シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

とある魔法使いの灰撒き騒動

リアクション公開中!

とある魔法使いの灰撒き騒動

リアクション



【人を狂わすアイツの視線】

 早速一人、犠牲者を出しつつもアッシュ達は警戒しつつオアシスへと近づく。
 その間、偽アッシュはただ笑みを浮かべて近づくアッシュ達を見ているだけであった。
「ふむ、あれが偽アッグか……」
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が偽アッシュを見据えて呟く。
「先程の光、どうやら破壊力が高いビームを使うようだな。油断するなアッグ!
「……なぁ、アッグってまさか俺様の事か?」
「違うのか?」
 素で返され、「ああ、いいや」と困ったような表情をアッシュが浮かべる。それに対して何がおかしいのか、わからないとコアが首を傾げた。
「ごめんなさいねー、コアったらポンコツだから気にしないでおいて」
 ラブ・リトル(らぶ・りとる)が慰める様にアッシュに言うが、当のラブも『アッ(ごにょごにょ)』とはっきりと名前を言ってくれず、追い打ちにしかならなかった。ちなみにはっきりと聞こえないのは単なる偶然である。そう言う事にしておいてほしい。
 すると、その様子を眺めていた偽アッシュが動く。こちらを見てきたかと思うと、目が光り出す。比喩でもなんでもない、実際に目から眩い光が放たれているのだ。
「む! いかん! 奴はビームを使う気だ!」
 コアが飛び出し、皆を庇うように立つ。
「おい何やってんだ! レーザーの餌食になるぞ!」
 アッシュが叫ぶが、コアは笑みとサムズアップで返す。
「心配無用! ビームは奴の専売特許と言うわけではないッ! 私が奴を引き受ける! その間は任せたぞ!」
 するとコアは偽アッシュへ向き直り、構える。
「行くぞ! 必殺! アイ・ビイイィィィィッムッ!!」
 コアが叫ぶと同時に、目から眩い光が放たれる。

――説明しよう! 必殺『アイ・ビーム』とはコア・ハーティオンの両目から放たれる強力な光線のような光だ!
 その実態は【顕微眼】と同じ効果、というより単なる【顕微眼】なのだが、良い子の皆はツッコんではいけない!
 攻撃力? 光に弱かったらあるんじゃないかな! 後眩しいし!


「……なんだこの光景は」
 アッシュが脱力したように呟く。
 両目から眩い光を放つ偽アッシュとコア。どちらもそれからビームを放つ、ということは一切なく、単に目を光らせているだけという奇妙な光景である。
 コアは『任せた』と言っていたが、これでどうしろと言うのだろうか。正直近寄りたくない怪しい二人である。
「んー……あ、いいこと思いついちった♪」
 何か考える仕草を見せていたラブは、【レインボージュース】を取出し、こっそりと偽アッシュへと近寄る。
(んっふっふっふ〜、【レインボージュース】って確か中に『オレンジ』味も含まれてたはず。なら目にチュッとやれば『目がぁ! 目がぁ!』ってなるわよねぇ〜♪ ラブちゃんったらマジアイドルだわ〜♪)
 よく解らない自画自賛にニヤニヤと笑みを浮かべつつ、偽アッシュの後ろへと回り込む。こっそり、と本人は思っているだろうが、特に遮蔽物も無い為第三者からすれば丸わかりである。
 だが偽アッシュ達はお互い目と目が合う状態なので気付いていないようである。何の問題も無く、偽アッシュの背後へと回り込む。
 回り込むと、ラブはある程度間合いを取って偽アッシュに「ねぇねぇ」と呼びかける。すると、偽アッシュは普通に振り向いてきた。
「んっふっふっふ……くらえぇッ!」
 ラブが偽アッシュへ【レインボージュース】をぶちまけた。大量の液体が、偽アッシュへと飛んでいく。
「よっしゃ! 成功!」
 ラブがガッツポーズを決める――が、ここで驚くことが起きる。
「――ってうぇっ!?」
 偽アッシュは、飛んできた液体を、軽く身を捩り躱したのである。普通であれば完全な不意打ち。だが、偽アッシュは躱したのである。
「な、なんであのタイミングで避けられるのよ!?」
「当たり前だろ? 見えりゃ避けられる」
 当然、と偽アッシュが言ってのける。勿論、そんな簡単な事ではない。
「くっ……ハーティオン! 今よやっちゃえ!」
 ラブがコアへ駆け寄って叫ぶ。が、
「ってなんで錆びてるのよあんたはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
コアは完全に錆び付いていた。
「わ、わからん……奴の目を見ていたら……体が動かなくなって徐々に錆びて……」
 コアが苦しそうに言う。
「ちっ、このポンコツ使えねー……」
「そんな中、液体まで浴びてしまってな……」
 要するにトドメはラブが刺した、ということである。「テヘペロ♪」ってそれで済ますな。
「と、いうわけで、目からビーム!
 偽アッシュの掛け声と共に、両目からビームが放たれる。
「「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
 そのビームに、コアとラブは飲み込まれ、倒れた姿が残った。