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【第三次架空大戦】這い寄る闇

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【第三次架空大戦】這い寄る闇

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 一方その頃――
 学校にて、何やら人だかりができているのを、高崎 朋美(たかさき・ともみ)は目撃する。
 その中心には一人の老婆がいた。朋美の祖母である高崎 トメ(たかさき・とめ)であった。
 トメは、学校の中でこう叫んでいた。
「リリーはんが『スパイや』という貼り紙を貼ってまわったのはあたしどす。
 せやかて、そんな与太話、誰が信じるかいなと思てましたし。
 あたしが地球で生きてた頃とは、また人間の気性もちょっと、というかだいぶんに変わったんやねぇ。
 嘘よー、嘘!
「リリー・アトモスフィアはスパイ」って噂話をしたり、ネットの掲示板に書き込んだり電柱に貼り紙したり、集合住宅の郵便受けに怪文書ポスティングしてまわったンは、あたしやから。
 事実関係?
 そんなんしりまへんがな。
 ただ単に、時給がよかったからやっただけですがな。
 朋美にねー、もうちょっとええ服着せてやりたいと思て、ちょっとしたアルバイト。
 信じる方がおかしいのに、イジメて……あああ」
……。
…………。
…………。
………………!!!
「それでいいのか、ばーさんよぉっっ!!! 時給が良かったら、って、オレがスパイ容疑者に指定されてても、貼り紙貼って回ってただろーっ!!」
 そう叫んだのはウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)。朋美の相棒みたいな寡黙な男なのだが、この時ばかりは腹の底から叫んでいた。
「ボクの服……服装? いつも制服か、整備科のツナギしか着てなくて……もうすぐ成人式だしその事も考えたら晴れ着の一枚も用意して着せてやりたいって………だからって……なんだよ、それ、おばあちゃんー!! 綺麗なお金でなきゃ、綺麗な晴れ着にならないじゃないー!」
 シマックと孫の叫びに、トメは
「しりまへん。トマスとか言う軍人はんに頼まれたんどす」と言って逃走した。
「ちょっと! ばあちゃん!」
「ばあさん!!」
 人にあらざる速度で逃走するトメに対し、朋美は指をパチンと鳴らすと、乗機である{ICN0004663#勇者ウィンダム}を呼び出す。
「まてえええええええええええええええええええええ!」
 それでも、それでもなお、その【妖怪ババア】を追跡することは至難の業だった。
「……へへ。勇者が出たか」
 【ナノマシン拡散】で姿を隠しながらハデスにくっついて情報を収集していたダーク・スカル(だーく・すかる)が、ヘルガイアにそのことを報告しようと無線の通信チャンネルをオープンにする。が――
 国軍。ダリルの研究室――
「博士、ヘルガイアへの通信を傍受しました」
 それは通信を封鎖して傍受体制に入っていた国軍に感知されていた。
(ふむ。これはスカルの通信ですね……当初の予定通り、派手に目を引いてもらうとしましょうか)
 十六凪はこれ幸いにと深く静かに潜入する他のスパイのためにハデスとスカルを囮にすることにした。
「では、ルカルカに連絡を……ああ、私だ。高天原御雷として申請されたものの通信になっているな――ああ、よろしく頼む」
「発信者まで割り出しましたか――」
 半ば尊敬、半ば呆れとともに十六凪は感嘆の声を上げる。
(さすがは有機コンピューターと渾名されるだけはある……)
 内心でダリルを称賛するとともに、敵に回した場合の恐ろしさについて思いを馳せた。
 そして、学校ではルカルカが動き出した。
「……ということで、高天原がヘルガイアに通信しているのが確認されたわ。勇者の君たちは彼を追い詰めると共に万が一逃亡されたときは勇者を呼び出せるように準備をしておいてね」
「りょーかい」
「わかりました」
 フレイ・アスク(ふれい・あすく)アポロン・サン(あぽろん・さん)が答える。
「具体的にはどうするの?」
 美羽の問にルカルカは説明する。桜葉 忍(さくらば・しのぶ)と信長、猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)セイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)は派手に騒いで敵を追い詰める。一方でフレイとアポロン、美羽とベアトリーチェは最初から勇者を召喚しておいて初動に備える。そういうプランらしい。
「なるほど……どう思う信長?」
 忍が信長に尋ねると、信長は鷹揚に「問題無いじゃろ」と答えた。
「ちなみに、国軍がリリーやミレリアを拘束したのは、本当のスパイの活動を促すためだって。だから、彼女たちも出動待機してるみたいよ。あとは、いじめからの保護?」
 ルカルカのその言葉を聞いた勇平は合点が行ったという様子で破顔した。
「なるほどな。たしかにそのほうが安全だな」
「マスター、あれほど憤慨していたのに……」
 勇平の言葉に正ファーが突っ込みを入れると、勇平は
「そ、それは言わなくていいだろ!」
 としどろもどろになりながら恥ずかしそうに鼻をかく。
「ま、ともあれそういうことだから。フレイと美羽は出撃準備してちょうだいね」
「わかった」
「まかせて!」
 フレイと美羽がうなずき、それぞれのパートナーを連れて校舎を出て行く。
「ダリル、ターゲットの現在位置は?」
 ルカルカがそう通信してから数秒後、彼らは指示された場所に移動する。果たしてそこでは、ハデス扮する御雷が自動販売機からジュースを取り出そうとしているところだった。
「高天原御雷。あなたをスパイ容疑で拘束します。ヘルガイアとの通信を傍受しています。言い逃れはできませんよ」
「覚悟するんじゃのう?」
「逃さないぞ!」
 ルカルカに続いて、信長と勇平が挑発するように言葉を続ける。
 しかし、ハデスに同様はない。ハデスは髪をかきあげると、突如高笑いを上げた。
「フフフフ……ハハハハハ……だからどうしました? すでにこの時点で私の目標はすでにほとんど達成しています。今更バレた所でさしたる痛手でもないのですよ!」
 実際、見つかることは織り込み済みなのだから間違いではないのだが、その言葉はルカルカと勇者たちを挑発するのに十分だった。
「ふん。なら、おとなしく捕まるんだな」
「だからといってはいそうですかと捕まるバカがどこに居る」
 忍の言葉にそう返すと、ハデスは指を鳴らした。
「こい! かりばあああああああああああああああああああああん!」
 そして、その叫びとともに上空から接近してくる機体を、軍では感知していた。
「照合完了……該当人物はドクターハデスとの類似点が99.865%です」
 その間御雷の顔をデータベースと照合していたセイファーは、照合完了の事実を告げた。
「……ほう! そこまで照合するとはなかなかやりますね。ここは、戦略的撤退と参りましょう」
 そしてハデスが手を振り上げてからそれを一気に振り下ろすと、突如爆発音とともに煙が派生する。
「クッ……煙幕か!」
 信長が口を手で塞ぎながらそう叫ぶ。
「者ども、外に出るぞ!!」
 そして、瞬時に判断して信長は外に出るべく動き出す。
「おう!」
 忍もそれにつき従い、煙幕を避けて外に出ようとする。
「マスター!」
「分かってる!!」
 セイファーと勇平も、信長たちに続く。
「頼んだわよ! ダリル、こっちも出撃するわよ!」
 ルカルカは通信でダリルの返事を聞きながら、外へと向かってかけ出した。
「ハハハハハハハ 待たせたなハデス!」
 上空から光速で飛来したのは、流星の機体にして洗脳された勇者でもある聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)であった。
 グラウンドに着陸したカリバーンは、内部にハデスを収容すると浮き上がる。
「ドクター・ハデス! 情報戦などという姑息な手段を使わずとも、この俺エクス・カリバーンが勇者たちなど蹴散らしてくれる!」
 しかし、そのカリバーンの出現に呼応するかのように、国軍の基地から一体のロボットが飛び出す。
『星心招来! バグベアード!』
 大地に響く大きな声。それとともに、怪しい球体が基地上空に突如として出現する。
『星心合体! ベアド・ハーティオン!!』
 その掛け声とともに、球体は人型に変形すると、胸部を大きく開く。そこに基地から飛び出したロボットが収納され、胸部が閉じると、3メートルほどのロボットが15メートルほどとなる。それが国軍により移籍から発見されたロボット生命体にして勇者コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)でありパワーアップユニットである星怪球 バグベアード(せいかいきゅう・ばぐべあーど)と合体した星心合体ベアド・ハーティオンであった。
『カリバーン! 目を覚ませ!!』
 ハーティオンは高速で基地から学校までの距離を飛行すると、グレート勇心剣をカリバーンに叩きつける。
『クッ……!』
 カリバーンは間一髪それをかわすと、ハーティオンと正対する。
『おまえは、だれだ?』
 訝しげなカリバーンの問に、ハーティオンは叫んだ。
『私はおまえの盟友、ハーティオンだ! 思い出せ、カリバーン!』
『知らないな。それにしてもハデス。情報戦とはまた迂遠な手を使ったものだな。そんな姑息な手段を使わずとも、この俺エクス・カリバーンが勇者たちなど蹴散らしてくれる!』
 意気込んでカリバーンが攻撃を仕掛けようとする。だが……
「まて」
 それをコクピット内でハデスが制止する。
「なぜ止める!」
「まだ、おまえの力は不完全なのだよカリバーン」
「どういうことだ、ドクター・ハデス!」
「眠っていた間に衰えたおまえの力が完全に戻るには、まだ時間がかかるということだ」
 そのハデスの言葉を聞いたカリバーンは、納得をしたようで、「ならば、しばし待つとしよう」とつぶやくと
『勇者たちよ、勝負は預けたぞ!』
 と言ってレーザーを発射する。
『チィッ!』
 それをハーティオンが回避している間に、カリバーンは急速に上昇する。
 そして、安全な高度まで上昇すると、虚空に姿を消した。
「くそ。逃したか!」
 フレイが悔しそうに言う。だが、次の瞬間、警報が全員の耳にこだました。
「ヘルガイア出現! 空母機動部隊及び全機動部隊は直ちに出撃! 補給班は展開準備!!」
 そして、今までにない大規模な戦いが始まった。