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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
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リアクション

 日中、妖怪の山前。

「マスター聞いて下さい! この度双子さんが妖怪の山にて野営の催しを開催するそうで、夜光桜という珍しい桜だけでなく妖怪さん達にも会えるかもしれませぬ故、私、参加する事に致しました!」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)を妖怪の山に案内するなりとんでもない事を言い出した。

 フレンディスの隣では
「ペトラちゃん、今夜妖怪の山でお花見があるですよ。この僕と一緒に妖怪探しのお誘いしてあげましょう。へたれベレー帽達も誘うといいのです。あ、その、嫌なら別にいいのですよ……?」
 ポチの助が首輪型携帯電話で完全魔動人形 ペトラ(ぱーふぇくとえれめんとらべじゃー・ぺとら)に花見のお誘いをしていた。
 これによりペトラのパートナーであるアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)も参加する事となった。
「……花見か、俺としてはあの双子が主催している段階で警戒するべきだと思うんだが」
 ベルクは大きなため息を吐いた。主宰者である双子に何度となく巻き込まれているため今回も平和で終わる訳が無いと確信しているのだ。
「ポチも アルクラントさん達をお誘いしたようですし、マスターもご一緒……しますよね?」
 フレンディスが好奇心で輝く目をベルクに向けた。
 他の参加者を誘った時点でお花見は決定事項となりベルクには一切の拒否権など無くなっていた。
「……あぁ、仕方ねぇだろう」
 ベルクは再びため息をつき、参加する事にした。参加する前からすっかりお疲れの様子であった。
 飲食物はアルクラントが用意するという事だったのでフレンディス達は場所取りのため山に入った。

 夜、花見会場。

「今日は素敵なお花見に誘ってくれてありがとう」
「なかなか良い席だな。そうそう酒も弁当もたっぷりと用意してあるから」
 弁当を抱えたシルフィアと飲み物を大量に持つアルクラント。
「えへへ、ポチさん、お誘いありがとー! 夜光桜綺麗だねー。それに妖怪さんと一緒にお花見かー! どんな妖怪さんに会えるかすごく楽しみ。それにポチさんと一緒!」
 ペトラは弾む声でポチの助に礼を言って首にかけているお揃いのアクセサリー、天使の羽と銀のベルのペンダントのベル部分を手に取りながら嬉しそう。ポチの助から連絡を受けた際、ペトラがお揃いで付けたいと言ったのだ。ポチの助は仕方無いですねとツンツンしながら金のベルのレザーベルトを付ける事を承諾した。
「本当に仕方無く付けただけなのです」
 ツンツンするもポチの助はお揃いが嬉しいのか尻尾を振っていた。

 その時、
「こんばんは」
「お花見に来ていたんですね」
 同じように花見に参加していた木枯と稲穂が現れた。

「お前達も来ていたのか」
「木枯さん、稲穂さん、とても綺麗な桜ですね」
 ベルクとフレンディス。

「良かったら飲み物でもどうかな?」
 アルクラントはソフトドリンクを二本木枯達に差し出した。
「ありがとう。お礼に和菓子をどうぞ」
 木枯は受け取りなり先ほど買って来たたくさんの創作和菓子を人数分アルクラントにあげた。
「あそこで買ったお菓子です。他にもクレープやほろ酔い気分になれる飲み物も売っていましたよ」
 稲穂が丁寧にリース達の店を宣伝した。
「あら、お花見にぴったりね」
 シルフィアは桜を表現した和菓子に喜んだ。
「ポチの助君達、可愛いね」
 木枯はポチの助とペトラのお揃いのアクセサリーに気付いた。
「えへへ」
「当然なのです」
 ペトラは自慢げにポチの助はツンとしつつも尻尾で嬉しさを示していた。
「それじゃね」
「今夜は楽しみましょう」
 木枯と稲穂は挨拶をしてどこかに行った。
 アルクラント達とフレンディス達も花見を始めてアルクラントの弁当や貰ったら和菓子を食べたり飲んだり花見を楽しみ始めた。

 花見開始後しばらく。
「ポチさん、 妖怪さん、探しに行こう! ほら、マスターに頼んで妖怪さんにあげるお弁当も作って貰ったんだよ」
 ペトラはアルクラントに作って貰ったお弁当を見せながらポチの助を妖怪探しに誘う。
「仕方無いですね。ペトラちゃんがどうしてもと言うなら妖怪探し手伝ってあげてもいいのですよ」
 ポチの助はいつもの調子でペトラと共に妖怪探しに行ってしまった。
「ペトラもずいぶんとポチと仲良くやってるようだな。同年代の友達が少ないだけに、いい関係を築けているようだ。と、言うわけで我々は我々で花見をしつつ、一杯いくとしようか 。ベルク、君は行ける口かな?」
 アルクラントは遊びに行くペトラとポチの助を微笑ましく見送った後、盃をベルクに差し出した。
「あぁ、一杯貰おう」
 酒は弱くもなく強すぎる事もないベルクはせっかくだからと盃を受け取り、アルクラントに酒を注いで貰い、男同士の飲み会を始めた。

 女子の飲み会。
「……ポチもすっかりペトラちゃんと仲の良いお友達になったみたいで良かったです」
 フレンディスはポチの助達を見送った後、酒を飲んでいるシルフィアの方に注意を向けた。
「そうね。珍しい桜にアル君のお弁当も美味しいし……私もお酒飲んじゃおっかなー。まだあんまり呑み慣れてないけど、甘いのでも」
 シルフィアは好きな甘めの酒を口に運んだ。
「では私は……」
 フレンディスは何事かを考えた末、おもむろに立ち上がった。
「おい、フレイ、どこに行くんだ?」
 いつもフレンディスの動きにアンテナを張っているベルクはすぐに気付いた。
「マスター、木枯さん達に教えて頂いた飲み物を買って来ます」
 フレンディスはそう言うなりベルクが止める間もなく買いに行ってしまった。
「……飲み物というとほろ酔いとかいう奴か」
 苦労の予感を感じながらベルクはフレンディスの背中を見送っていた。

「ただいま戻りました。シルフィアさん、大丈夫ですか?」
 フレンディスが戻った時、シルフィアはすっかり酔っ払いになっていた。
「あ、おかえり〜、なんだかいい気分にゃーー、えへへ、甘えちゃうー。ありゅくん、むきゅってして。むきゅって」
 上機嫌のシルフィアはにこにことアルクラントに抱き付き、甘え声を出す。
「……かなり出来上がってきちゃってるな。酒を覚えてから……そんなに普段から飲むわけじゃないんだがな。飲むとすぐ酔っ払っちゃうんだよ。しかも記憶はないっぽいし」
 アルクラントは抱き付き、上目遣いにおねだりするシルフィアに困り顔をするばかり。
「……そうか」
 うなずくベルクは内心自分と違って女性側が積極的である事が羨ましく思い、自分の状況との差を感じ少しだけ自暴自棄になっていた。
 シルフィアはまたふらりとフレンディスの元に戻って行った。

 再び女子の飲み会。
「フレさんとベルクさんもむきゅってすればいいと思うのみゃー。ふみゃー、あのね、ふたりがちょっとうりゃやましいの」
 シルフィアはフレンディスにもたれかかり、ろれつ悪くフレンディスとベルクの関係にツッコミを入れ始める。
「…………(わ、私も早く成人になってお酒呑めるようになればあのようにマスターに対して自然に…?)」
 シルフィアのツッコミなどフレンディスの耳には入っていなかった。頭の中にあるのは酔ってアルクラントに甘えて抱き付くシルフィアの姿だけ。
「……酔ったら」
 フレンディスは買って来たほろ酔いフレーバーティーを飲んだ。
「それでねーふれちゃん、きいてりゅ? べりゅくさんとはどうなのよー。わたしだってくりすまひゅにね、こっちから…… にゃー、はずかしくていえにゃいー!」
 フレンディスの様子などお構いなしに酔っ払いシルフィアはクリスマスにアルクラントに目をつぶらせキスをしたが、アルクラントが全く気付いていない話をしようとする。
「き、きしゅをしたのにゃ、でもありゅくん目ぇつぶっててきずいてにゃいのーあれぇ? フレちゃん、顔が赤いにゃ」
 シルフィアはフレンディスの顔が赤い事に気付いた。
「おい、フレイ、大丈夫か?」
 フレンディスの異変に気付いたベルクは一気に酔いが冷め、駆け寄った。
「何かぽわんとして幸せな気分です。大丈夫ですよ、マスター、とても美味しかったですから」
 フレンディスはほわんとした顔でからになった飲み物を見せながら言った。
「……そうか」
 ベルクはフレンディスが無事である事を確認した後、自分を呼ぶアルクラントの元に戻るもフレンディスが何かしないかとずっと気にかけていた。フレンディスは知るよしもないが。

 可愛い妖怪捜索隊達は元気にあちこち歩き回っていた。
 そして、
「あ、ポチさん。妖怪さん! 何の妖怪さんだろう?」
 ペトラが一番に発見した。その妖怪は夜光桜背後の草むらから這い出て来た雄雌の小さな獅子だった。
「ふふん、あれはシーサーなのですよ」
 『博識』を持つポチの助が得意げに獣の正体をペトラに教えた。
「うわぁ、ポチさん物知りだね」
 無邪気なペトラは手を叩いて感心する。
「当然です。この僕は超優秀なハイテク忍犬ですからね。ペトラちゃん、お弁当をあげたらいいですよ」
 ポチの助は言葉とは裏腹にペトラの邪気の無い褒め言葉に嬉しそうに尻尾を振っていた。
「うん。シーサーさん、お弁当をあげるよ」
 ペトラはポチの助に言われるまま持参した弁当のふたを開けてシーサー達と友達になろうと試みるが、警戒しているのかなかなか近寄って来ない。
「ねぇ、これけっこうすっぱいけどシーサーさんはこれ好き? 僕はなんだか顔がくわっ! ってなっちゃいそうだよー」
 ペトラはシークワサーを指さしながら少しでも友達になろうと話しかける。
 ペトラの様子に警戒を解いたのか二匹のシーサーは弁当に近付き、もさもさと弁当を食べた。ペトラはしゃがみ、弁当を食べるシーサーの頭を撫でていた。ポチの助は興味深そうにシーサーの食事の様子を観察していた。

 はらりと光る花びらが舞い散る中、
「うにゃ、お花きれいだねー! あ、そうだ、シャボン玉持ってきたんだ! これも皆で吹いて遊ぼうよ! 大きいのができたらこう叫ぶんだって。シィィザァァァァ!」
 ペトラは夜光桜に感動するもすぐに二人分のシャボン玉道具を取り出し、ポチの助に一つ差し出した。
「どうしてもって言うのなら仲良くしてやってもいいのですよ? この僕が直々に遊びにもつきあってあげましょう!」
 仕方が無いという体でシャボン玉道具を受け取るも内心妖怪と遊びたくてたまらないポチの助は全開で尻尾を振っていた。
 ペトラとポチの助はたくさんのシャボン玉を生み出していく。シャボン玉は夜光桜の花びらと重なりきらきらと光って見えて美しかった。
 シーサー達はシャボン玉を追いかけ、戯れ次々と割っていく。
「なかなか大きいのできないね〜」
 大きなシャボン玉作製に挑戦していたが、上手く出来ずに壊れてしまいがっかりのペトラ。
「ペトラちゃん、この僕が手本を見せるのです。よく見るがいいですよ」
 ポチの助が胸を反らし、大きなシャボン玉作製に挑戦する。年相応に何やかんやで楽しんでいた。

 慎重に慎重を重ねた結果、ポチの助は見事に大きなシャボン玉を作り上げた。
「すごーーーい。ポチさん、シィィザァァァァって」
 ペトラは嬉しそうにふわんりと飛ぶ大きなシャボン玉を見た後、妙な叫び声を上げるように言う。
「……シィ、シィザァァァア、こ、これは仕方無く言っただけですからね!」
 ツンとして断るかと思いきやポチの助は叫んだ。ペトラの頼みをむげには出来ないようだ。この時気付いていなかった。大事な物が盗まれている事に。

 シャボン玉をたくさん飛ばした後にふと胸元を確認したペトラが気付いた。
「……ポチさんとお揃いのペンダントがないよ」
 あるはずのベルが無い事に。
「む、僕もないですよ」
 ペトラが気付いた事によってポチの助もレザーベルトが無くなっている事に気付いた。
「……せっかく、ポチさんとお揃いで」
 ペトラはしゅんと元気の無い声で胸元を見つめるばかり。ポチの助とお揃いという事がとても嬉しかったのだろう。
「……ペトラちゃんはシーサーとここで待ってるのですよ」
 悲しむペトラの姿に思うところがあったのかポチの助はくるりとペトラに背を向け、歩き出した。
「ポチさん?」
 ペトラは小首を傾げながらポチの助に聞き返した。
「……僕のレザーベルトを探すついでにペトラちゃんの分も探してあげるのです」
 ポチの助はピタと足を止めてペトラに振り向き、理由を話した。
「ポチさん、ありがとー、僕も手伝うよ。シーサーさんもお願い」
 ポチの助のツンとした優しさを知ったペトラはすっかり元気を取り戻した。
 シーサーと共に捜索を始めてすぐ狐火童が持ち去った事を知る事に。

 夜、花見会場。

「ゼーさん、ゼーさん。すっごいよ!! 光ってる!!」
金元 ななな(かねもと・ななな)は興奮気味に夜光桜を見上げていた。
「あぁ、すごいな」
 シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)はすでに楽しんでいた。何せ自然と恋人という好きな物が揃っているから。
「ゼーさん、今日は誘ってくれてありがとう!!」
 シャウラに背を向け、夜光桜を眺めていたななながくるりと振り返り、満面の笑みで礼を言った。
「いや、なななが楽しんでくれたみたいで良かったぜ。少しは羽を伸ばせたか? いつもすげえまじめに平和守って頑張ってるからなー」
 シャウラはなななが妖怪の山の花見に興味を持つだろうと誘ったのだ。笑顔が見られたのだから誘った甲斐は十分にあった。
 二人は夜光桜の下にあるベンチに腰を下ろした。
「頑張ってるのはゼーさんもね。なななばかり楽しんでるけどゼーさんは大丈夫?」
 なななはふとあまりにものんびりしている事に罪悪感を感じ、眉を寄せながら言った。
「そこは問題無い。休暇届は提出済みだし、たまにはこんな風流な景色の中俺も息抜きを」
 シャウラはそう言って思いっきり伸びをした。
「ゼーさんたら」
 可愛らしくなななは伸びをするシャウラを笑う。
「笑うなよー」
 伸びをやめたシャウラはなななの笑顔につられて自分も笑った。
 まったりとした二人だけの時間が流れていた。
 二人は仲良く持参した普通のお弁当を食べ、マーガレットや元相から創作和菓子や二種類のクレープを買って楽しんでいた。
 そんなまったり空間が過ぎた頃。
「……何だろ。お面が落ちてるよ」
 背後に振り返ったなななが草むらに落ちているお面を発見し拾い上げた。お面は大空戦隊スカイレンジャーという五人組のヒーローものに出るリーダーのスカイレッドだった。
「誰かの落とし物かもしれないな」
 シャウラはそう言いながら近くに持ち主らしき者がいない事を確認するなり、お面に触れて『サイコメトリ』を使い、記憶を読み取ってみる。
「どう?」
 なななが読み取りが終わったのを見計らい、真剣な表情で訊ねた。
「落としたのは小さな男の子だ。着物を着ていたからここに住む妖怪かもしれないな。顔までは分からなかったが人に近い外見だった」
「……人に近い外見の妖怪かぁ。思いつかないねぇ。とにかくゼーさん、手分けして捜そう!」
 なななはシャウラから読み取った内容を聞くなりお面片手に草むらの向こうに行ってしまった。当然シャウラも協力する。
 シャウラとなななは二手に分かれ、周辺を捜し始めた。

 森の中。

「本当、なななといると退屈しないな。しかし、妖怪は宇宙生物だから宇宙刑事見習いとしては見捨てて置けないし探すか。おーい、お面を探している少年はいないか?」
 シャウラは花見早々に忙しく妖怪助けをしている自分達に苦笑しつつも持ち主捜しを始めた。

 持ち主捜索を始めてすぐ。周辺から物音。
「……そこにいるのは誰だ?」
 シャウラは足音を消し、警戒しながら近付いた。
 シャウラが草むらをかき分けると同時に
「うぉっ!?」
 二人分の驚嘆の声が上がった。
「何だ、お前達か。というか何してるんだ? それ、悪戯道具か?」
 いたのはロズフェル兄弟だった。何やら地面を掘り起こし、箱や袋を取り出していた。ちらりと見える中身から悪戯道具だろうと容易に判断出来る物ばかり。

「誰にも言うなよ!!」
「バレたらヤバイからよ」
 見つかった双子は焦った様子でシャウラに必死に頼み込む。朝、皆を案内する前に隠していた道具を確認をしていたのだ。ちょうどエース達の所でお菓子とお茶を貰った後だ。
「……言いはしねぇけど、なななへの迷惑だけは禁止なんでそれだけはヨロシクな。で、お面を落とした妖怪の少年を見かけなかったか?」
 ノリのいいところがあるシャウラは咎める事はしないが、たった一つなななの事に関しては警告した。

「見かけなかったよな、キスミ」
「おう」
 シャウラが自分達の味方だと知って双子は警戒を解き、質問に答えた。
「……そうか」
 どうしたものかと考えてるシャウラ。
 その時、
「おーい、ゼーさん。いたよ!!」
 お面を手に持った少年と手を繋いだななながやって来た。
「お、いたか」
 シャウラが振り向くとなななと手を繋いでいたのは、目も鼻も口もないのっぺらぼうの男の子だった。シャウラがななな達に視線を向けている隙に双子達は道具を地面に戻し、会場に戻っていた。
「……お面は三太君がお友達に貰った物で賑やかなお花見が気になって来たんだけど、恥ずかしがり屋で仲間に入れなくて家に帰ろうとした時に落としちゃったんだって、口が無いけど身振り手振りで話してくれたから、なななには分かったよ」
 なななはやって来るなり少年のっぺらぼうについて話し始めた。
「さすが、なななだぜ」
 シャウラは持ち主を発見するだけでなく仲良くなっている事に感心していた。
「で、ゼーさん。この子もお花見の仲間に入れてもいい?」
 なななはちらりと三太を見た後、恐る恐る訊ねた。
「もちろんさ」
 シャウラはあっさり快諾した。三人は会場に戻った。

 弁当箱を置いたままにしていたベンチに戻った。
 ベンチに座るなりなななはウトウトし始め、すっかり眠ってしまった。
「……捜し疲れて眠ったか」
 シャウラは疲れて眠ってしまったなななが風邪を引かないようにと自分の上着を掛けてやった。
「ななな、いつも俺を幸せにしてくれてありがとうな」
 シャウラはなななの天使のような寝顔に見惚れつつ感謝を口にする。
 すると
「ふにゅー、なななもーー」
 まるでシャウラに答えるかのようになななは寝言を洩らした。
「俺が一緒に遊んであげるから、寝かせておいてくれ」
 なななの寝言に笑みをこぼした後、なななを見上げている三太に言った。
「……」
 お面を被った三太はこくりとうなずいた。シャウラは三太とヒーローごっこをして遊んだ。動物と子供好きであるためノリノリだった。決して眠っているなななから遠くには行かなかった。結局、なななは狐火童を見る事は出来なかったが、妖怪助けとシャウラと過ごす事が出来て満足していた。