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ヒュズクデンゲラブンゲリオン

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ヒュズクデンゲラブンゲリオン

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5.ヒュズクデンゲラブンゲリオン試合

 紅白それぞれに別れたチームのメンバーは、まずは足でボールを蹴って相手陣地を目指す。
 しかしそれぞれの動きは遅い。
 何故なら、手にはお玉。
 その上にはあつあつ半熟卵が乗っているからだ。

 そんな中、一歩先んじたのは白チームの美羽、コハクコンビ。
「行こう、コハク!」
「うん、美羽!」
 息もぴったりなコンビネーションでボールを操り、舞花のガードをすり抜け紅チームへ。
 そしてフラグを倒し、ポイントゲット!
「やったね!」
「うん、先制点だ!」
 勢いづく白チーム。

「……いい気になるのもそこまでであります。行くであります、アル殿!」
「え、え、え〜」
「うわっ、熱つつつつうっ!!」
 キロスの悲鳴が響く。
 吹雪がお玉に乗った半熟卵をキロスに投げつけたのだ。
 勿論、ルール上認められている攻撃だ。
「まだまだ行くであります! アル殿、その半熟卵も投げるであります!」
「そ、そんな事言われましても……」
「これは試合! ならばそのお玉を寄越すであります!」
 吹雪が戸惑うアルテミスからお玉ごと半熟卵を奪い取る。
 そしてキロスに狙いを定める。
「ぐっ、畜生……っ」
 既に1回卵に当たっているキロスは、あと1回当たると退場になってしまう。
 吹雪が、半熟卵を投げる!
「危ないですっ!」
 そこに割って入ったのは、柚。
 柚のお玉に半熟卵がすぽりと収まる。
「食べ物を粗末にしちゃいけません!」(※半熟卵は後でチームの皆でおいしくいただきました)
「わ、悪ぃ、助かった……」
「いいえ、まだ相手は卵を持っています!」
 未だ状況は変わらず。
 そこに新たな助っ人が現れた。
「ここは任せて!」
「操るなら、卵よりボールだな」
 足でボールを操りながら吹雪に近づいて来たのは歌菜と羽純。
「くらえ!」
 羽純がボールを蹴る。
 吹雪に向かって、真っ直ぐに。
 ひらりと身をかわす吹雪。
「これしきの攻撃……軽いであります!」
「そうかしら?」
 余裕で構える吹雪に、歌菜が問う。
「ボールはまだ生きているわ」
「何ですと?」
 跳弾。
 壁に当たって跳ね上がったボールが吹雪に向かっていた。
「うわっ!」
 吹雪にボールが当たる。
 卵なら2回、ボールなら1回でアウト。
「く……っ」
 吹雪はフィールドから退場となった。
「わ、私は私で動きますうっ」
 アルテミスは早々に吹雪を見捨てていた。

「なかなか良いゲゲパイスだ。フィフィデキックできているな」
「ルェフィジュルンするとパゼストラックしてしまいますから。デンデンムシーンのパックサヴンを教えてくれたのはコーチじゃないですか」
 アルクラントの言葉に、貴仁が顔色も変えず答える。
 既に貴仁は、あらゆるヒュズクデンゲラブンゲリオン用語をマスターしていた。
 言葉を交わしながら、互いの目はボールから話さない。
「さあ、見せて頂戴。このままではマリュマリュモリュイモリュイがポニーニョしてしまうわよ!」
「そうはアンノーですっ!」
 エメリアーヌの攻撃を避け、貴仁はボールを奪う。
「そう、そのままユギラウスするようにピェージェして……トリオンッ!」
 その動きに思わずアルクラントは感嘆の言葉を漏らす。
「いいシンクロ率だ…… 私を越えたな」
「まだまだジャッコホンですよ……それっ、ウボァー!」
 そう言いながら、貴仁は紅チームへとボールを蹴る。
 竜斗へとロングパス。
 ルールを知っているということになっているミリーナは見学し、竜斗たちの応援に回っていた。
「そこを真っ直ぐ行くのだ、主殿! ユリナ殿と史織殿は、横から回り込んで!」
「分かった、ミリーナ!」
「行きます!」
「やるですぅ!」
 ミリーナの声援を受け、竜斗たちが走る。
 ネージュの卵攻撃をかわし、セレンフィリティからボールを奪う。
 そしてユリナと史織のサポートを受けた竜斗は、足でボールを高く高く蹴り上げる。
 ボールは、頭上のバスケットリングへ……ゴール!
 白チームに新たなポイントが入った。
「やった!」
「あ……!」
 一瞬の歓喜。
 しかし次の瞬間、ミリーナは息を飲む。
 ひとつのボールが竜斗たちに渡っている間に、もうひとつのボールがアルテミスに渡っていたのだ。
「やった、ハデス様、取りました!」
 白チームのフラグがアルテミスによって取られてしまった!
「うむ、さすが我がオリュンポスの精鋭!」
 ハデスが満足そうに頷く。
 しかしそれが紅チームの隙に繋がった。
「こっちだって、負けてないよ!」
「うふふ、もうあと一撃ですわ」
 ミルディアと真奈の声。
 気が付けば、二人は紅チームのココナッツの木の上にいた。
 しかも真奈が手に持つは、安全競技用包丁。
 彼女たちは既にココナッツの確保を終えていたのだ。
 そこに、ネージュが走り込む。
「なかなか上手だね! 最後の一撃……間に合うかな!」
「真奈さん、危ない!」
「ミルディア様!」
 ネージュが卵を投げた。
 ミルディアが真奈を庇い、卵の餌食となる。
 しかしその間に、真奈の包丁がココナッツに!
 ココナッツミルクがあふれ出た。

 ゲームセット!
 白チーム、勝利!!

「く……っ、今日はこの位にしておいてやろう」
 ハデスはアルテミスを引き連れ、去っていった。