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あの時の選択をもう一度

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あの時の選択をもう一度
あの時の選択をもう一度 あの時の選択をもう一度

リアクション

 リースを助けた後。
 リアトリスは次々と入ってくる情報から犯人はまだこの町にいると判断し、見つけ出し捕まえようと動いていた。
「他の人に迷惑をかけるなんて許せない!! 早く捕まえてやめさせないと」
 リアトリスは多くの被害者やその関係者達の顔を思い出し、犯人に憤っていた。
「……一応、警戒はしておかないと」
 リアトリスは『殺気看破』を使用し、警戒しながら魔術師を捜して回る。
「これが解決したら効果があるか分からないけど被害現場付近にミントかローズマリーを植えるように頼んでみようかな」
 リアトリスは事件後少しでも町の人達が安らかに過ごせるために何かしたいと考えていた。ちなみにこの案は事件後エリザベートによって実現した。リアトリスは思考する間も警戒は怠らなかった。

 犯人捜索を始めて様々な情報が入って来てからしばらく。
「……この先に何かあるのかい?」
 犯人捜しをしていたリアトリスは道に突っ立っているアフィヤに気付き声をかけた。
「君も興味あるんやな。僕の占いでな、この先におもろい事が待っとるんや」
 アフィヤが気まぐれ猫のように笑いながら曲がり角を指さしながら言った。
「……犯人がいるんだね?」
 リアトリスはすぐに“おもろい事”が何か見当が付き、聞き返した。
「そうや」
 アフィヤはニヤニヤと笑いながら言った。
「……確かに何か嫌な魔力を微かに感じるような」
 リアトリスはわずかに感じる嫌な気配にアフィヤの言葉が本当だと信じ、魔法の携帯電話でみんなに連絡をした。その際清泉 北都(いずみ・ほくと)達とみのり達が向かい側の曲がり角の前にいる事を知り、曲がり角の先にある真っ直ぐな道で挟撃作戦で犯人を捕縛する事を相談した。
 相談を終えた後、
「よし」
 相手がかなりの強敵のためリアトリスは出来うる限りの力で自分を強化してから向かう。『超感覚』で白い大きな犬耳と1mある白い犬の尻尾が生やし、万一に対応出来るように整え、『ヒロイックアサルト』で手の甲に織田家の家紋が浮かび上がらせ攻撃力を上げてからスイートピースライサーを構え、向かった。

 あの双子が巻き込まれたと聞いて北都と白銀 アキラ(しろがね・あきら)は事件解決のために駆けつけていた。
「被害者の方はみんなに任せて僕達はこの事件の情報収集をするよ」
「例の魔術師だな。あの双子も被害にあったというし、とんでもねぇな」
 今、北都達は一度双子の様子を確認した後でこれから情報収集に向かおうというところだ。北都達が遠目から双子の様子を確認した時はちょうど患者が運び込まれている時だった。
「場所がイルミンって事と、今までに無い妙な事件ってあたりからそう思うけど、もしかしたらというのがあるから先入観は持たない方がいいかもしれない」
 北都はアーデルハイトの危惧も頭に入れながら言うも9割は例の魔術師で間違い無いと思っていたりする。
「だな。時間があったらあの双子の見舞いにでも行ってみるか」
 白銀はすっかりいつもの調子を失っていた双子を思い出していた。いつもは少し大人しくしてろと思うが元気の無い様を見ると可哀想に思う。
「そうだねぇ」
 北都はうなずいた。
 そうこう話している内に甚五郎達から被害者マップと衛兵からの証言が入って来た。
 それにより犯人は正体不明の魔術師で間違い無いと判明し、他の情報収集者と分担し、改めて聞き込みを再開した。

 そして、迅速に被害者マップを目的の場所に向かい、到着した。
「……この辺りかな」
 北都は被害者マップと現場を確認した後、『ディメンションサイト』で被害者が倒れた場所に立ち、目を瞑り周囲の状況を把握し、
「目撃者がいそうなのは……」
 目撃可能ポイントをいくつか選ぶ。
「よし、後はオレに任せろ」
 白銀は北都の情報を元に『超感覚』で嗅覚を強化し周辺を探って匂いを強さで先ほどまで人がいたのかを確認しそれによって人を見つけたり、いなければ匂いを辿って異動先を探し『神速』で素早く聞き込みを終わらせていく。北都は『T・アクティベーション』で白銀は『肉体の完成』で身を守りながら調査をする。そして、北都は先を行く白銀に『テレパシー』にて指示をしていく。
 聞き込み相手が建物の中の場合は白銀が『軽身功』で壁を駆け上がり、
「おーい、ちょっと聞きたいんだけどさ」
 窓を叩いて目撃者に声をかけ情報を集めていく。
 この後も、あちこちと情報を求めて移動する。
 結果、
「……人の目撃情報は急に倒れたというものが多いね。魔術師を見たと言う者は被害者目撃者共にいない」
 北都は自分達や他の人達が集めた情報を整理し始める。
「被害者周辺のモノにははっきりと魔術師に姿が残っていると」
 白銀は甚五郎達から知らされた情報を挙げる。
「今回は今までに無い事だねぇ」
「あぁ。事件自体は手記に載っているものと同じとか言うけど、何か嫌な感じだよなぁ」
 フレンディス達からの情報も合わせて北都と白銀は今までと少し様子が違う事に頭を傾げた。
 ふと
「……何か見つけたのかな?」
 北都は少し先に亡き人に導かれるまま歩いているみのり達を発見した。
「おーい、何か新しい事でも分かったのか?」
 同じく気付いた白銀が大声でみのり達に声をかけた。
「いいえ、分かっていないわ」
「……そう……ですか……この角を……曲がって……真っ直ぐ……行った……先に……いる……のですか」
 アルマーが首を振りながら答える横でみのりは亡き人から何やら情報を得ていた。
「いる、と言うのは魔術師の事かな?」
「……はい」
 何かを察した北都の問いかけにみのりは静かに答えた。
「とうとう、あいつの姿を拝めるって訳か。よし!」
 白銀は今まで振り回してくれた魔術師に対面出来るとあって倒してやると意気込むと共に油断はしないように気を引き締めていた。
 その時、
「……ん?」
 北都にリアトリスからの連絡が入った。
 そして連絡を終えるなり
「反対側にも僕達と同じような人がいるみたいだよ。こちらの状況は伝えてあるから同時で捕まえようという事になったんだけど」
 北都はリアトリスの状況をこの場にいるみんなに話した。
「任せろ、行くぜ!!」
 白銀は二刀の霊断・黒ノ水を構え、『神速』で向かった。
「分かった」
 北都は『テレパシー』でリアトリスにこちらが動いた事を知らせてから現場に急いだ。
「……みのり、危険だからここで待っておく?」
 アルマーはこれからの事をみのりに訊ねた。
「……行き……ます」
 みのりはそう答え、ゆっくりと歩き始めた。
「分かったわ」
「行くか」
 みのりの意見を尊重するアルマーとグレンは反対はしなかったが、警戒は強めみのりと共に現場へ向かった。

 現場。

 イルミンスールで度々目撃されていた正体不明の魔術師が意思のない生物のようにぼんやり突っ立っていた。
「いた!!」
「見つけたよ!!」
 魔術師を見つけた白銀とリアトリスは己の武器を構え挟撃を敢行。
「毎回、隠れてるんじゃねぇ!!」
 白銀は構えた二刀でローブを切り裂く。
 毎度姿を見せず双子と違って笑えない悪戯ではない本当の迷惑をばらまく魔術師を本気で仕留めようとしていた。
「もう観念するんだよ!!」
 リアトリスはスイートピースライサーで『レジェンドストライク』を魔術師の身体目がけて繰り出す。強化してあるため大抵の相手にはお迎えが来るほどの威力。

 白銀とリアトリスの攻撃は確かに魔術師の身体を貫いたのだが、
「何だこれは」
「手応えが無いよ」
 白銀とリアトリスは全くの手応えを感じなかった。

 攻撃を受けたにも関わらず倒れない魔術師の身体はローブと共に切り裂かれたところから徐々に細かな粒子に変貌し空へと昇り、消えてしまった。
 残ったのは散々振り舞わされた者達だけだった。

 あまりにも拍子抜けな結末の後。
「……何なんだ。これで終わりか?」
「……消えた」
 白銀とリアトリスは拍子抜けしていた。
 しかしすぐにやるべき事を始める。
「とりあえず、僕はこの事をみんなに知らせるよ」
「あぁ、頼む。オレは周囲を確認する」
 リアトリスは他の人達への報告、白銀は周辺の確認にすぐさま動いた。

「……とても……大きな……嫌な……魔力を……感じ……ました」
 みのりは空を見上げながらつぶやいた。
「……これで終わりならいいんだけど」
 北都も同じく空を見上げるも浮かない顔をしていた。粒子化し天に昇った際に感じた嫌な魔力がその原因だ。その事がみんなを素直に喜ばせようとしない。まだ何かあると。
「これで今回は終わりやね。さてはてこれからどうなるんやろーな」
 リアトリス側にいたアフィヤは魔術師が先ほどまでいた場所を見ながらニヤニヤしていた。
「アフィヤ!」
「お前、どこに行っていたんだ」
 アルマーとグレンは自由人の仲間に声をかけた。
「おー、皆さんお揃いで。いやー楽しもう思ってなぁ」
 アフィヤは自分のパートナー達を発見するなり、ゆるく笑いながら勝手に行動した事に悪びれる様子は無かった。
 周辺を調べるも何も無かったため北都達、リアトリス、みのり達は被害者が収容されている場所へ帰還する事にした。