”で迷子たちを落ち着かせたノーンはこう言った。
「お母さんが探しに来てくれるよ。だから、それまで、ここでわたしと一緒に遊んでいよーね!」
国軍の制服姿のセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が子供たちの相手をしている。
二人は公務で空京にやってきた。迷子センターに人手が足りないと聞いて手伝いに来ていたのだ。
「ほら、泣いちゃダメよー? お姉ちゃんの手をよーく見てごらん?」
泣いている子供にセレンフィリティが手のひらを見せる。
手のひらを返し、空中の何かをつかんだふりをして手を握る。
イタズラっぽく笑んだセレンフィリティの手の中からあめ玉が出てきた。
セレンフィリティは手品が得意なのだ。
あめ玉を泣いていた子供にあげると、こんどは花を出し、次には紙吹雪を出して見せた。
セレンフィリティのところに集まった子供たちはノーンの連れてきた”涅槃イルカ”のところにやってきた。
ノーンが”涅槃イルカ”に子供を乗せている。一人ずつ順番に乗って遊んでいるが、子供たちはセレンフィリティにも乗るように勧めている。
ノーンにも勧められたセレンフィリティは”涅槃イルカ”に乗って大喜びだ。
『あの様子では子供の世話をしているというより、大きな子供みたいよね』
セレアナは子供の様に一緒になってはしゃいでいるセレンフィリティを見て苦笑した。
セレアナはノーンの連れてきた”聖獣:カーバンクル”に集まる子供たちの相手をしていた。
小さな子供を抱き上げ、カーバンクルに触れさせる。カーバンクルを初めて目にする子供たちはセレアナにいろいろと質問してくる。
セレアナは質問に答えながら、子供たちと楽しげにカーバンクルと遊んでいた。
セレンフィリティは泣き出しそうな子供の所に飛んで行っては手品を見せている。
そのうちに、泣き出しそうな子供を見つけた子供が「おねえちゃん、こっち」とセレンフィリティを連れて歩くようになっている。
セレンフィリティが子供を連れているのか、子供がセレンフィリティを連れて歩いているのかわからない状態だ。
雲入 弥狐(くもいり・みこ)はつまづいて泣いている子供に「痛いの痛いの飛んでけ〜」と言いながらヒールをかけていた。
「よし、お迎えが来るまでお姉さんと一緒に遊ぼう!」
弥狐は子供たちと一緒に動物を見て回って遊んでいた。
『弥狐は一緒に遊んで楽しそうね、少しうらやましいわ』
奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)は迷子のために自分が何をすることができるだろうかと悩んでいた。
あまり子供の相手をしたことがないのだ。
『親とはぐれてひとりぼっちは不安になるものね……。お迎えが来るまで不安な気持ちを忘れさせてあげられないかしら……』
そう思いながらノーンの連れてきた”ももいろわたげうさぎ”を触っていると、その不安もなくなった。
”ももいろわたげうさぎ”はもふもふしていると、こわもての男性もでれでれになってしまうという動物なのだ。
それに気が付いた沙夢は、寂しそうにしている子供を連れてきて、”ももいろわたげうさぎ”に触れさせた。
子供は”ももいろわたげうさぎ”を触るのに夢中になり、笑顔になった。
「こういうことでしたら、私もお役に立てますね」
沙夢は遊びに入れないでいる子供を連れてきては”ももいろわたげうさぎ”と一緒に遊んだ。
”ももいろわたげうさぎ”と遊んだ子供は元気を取り戻し、そのうち弥狐らの遊びに入って行くようになった。
その子供らに連れられて、沙夢も弥狐たちと一緒に動物を見て回って遊んだ。
動物好きの沙夢が子供たちをやさしく見守り、動物と遊ばせている。弥狐も子供たちと一緒に動物と触れ合って楽しんだ。
迷子の世話をしていた佐野 悠里(さの・ゆうり)も動物園を楽しみながらこう思っていた。
『お母さんたちがこの子たちのお父さんお母さんを見つけてきてくれるまで、しっかり面倒みておくわ』
その頃、悠里の母、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)は迷子の親を探しに街を歩いていた。
「悠里ちゃんがいるとは言え、あまり時間をかけるとやはり迷子の子達が不安がるですしね。早いこと探すようにするです」
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)からもらった『迷子対策班』の旗を持って、ルーシェリアは街を歩く。
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)の描いた迷子の親の似顔絵と共に迷子情報がメールで届けられている。
ルーシェリアは街の人に聞き込みをしながら、子供を探している親を見つけ出していた。
親の中には地球からの旅行客もいて、街に不慣れだ。シャンバラ宮殿前の迷子センターへの道も案内しなければいけない。
「骨の折れる仕事なのですぅ……」
しかし、親と迷子の再開する姿を見ては、その苦労も報われるような気がしていたのだった。
「悠里ちゃんも頑張ってくれているようですぅ。私も頑張るですぅ」
ルーシェリアはこつこつと迷子の親を探し当てていった。
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)も迷子の保護と親探しをしていた。
ヒーロー姿で『迷子対策班』と書いた旗を持っている。
男の子向けのヒーローではあるが、ヒーロー姿は子供が安心するだろうと考えてのことだ。
実際、魔法少女にすがる子供たちのように、ヒーロー姿のエヴァルトにも迷子の子供は頼って来たし、
迷子を探す親たちにも目立つ姿であった。
集まってきた子供や親をシャンバラ宮殿前の迷子センターに届け、また街に出る。
「子供としては一分一秒でも早く親と会いたいだろう。その親も同様のはずだ」
エヴァルトはそう思っていた。
”空飛ぶ魔法↑↑”を使いつつ”ホークアイ”で上空から街を見渡し、困っていそうな人――大人、子供問わず――の元に向かう。
ひったくりの被害者は『歳末防犯対策本部』に。迷子とその親は『迷子センター』に送る。
迷子さがしのヒーローも着実に迷子と迷子の親を引き合わせていった。
ルーシェリアとエヴァルトの捜索で迷子センターでは迷子が次々と親のところへ帰っていった。
そうなると、まだ親が来ない子供たちが悲しそうに、あるいは泣き出しそうになっていく。
そんな子供たちの様子に、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が”幸せの歌”、”名声”、”熱狂”のスキルを使い、歌を歌い始めた。
ノーンの歌は迷子たちだけにとどまらず、迷子センターの世話係やシャンバラ宮殿前にいる人々を惹きつける。
迷子センターではノーンの歌のライブ会場になったかのように華やいだ。
迷子の子供たちは親がやってくるまでの時間、ノーンの歌で楽しい気分に浸っていた。
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