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リアクション
一方その頃――
「あ…ああ……ああああああああっ!!!!」
『神風シンクタンク』こと三船 甲斐(みふね・かい)の研究所に保護されたエメラダ・アンバーアイ(えめらだ・あんばーあい)が突如叫び声を上げる。
エメラダは幼稚園児の姿から小学校中学年程度の外見に短期間で成長しており、それにともなって言語能力その他も成長していた。
その際エメラダに父親となつかれた猿渡 剛利(さわたり・たけとし)はその成長速度に驚くも、甲斐の師匠である佐倉 薫(さくら・かおる)に
「エメラダはナノマシン生命体じゃろ。何を驚いとるんじゃ?」
と突っ込まれてあっさりと納得した。その薫が、エメラダの突然の異変に
「どうしたエメラダ!?」
と尋ねると、エメラダは
「とめ……なきゃ……」
と呟いてナノマシンに分離して姿を消した。
「甲斐! エメラダの反応を追跡しろ!!」
慌てて飛ばした指示を受け、甲斐がキーボードを必死に操作する。
「出ました!」
そして映像がはいる。
エメラダは格納庫で暴れるエクスの正面に立って、ミサイルやガトリングガンの猛攻を受けるも、ナノマシン生命体だけあってすのすべてを受け流していた。
「ない、てるの??? ないちゃ、だめ……」
そう言いながらエメラダは再び粒子状になると、エクスの周囲で竜巻のようになったあと、エクスの中に消えた。
「エメラダは一体何を……?」
剛利の言葉に応えたのは、薫だった。
「実体化するぞ!!」
その言葉通りすぐに実体化したエメラダが完全に人の形を取り戻すと、暴走人形と化していたエクスの動きが止まり、その場にぐったりと崩れ落ちた。
そして、エメラダはその手に何やら機械の回路を握っていた。
「あれは……なるほど」
甲斐が納得する。
「どういうことですか?」
剛利が甲斐に尋ねる。
「あの子も有機的な機械なんでしょうね。そして今回暴れていた原因があの回路ってこと」
その解答は真実を貫いていた。
「じゃろうな……」
薫も同意する。
「はてさて……」
(これで懸念も的中したことになるのう……このまま成長が止まらなければどうなる? 大人になった時点で止まればよし、じゃが、それ以降も同じ速度で成長を続けたら? さて、誰に相談するべきかのう?)
薫はそう考えて、生身でありながらコンピュータと比喩されるダリルのことを思い出した。
ダリル宛の文章を描き上げるとそれを魔術で暗号化して、秘匿回線で送信する。タイトルは【成長し続けるナノマシン生命体】となっていた。
そして、エメラダは格納庫の惨状をみて眉をひそめると、「誰も死なせない……」とつぶやく。
「決めたんだ、すべてを守りぬくと」
決意を秘めた瞳で見渡し、再び粒子状になると、重症を負っている整備班の体内に入り込んでいく。
エメラダは己のナノマシンを人体の細胞と同化させて整備班の傷を直していく。
再び人の姿に戻ったエメラダは、体を構成するナノマシンが減少したせいで最初にあった頃のような幼児の姿になっていた。
そして、エクスは軍に拘束され、メモリーを解析されることになる。
キャロライン……リカインの飼っている(?)恐竜は、隕石に頭をぶつけて正常になったらしく、生身である自分がどうしたらロボットと対等に渡り合えるかということを必死で考えていた。
そして、ひとつの結論に達して軍のコンピュータにアクセスし(恐竜がどうやってコンピュータを操作するかは知らない)、軍が所収するロボットのデータの閲覧を始めた。
そのうち閲覧禁止のデータにアクセスし、何の偶然かパスワードを突破したが間抜けにも痕跡を残してしまったため、憲兵隊に拘束され、その後やってきたリカインに怒られることとなった。
「ローザ様、お客様です」
一時療養を兼ねた保護観察下におかれていた香 ローザ(じえん・ろーざ)に来客があることを、シェラ・リファール(しぇら・りふぁーる)が告げた。
「お通しして、シェラ」
そして通されたのは、ダリルと薫だった。
「ローザ様、こちらは国軍のダリル博士と薫博士です。博士、こちらがローザ様です」
シェラの紹介にしたがって、三者は挨拶を交わす。
「お初にお目にかかるローザリア・フォルクング殿。わしが佐倉薫じゃ。此度は少々お伺いしたいことがござってのう」
「聞きたいこと、とは?」
「クロガネやヘルガイアのこと、そしてクロガネと同じ存在である香(ジエン)というたかのう? それらについて。ついでに今回の騒動に関して思うことがあればなにか適当に」
薫のその言葉を聞いて、ローザは少し考えてから応えた。
「今回のこと、おそらくこれは、ヘルガイアの情報戦ですね。クロガネが他の勇者たちを呼び寄せた事や私の脱出もおそらくこのタイミングを見計らって、意図的に仕組まされたものかと。クロガネや香については、世界の守護者とでも呼ぶべき存在ですね。ヘルガイアやオリュンポスは正体は不明です。ただ、クロガネや香と対になる存在ではないかと推測されます」
「ふむ。香でもその正体はわからないのか?」
ダリルの問に、ローザは少し考えてから答える。
「残念ながら……ただ、彼らについてはこの世界の存在ではない可能性が示唆されています。それ以上についてはなんともわかりません」
「そうか……ふむ。手間をかけた。聞きたいのはこれくらいじゃ。感謝する」
「ローザさん、今回ですが何かあっても出撃をすることはおやめください。クロガネと同じ存在である貴女は、おそらく我々の切り札となるはずです。万が一貴女にもしものことがあっては困りますので」
最後にダリルがそう要請をしてきたので、ローザはわかりました、と答え、二人の科学者が退室すると目を閉じて考え始めた。
(香……どうすればいいの)
己の中に融合した香に語りかける。すると、ティル・ナ・ノーグという言葉が、頭のなかに浮かんできた。
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