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炬燵狂想曲

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炬燵狂想曲

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・呼び求める三重爪

 一方、ツァンダでおまじないが掛かった炬燵を購入した人々はと言うと……
「ちょっと、先輩!! そこのトイレから出てきてくださいよ!!」
 ここはヴァイシャリーにある百合園学園の寮にあるトイレの前。下級生と思われる少女が切羽詰まった声を出してトイレのドアを叩いていた。
 そのトイレの中では、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が一人用の炬燵を改造し、寮のトイレの一つを占領してしまったのだ。
 炬燵に入ったネージュは、猫のようになるのと同時にコタツ熱で軽い脱水症状が起きており、後輩の呼びかけにも応えられない状況になっている。
「どうしたのですか。そんなに強くドアを叩いたら壊れてしまいますわ」
 トイレの前を通り過ぎようとした上級生が、ドアを叩く下級生に向かって声を掛けた。
「あ……先輩。聞いてくださいよ。ネージュ先輩がツァンダで買った炬燵を改造してこのトイレに籠城してしまったんです!! ドアを叩いても反応が無くて困って居たんですよ」
「まぁ、それは大変ですわ。このトイレの鍵は――」
「掛かっていない事を期待したのですが、残念ながらばっちり掛かっています」
 下級生はそう言いながら、トイレのドアノブを押したり引いたりして鍵が掛かっている事を証明して見せた。
「そうですわね……ならば、寮母さんに連絡して頂戴」
 鍵が掛かっている事を確認した上級生は、しばし考えた後下級生に向かってそう言ったのだった。
「判りました」
 上級生の言葉に、下級生はトイレから離れると寮母さんを呼びに下へと降りて行った。

同じ寮の別室では……
「碧葉、お茶とみかんを取って頂戴」
羽切 緋菜(はぎり・ひな)が、羽切 碧葉(はぎり・あおば)に注文をしていた。碧葉は、深いため息をつきトレイに三人分のお茶を入れた湯のみを乗せると、キッチンから炬燵の置かれた部屋へと移動する。
「みかんならその炬燵の上に置いてありますよ」
 碧葉はトレイを炬燵の天板に置くと、湯のみを天板へと一つずつ移動させながら言った。
 緋菜と一緒に炬燵に入った羽切 白花(はぎり・はくか)がテレビのリモコンでテレビを付けた。すると、なぞの占い師が炬燵についての謝罪と注意を言い始めた所だった。
 なぞの占い師の少女が画面から消えると、テレビは何事も無くニュースが流れ始める。
 碧葉はいつものようにお茶を飲もうと湯のみに口を付けた時だった。
「あちっ!」
 炬燵に入った影響からか、舌までも猫舌になったのだ。
「ひーちゃん、猫舌……ってひーちゃん猫耳がついてる!!」
 白花がテレビから緋菜へと視線を移すと、緋菜に黒髪に似合う黒い猫耳が着いていたのだ。
「あちち……猫耳って……白花にも白い猫耳が付いているじゃにゃい……あれ?」
 緋菜は火傷した舌を冷まそうと炬燵から出ようとしたのだが、身体に力が入らずに戸惑った。
「水を持ってきますね」
 緋菜の様子を見て碧葉は炬燵からキッチンへと移動する。
碧葉が水が入ったコップを緋菜に渡すと、良いタイミングで洗濯機の乾燥終了のブザー音が聞こえて来る。
「二人が猫になっても日常は変わらないのね……」
 ぼそりと碧葉は呟くと洗面所へ行ってしまった。

場所は変わり、ヒラニプラ都市のとあるマンションにて。
「テレビよし、お茶よし、みかんよし! 全力で炬燵を楽しむのであります!!」
「了解だよ。吹雪ちゃん!!」
 部屋には葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)セイレム・ホーネット(せいれむ・ほーねっと)の二人しかいないのについ癖で声を出しながら確認をする吹雪の姿があった。
 セイレムは、吹雪の声の後に敬礼をすると炬燵にいそいそと入る。
 十分後――
 二人は頭に黒耳と茶耳を生やして「うにゃー」と猫化したのだった。