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理不尽世界のキリングタイム ―トラブルシューティング―

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理不尽世界のキリングタイム ―トラブルシューティング―

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第二章 入り口という名の残機ホイホイ(結果的に)

――容疑者一行は残念ながら無事に研究所出入り口まで辿りついた。
 本来であるならば、辿りつくまでの間残機が失われるような爆発が起きたり、裏側で色々あってうっかり何人かお亡くなりになるのが普通なのだが、残念ながら容疑者は無事だ。
 それもなななの慈悲深さによる物だろう。甘い、と言われるかもしれないが、こんなところで全滅なんてされたのでは面白くない。

「……くっくっく、どうやら無事に辿りついたようであるな」
 一足先に研究所まで辿りついていたドクター・ハデス(どくたー・はです)(4/4)が、近くの物陰から容疑者一行の姿を確認し呟く。
「あの、ご主人様……じゃなかったハデス博士。何故皆さんと一緒に行動しないのですか? しかも【戦闘員】まで連れて」
 ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)(4/4)が【オリュンポス特戦隊】を始めとした各種【戦闘員】をちらりと見る。全く隠そうとしていないのがいっそ清々しい。面白そうなのでスルーで。
「何故? 何故とな? 我らは秘密結社オリュンポス! 世界征服を企む悪の秘密結社である! この武装勢力に加勢し、世界征服を成し遂げるのだ! っと、そろそろ来たぞ! 準備はいいか!?」
「わ、わかりました!」
 容疑者一行が出入り口付近まで近づいたその時、ハデスが前へと躍り出るとヘスティアを始めとした【戦闘員】達も慌てて飛び出す。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハ「曲者ぉッ!」でぇずぶぉっ!?」
 躍り出た瞬間、背後から入り口の兵士達のフルオート射撃の餌食となり、あっという間に蜂の巣、というか肉塊と化す。
「ご、ご主人さmじゃなかったハデス博士ぇ!?」
「まだいたぞ! 撃てぇッ!」
 そして、一緒に飛び出してきたヘスティアや【戦闘員】達も集中砲火の餌食となる。
 容疑者達が向かっていたのは研究所の出入り口である。その前を飛び出す、というのだから、背後に出入り口を守る兵士達がいるわけで。そんな前を飛び出したら撃たれるのは当然なわけで。流石にこれはフォローできない。
 哀れな肉塊はそのまま消滅した。その内、ハデス(3/4)とヘスティア(3/4)が送られてくるだろう。

「……ちょっとどういうことよ。あれじゃ奇襲のしようもないじゃないの!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)(3/3)が忌々しげに舌打ちするのを、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)(3/3)が「落ちつきなさい」と宥める。
 射撃音を耳にした容疑者達は、研究所から少し離れた場所身を画し、出入り口に目をやっていた。
 その視線の先には4名の兵士達。アサルトライフルで武装し、出入り口を背にしていた。
 4名は出入り口前から、全く動くことはない。普通、このような施設で警備をするとなると、周囲巡回も行う。
 だがこの研究所の出入り口はたった一つ。ならば巡回などするより、一ヶ所を守った方が強固になるという物。
「流石にあれじゃ無理ね」
 セレアナが軽く溜息をもらす。
「いや、まだチャンスはあるはずよ。あたしはそれを狙うわ」
 セレンフィリティは奇襲という作戦を捨てきれないようで、視線を外さずに向けている。
「ごめん、ここはみんなに任せるわ。流石に武器持ちを素手で相手にできないし」
「私も、倒すのお願いするよ」
「同じく、任せるのだ」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)(4/4)、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)(3/3)、リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)(2/3)はそう言うと、一歩下がる。
「しかし誰かが扉を開けねばならん。その役目、わしが引き受けよう」
「お、おい甚五郎、いいのかよ?」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)(5/5)が一歩前に出ると、オリバー・ホフマン(おりばー・ほふまん)(5/5)が慌てた様子で甚五郎に近寄る。
「誰かがやらなきゃならん。何、気合でどうにかなる」
「なるわけねぇだろ……精神論で何もかもうまくいくわけが」
「気合が足りん! わしを見とけ!」
 そう言うと甚五郎が出入り口へと足を向ける。その様子を見て、オリバーは「仕方ねぇなぁ」と自らの姿を獣と化し、後を追う。
「どうやらおぬしも気合が何たるかを理解したようだな」
「んなわけねぇだろ。だが、あんたに負けてらんねぇからな」
 オリバーの言葉に、甚五郎が笑みを浮かべる。
「ふん、見てろ……! おぬしら! その扉を開けてもらおう「また曲者だ! 撃てぇッ!」かぁぁぁぁぁぁッ!?」
 そして、あっという間に二つの肉塊が出来上がった。
 気合や勢いでどうにかなる事もあるが、どうにもならない事の方が世の中多い。今回は駄目だったが、きっと次の甚五郎(4/5)とオリバー(4/5)は学んでいるだろう……いや多分無理だろうな。
「ふぅ……ったく、何なんだ……?」
 空になった弾倉を交換しながら、兵士が溜息を吐いた。
「全くだ。いきなり変なのが来やがる……一体なんだって……ん?」
 もう一人の兵士の目に、何かが映る。それは、地面を這いつくばる何か。芋虫のように身を捩らせ、兵士達に近づいてくるそれは、芋虫と呼ぶには大きすぎた。
 それ――パールビート・ライノセラス(ぱーるびーと・らいのせらす)(4/4)は真っ直ぐに出入り口へと向かっていた。
 時折何かを気にするような仕草を見せる。それは話す事が出来ないパールビートが身振り以外で取れるコミュニケーション手段、筆談に必要な【ハンドベルト筆箱】が入った【リュックサック】だった。
「な、何だってんだありゃ……」
 兵士達が戸惑う中、パールビートは動きを止め、【リュックサック】から【ハンドベルト筆箱】を取り出そうと漁りだす。
「う、撃て! 撃てぇッ!」
 そして、兵士達がパールビートに集中砲火を浴びせる。そりゃそうだ。
 弾倉を空にして、息を荒げる兵士達。残ったのは弾痕とパールビートだった物。
 そして、一枚のメモ用紙が。それには『ご飯食べれる場所どこ?』と書いてあったが、兵士達の目に入る前に、風で何処かへ飛ばされた。
 質問をする時は相手をよく考える事。きっと次のパールビート(3/4)は……うん、学ばないだろう。

「全く、無策で突っ込んで何とかなるわけないじゃない」
 藤林 エリス(ふじばやし・えりす)(3/3)がやれやれ、と溜息を吐く。
「そう言うからには何か策でもあるんですかい?」
 ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)(3/3)が問うと、ふっふっふ、とエリスが笑みを漏らす。
「そうね、ピザの宅配にでも変装して近寄ってみようかしら」
「ピザの宅配、ですか?」
「まぁそっちはあくまでも近づく目的。メインはこっち。これで相手を悩殺して混乱させてやればこっちのもんよ。ハイキックをお見舞いしてやるわ。あ、悩殺ってのはあくまでもあたしの魅力で、よ?」
 そう言ってエリスはマニキュアが塗られた爪をちらりと見せる。普通のマニキュアではないだろう。恐らく【魅惑のマニキュア】と思われる。
「……意見言っても?」
 ルースが言うと、エリスが「どうぞ」と返す。
「単純な疑問なんですがね、変装ってどうやって?」
「……それが大きな問題よね」
 大きすぎると思う。
「まあ近づけて隙を突ければ何とかなる、ってことですよね? ならオレに策があるんで、ちょっと手を貸してもらえませんかね?」
「策? まあ、いいけど」
「よし、それじゃ行きましょうか」
 そう言ってルースに連れられ、エリスは出入り口へと向かう。
 その姿を見た兵士達が、ルースとエリスに銃口を向けた。
「ちょ、銃向けてきたわよ!? その策って何なのよ!?」
 慌ててエリスが言うと、ルースはその場でしゃがみこんだ。
「あー、策って言うのは……」
 そう言うと、ルースはエリスのスカートの端を掴み、
「これですよっと!」
思いっきりまくり上げた。そこで現れたのは、
「な゛っ゛!?」
エリスの下半身を包む下着、パンツである。どのような物であったかは、本人の為にも御想像にお任せ。
 突然の事に、流石の兵士達も動きを止めた。
「よし、今だ「何してくれるのよこのあんだらぁぁぁぁッ!」ぉぶぁッ!?」
 立ち上がったルースを待っていたのは、エリスのハイキックであった。側頭部を的確に捕らえたハイキックは、ルースの頸椎に重篤なダメージを与える。ちなみにその際もちらりと見えた。
「な、なんか仲間割れ始めたぞ! 撃てぇーッ!」
 そんなことをやっていれば撃たれるのも当然。二人とも集中砲火を浴び、あっという間に塵となるのであった。

「うーん、なんかフツー過ぎるなぁ。うん、フツー過ぎる」
 4名と1匹(?)が散る様を見て(後最初の方で2名程散ったけど多分みんな見えてないと思うのでノーカン)、ミリー・朱沈(みりー・ちゅーしぇん)(3/3)が1人で何度も頷いてみせる。
「何がフツーなのぉ、ミリー?」
 フラット・クライベル(ふらっと・くらいべる)(3/3)がそんなミリーの様子を見て首を傾げる。
「あれ。相手がフツー過ぎない?」
 そう言ってミリーが出入り口の兵士を指さす。
「そうねぇ……確かにフツーかなぁ」
「フツー過ぎて気になる。視線を兵士に誘導させようとしてるような感じもするんだよね。ひょっとして、周りに罠とか仕掛けてあるんじゃないかなー、って思ってね」
「あ、賛成。なら罠あるか調べるのかなぁ?」
「そうだね。周りに罠があるとなると安心して強行突破もできないよ」
 ミリーとフラットがうんうんと頷く。いや、そこは強行突破すべきところじゃないと思う。
「よし、調べてみようよ。ま、罠に引っかかって一回くらい死んじゃうのもありかもね」
「そうねぇ……残機が減るってどういうのか楽しみぃ……きっと面白いんだろうねぇ……ふふっ……」
 ミリーとフラットが口の端を歪めてニタァ、と厭らしく笑みを浮かべる。
 すると、ミリーとフラットは出入り口に向かって周囲を気にしながら歩き出す。
――ここでちょっと舞台を説明。罠、と言っても仕掛けられそうな場所は出入り口へと向かう道くらいしかない。
 つまり、調べるという事は出入り口へ向かって歩いていく、という事で。さて、その結果はどうなるか。
「また曲者ぉーッ!」
 フルオート掃射で、ミリーとフラットの残機が減ってミリー(2/3)とフラット(2/3)となった。次の二人はうまくやってくれると思いたい。