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リアクション
「ああっ、あれは!」
戦闘を見守っていた神崎 零(かんざき・れい)は、突然光りだした偽アッシュに目を瞠った。
「あの光は一体…?」
「光じゃない、炎だ」
偽アッシュの全身から放出されるまばゆい光に目を眇めながらも神崎 優(かんざき・ゆう)は視線を逸らさない。
「両腕から炎が吹き上がっているんだ」
優の言うとおりだった。偽アッシュの腕は強い光を放つほど燃え上がり、周囲の温度を上げていく。熱波は水気を蒸発させ、瞬く間に灰人形たちが復活した。
メシエがホワイトアウトを放つも、吹雪は偽アッシュの元へ届く前に全て蒸発してしまう。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ムダァーーーーーーーッ!!」
勝ち誇った偽アッシュはさらに灰を放出し、再び大気は灰色へと化した。
「我が灰に、封じるという文字はない!」
笑う偽アッシュの口元で、白い歯がキラッと光った。
そして今度は二の腕を肩位置で水平にし、再びつけるポージング、ダブルバイセップス。
「俺様(の腕)を見ろーーー!」
「……ああ、面倒そうなやつだ」
優はあきれながらも腰の太刀、野分に手を置く。
無意味に熱血で暑苦しそうで、できれば相手にしたくない部類のやからだが、蒼空学園に席を置く身として、やはりこのまま放置しておくわけにはいかないだろう。
おっくうそうにため息をつく。その姿を見て、陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)が後ろでくすりと笑った。
そして同じようにほほ笑んでいる零に気付き、互いを見合う。
「まったく。優らしいですね」
と、刹那の視線は言っていた。
「ええ。本当に」
零は答えるように、ますます笑みを大きくする。
言葉にせずとも、彼らは分かっていた。
「これ以上あんなやつにツァンダを破壊されるのは困る」
そう口に出しながらも、本当は優は、アッシュの窮状を放っておけないと一番に考えていることを。
優と並んでいた神代 聖夜(かみしろ・せいや)もまた、2人の気配に気付いて肩越しに振り返ると、賛同するように目配せをする。
「どうした?」
「いや、なんでも。
それより、行くか」
「ああ。
零と刹那はサポートを頼む」
「はい」
「分かりました」
「聖夜、行くぞ」
応じるように、聖夜は上半身を獣状態へと変化させた。これが戦闘時の彼の姿だ。
「了解」
銀狼――ルナウルフの顔でニヤリと笑う。そして優とともに走った。
「神崎か」
近付く彼らに陣が気付く。
「放水をやめるな。効果があるのはたしかだ。やつは今、自分の周囲でしか灰人形を作れない」
すれ違いざまそう言うと、自身はまっすぐ偽アッシュに向かって行く。
刹那は禁じられた言葉の詠唱を終えるや、すぐさまホワイトアウトを放った。強化された風雪が優の周囲で吹き荒れて、灰人形たちを元の灰へと変えていく。
吹雪でできたトンネルの出口で、偽アッシュは待ちかまえていた。
筋肉隆々の腕から繰り出される右ストレート。優は避けるどころかさらに走る速度を上げた。腕に手をつき、軽々と頭上を飛び越える。
「なに?」
驚く偽アッシュを、着地と同時に抜いた野分で斬る。偽アッシュの背中に横一文字の傷が走った。
血は出ない。
「やはり作り物か」
ぱっくり開いた傷口に、ち、と舌打ちをもらす。
「きさま!」
激怒した偽アッシュのこぶしが炎をまとい、優目掛けて振り下ろされる。それを聖夜が邪魔をした。
「優には指1本触れさせん!」
麒麟走りの術で一気に距離を詰め、その勢いも乗せて隕鉄のジャマダハルで刺突をかける。だが突き抜けたのは残像で、刃はわずかにかすったのみだった。
「ぐう…っ」
距離をとった先でよろめく偽アッシュを見て、優がまた飛び込んでいく。そのあとを聖夜が。2人の時間差によるアタック、そして一撃離脱のヒットアンドアウェイが偽アッシュを翻弄した。
優と聖夜は息の合ったコンビプレイを駆使して、偽アッシュを追い詰めていった。
「く、くそ。きさまら…っ!」
偽アッシュはとびずさった先で、乱れた息を吐き出した。
もちろん優も聖夜も疲労している。接近戦で読み違え、偽アッシュのこぶしをくらったり、炎を浴びたりも少なからず受けていた。しかし後方でサポートに徹している零の飛ばすヒールが彼らを癒し、疲労を緩和させている。
だが偽アッシュには回復魔法は使えず、サポートする者もいなかった。蓄積するダメージに、あきらかに灰の排出量が減り、灰人形の増殖も衰えていた。
「さあ偽アッシュ、その腕をおとなしく渡してもらおうか」
逃走を防ごうと全員が立ちはだかり、偽アッシュを一角へと追い込む。
うなだれた偽アッシュの体がわなわなと震え始めた。
「……ざっけんじゃねーぞ、てめーら……」
「ん? 何?」
偽アッシュの顔は歪んでいた。
怒りと、そして嗤いに。
「そういうことはこれを食らってから言えってんだ!」
「! なに!?」
偽アッシュを中心に、周囲の大気が突然燃え上がった。
まるで空気そのものが自然発火、爆発したように。
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