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リアクション
とある二重スパイの陰謀遊戯
「恵、ちょっと来てくれるかな?」
そう呼びかけたのは下川 忍(しもかわ・しのぶ)で、呼びかけられたのは松本 恵(まつもと・めぐむ)だった。
「なんだい? あっ……」
近づいた途端、無針注射器が首筋に当てられ、薬剤が流し込まれる。
「恵!」
アルジェンシア・レーリエル(あるじぇんしあ・れーりえる)が悲鳴を上げる。
「何をしたの!?」
「ちょっと特殊な薬をね。これで恵は自分をヘルガイアのスパイで国軍に潜入していたと思い込むはずさ。これでいいんでしょう? 姫様」
そう、彼女はヘルガイアの姫の一人、ダークプリンセスアルジェンシアだった。
「……なるほど。そういうことですか。大儀です」
「さて、恵。君はこのサングラスを掛けて」
「わかりました」
「さて、それじゃあ姫。少し彼をお借りしますよ」
「ちゃんと返してくださいね?」
「もちろん。では……」
そして恵と忍は誰も居ない部屋に入り込む。
「お疲れ様です。調子はどう?」
忍が尋ねる。
「さすがに栄養剤を直接注入されたおかげで、疲れは吹っ飛びましたね。それじゃあ、時期を見て手筈通りに」
「わかった。サングラスはつけておいて。視線が正常だと疑われるから」
「了解です」
こうして潜入するために打った芝居で、忍を二重スパイとして送り込むのが、今回の国軍の作戦だった。
そして、その翌日――
学校生活を送っているリリーのところに、軍人が大挙して押し寄せてきた。
「ちょっと、授業中ですよ! やめてください!」
イーリャが必死で止めるものの、その軍人、トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)とその取り巻きの魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)とテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)。そしてミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)は聞く耳を持たずにツカツカと歩みをすすめる。
そして、教室に入るとリリーの前で立ち止まる。
「リリー・アトモスフィアとミレリア・ファウェイ、並びにディミーア・ネフィリム……申し訳ありませんがスパイ容疑で拘束させてもらいます」
トマスは努めて事務的にそういうと、「連行しろ!」と声を張り上げる。
それにしたがって魯粛とテノーリオ、ミカエラが三人の女子生徒を拘束する。
「やめてください!」
「ちょっとぉ、どういうつもりよぅ?」
「リリーちゃん!」
女の子たちが三者三様に抵抗するが、さすがにプロの軍人にはかなわない。あっさりと体を拘束されてしまう。
「さて、どうしたものかな?」
それを見ていたキョウジがどうするべきか悩んでいた。
「まあいい。様子を見よう……」
そして、様子を見ることに決まったようだった。
「こちらレーヴェ。獅子は檻に入った。繰り返す。獅子は檻に入った」
トマスが無線機を取り出してそう通信した瞬間だった。ディミーアからの情報が途切れたのは。
「なんだ!? くそっ! これは……ディミーアの通信を遮断したな!! おのれ国軍!」
キョウジは激高してモニタをそばにあったブロンズの像で殴りつける。
モニタが壊れて、火花を上げた。
「こちらフェニックス。ミッションコンプリート。ついでにもう一つの情報にも手を加えました」
小型飛空艇乗りの天城 一輝(あまぎ・いっき)は、スパイ情報の発信源を特定するために活動を続け、国軍の他の情報も統合してネフィリム三姉妹を見つけると、エメラダが摘出したエクスの回路を解析して情報をやり取りする言語や方法を分析して、その通信を遮断して偽情報を送り続けるウィルスを作成することに成功した。無論エメラダやダリル、その他科学者の協力あってだが、偽情報をジェネレートするプログラムには円周率を用いることによって無限に計算して情報を生成するような仕掛けまで施していた。
その結果、ディミーアと、残り一人のネフィリム姉妹であるセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)の通信を遮断した後に書き換えた偽の情報をおくり続けるようにしたのであるが……ディミーアに気を取られていたせいでセラフの情報も一瞬切断されたことには気が付かなかった。
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