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【未来を見据え、けじめをつける!】

 続いて私は、丘の麓に出店されている屋台に注目してみた。
 様々な人々に美味しい料理を提供する人々が何を思い、何を見ているのかを取材した。



 カレーの美味しそうな匂いについ足を止めてしまうような、繁盛している屋台があった。ここは、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)たちが出店している軽食の店だ。
 様々なメニューがあるが、中でもサンドイッチとひとくちサイズのオードブルが詰め合わせになっているバスケットが、人気らしい。丘のところどころで、このバスケットを囲んでいる人たちがいるのを見かける。
「はいそこ、食べてって!!」
 目星を付けた通行人に、和装ゴスロリ姿の諸葛亮 芽依(しょかつりょう・めい)が差し出すトレーには、一口サイズに切られたキーマカレーのパイと丸いカレーパンが乗っている。規格外品を試食してもらうことで、上手くお客さんを呼び込むのに成功しているようだ。
 今、芽依に呼び止められたのは、桐生 円(きりゅう・まどか)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)だ。二人は腕を組んだまま足を止めたが、身長差のため円がパッフェルの腕にぶら下がるような格好になっている。
「ご飯ものもあるし、特製ブレンドのハーブティもあるよ!」
「……どうする?」
 パッフェルは、甘そうなクレープを握っている円に訊ねる。円はカレーパンを一つつまんで、口の中に放り込む。
「そしたら、ハーブティとか一緒に飲む? ……あ、このパン、甘めで美味しいよ!」
 円たちが相談していると、芽依はその後ろを通りかかったニ人組に目を止めた。
「そこの二人も食べてって!!」
 トレーを差し出されたのは桐生 理知(きりゅう・りち)辻永 翔(つじなが・しょう)だ。二人に積極的に試食を薦める、芽依を、奥で調理をしている夏目漱石著 夢十夜(なつめそうせきちょ・ゆめとおや)が微笑みながら見つめていた。
「カップルのお客さんたちって、誰もが幸せそうに見えますよね」
 夢十夜に話しかけられたディアーヌ・ラベリアーナ(でぃあーぬ・らべりあーな)は、円たちと理知たちを交互に見比べた。ディアーヌには、好きな子がいる。次の卯月祭には、その子と二人で参加できたら……と思いながら、通り過ぎるカップルたちを見つめていたのだ。
「みんな楽しそうで、羨ましく思います」
「イチャイチャラブラブでホント、リア充爆発しちゃえって感じ?」
 試食のトレーを持ったまま、カウンターまで戻ってきた芽依が言う。
「ディアきゅんは、何か恋のヒントを見つけられた?」
 ネージュがディアーヌに訊ねると、ディアーヌは困ったように首を傾げた。
「ヒント――ですか」
「今試食に来てくれている二組のカップルの人たちを、観察してみるというのはいかがでしょう?」
 夢十夜の言葉を聞いて、芽依がにやりと笑った。
「それなら、このメイちゃんにおまかせ!」
 そう言うなり、すかさず芽依は円と理知の元へ飛んで戻って行く。
「二人で静かに過ごしたいならこっちの丘が穴場でオススメだよ! 今ならきっとまだ誰にも取られていないよ!」
 芽依の熱烈な薦めと誘導もあり、二組のカップルはお店の近くのスペースでランチをすることになったのだった。