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ふーずキッチン!?

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ふーずキッチン!?
ふーずキッチン!? ふーずキッチン!?

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【キッチン】

 誰かの為に、頑張っているのはここにも一人。
伏見 さくら(ふしみ・さくら)です!
 今日は精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」
(やっぱり第一印象は大事!)
 ランチ回しでやってきていたさくらは、笑顔で挨拶をした。
 普段お世話になっている斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)の為に。
 友チョコの資金稼ぎをしようと、やってきたのだ。
(最近生活費が心許ないから……
 でも二人が協力してくれてよかった。これで材料費も生活費も……)
 二人とは河上 利秋(かわかみ・としあき)東郷 新兵衛(とうごう・しんべえ)のことである。
「お二人とも、手伝ってくれてありがとうございます!」
 笑顔で言うさくらに、二人は赤くなる。
「いや……普段さくらの家を隠れ家として利用させてもらっている所為で迷惑を掛けているのだから
 これは仕方ない、ハツネから頼まれた護衛対象であり、恩人なのだから手伝うさ」
 利秋。
「生活の為、何よりお嬢(ハツネ)への贈り物為に頑張るさくらを
 自分は世話役として誇りに思う
 ……だから、自分も微力ながら手伝おう」
 と新兵衛。
「ではマグロたたき丼を作りましょう!
 利秋さんと新兵衛さんは下ごしらえを、私はご飯の準備をしますね」

 意気揚々と料理を始めた三人だが、早速に問題が持ち上がってしまった。
「墳ッ!」
 利秋が愛刀を思い切り振り上げ、まな板ごとマグロを切り分けはじめたのだ。
 カウンターではなくオープンキッチンの奥での調理だったので、客に被害はなかったものの、惨状に新兵衛はネギを切りながら心底呆れて言う。
「……これだから人斬り包丁しか握れぬ者は……」
「なんだ、その人斬り包丁すらまともに扱えぬ弱者が護衛役を降ろされた弱者は精々そこでネギでも切っていろ」
「自分は弱者などではない……
 お嬢への忠誠心とさくらを守りたいと思う心は居候……貴様よりも上だ」
 売り言葉に買い言葉。
 その間に二人の手は止まっていないが、
 利秋の方はまな板マグロ。
 新兵衛の方は不器用なので包丁で傷ついて中の綿を細ねぎのボールに入れてしまったりと、
お世辞にも上手な料理とは言えない。
 ダン! ダン! ダン! ダン!
 ふぁさ ふぁさ ふぁさ ふぁさ
 と料理をする場に相応しくない音は続き、最終的にお互い刀と銃を突き付けあう状態になってしまった。
「ご飯の準備できましたよ〜

 ……って、なんで喧嘩してるんですか!? やめてください、二人とも!」
 さくらの制止で、二人は本来の目的を思い出したようだ。
「すまなかった」
「つい熱くなって……」
「いいんです、分かって貰えれば」
 引いていく冷や汗を感じながらも、三人は丼を準備していく
「さあ、後は刻みのりと白ゴマを掛けて」
 刻みネギ、わさびを添えてしょうゆを掛けて若干形を整えて

 ……出来上がりです」
 ぱっと顔を耀かせたのもつかの間。
 見た目はピンク色。
「……なんだか余り美味しそうに見えません、ね」
 しょんぼりとするさくらに、利秋と新兵衛はお互いの顔を見やって頷きあう。
「料理は味と愛情だ……その点、この料理は味覚的にも愛情的にも合格点だ…」
「気にするな、見た目がアレでもお前の飯は何時もうまい……自信を持て」

 先ほどまでいがみ合っていた二人が、微笑んでいる。
 それだけでさくらは報われた気分になった。
「……二人とも……ありがとうございます」
 厨房の隅で、三人は肩を付き合わせながら盛り付けを続けていく。
(この料理で皆が幸せになる時間を提供したいな)
 さくらは満面の笑みを浮かべていた。



【カウンター】

(ああぁ、見ていられない……)
 カウンターから厨房を覗いていた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、終に料理人としての限界を突破した。
 友人の涼介が働くというのでこっそり応援にきたのだが、まさかこんな大変なことになっているとは。
 思わず厨房へ向かってしまった。

「何でいきなり厨房に入ったの?
 って聞くまでもないかな」
 真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)の質問に、弥十郎は苦笑して、秘密だというように人差し指を唇に当てた。
「おやおや、何作っちゃうの?」
 後ろから顔を出した耀助に、弥十郎は説明を始める。
「鮪の味噌漬を作ろうかなぁ、と。
 江戸前のようなものではなくてね、あくまで保存食で、持ちもいいし」
 タレは焼酎、みりん、醤油、岩塩を味噌に溶かしてとろとろにしたもの。
 料理人ならではメニューだった。
 手を殺菌しながら周囲を見て、どのように動くべきか計算をする。
「余っている部分はある?」
 耀助に渡されると、やじゅうろうはそれを片っ端から取り出したあと直ぐ食べれられるように一口大にカットしていく。
「食べるのは2日以上漬けた後の方がよいと思いますよぉ。
 あ、食べ方のサンプルは後ほどだしておきますんでぇ」
 と、黙々と漬け込んでいく。
「手際いいねぇ。
 オニーサン何者?」
 質問を適当な笑顔でかわしつつ、やじゅうろうは料理を続けている。

 真名美も鮪を漬ける樽を熱湯で消毒したあと、水分をとり焼酎で殺菌し、弥十郎が作った漬けダレと鮪を漬けたりと
てきぱきと動いている。
「少しでも美味しい料理にしたいねぇ」
「そうだね。みんな喜んでくれるかな」
「そりゃそうだよ。なんせ鮪だしね」

 二人のほんわかしたやりとりに、耀助も疲れが取れてきたような気がした。
「けどランチはまだだしなぁ俺……腹減ってきたっていうか――」
 ボヤいていると、口元にこっそり巻物が差し出された。
「折角のマグロなので、よかったらどうぞ」
 真名美作の鉄火巻きだった。
「うわうまそ、いただきま〜す」
 もぐもぐろ口を動かしながら、耀助は何かを忘れていたのを思い出したらしい。

「こんな美味い飯作れるなんて、オネーサン、俺の嫁にこないか〜い?」