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あの時の選択をもう一度

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あの時の選択をもう一度
あの時の選択をもう一度 あの時の選択をもう一度

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 エリザベートから依頼を受けた後。
「被害者の事は気になるが、儂等は情報収集を行う。エリザベート校長によるとあの魔術師の仕業の可能性があるらしいからな。まぁ、ヒスミの事はキスミもついているし、大丈夫だろう」
 甚五郎は被害者の事は気になりつつも事件解決のためにも情報収集に専念する事に決めた。頼りになる協力者達は自分達以外にもいるので心配は無い。
「そうじゃな。しかしあの双子まで犠牲者に名を連ねるとは、あの魔術師、許さぬ」
 羽純はよく知る双子が被害者となったと知り、憤っていた。
「過去にも同じ事象が無かったか聞き込みですね。他の事件が例の手記に載っていましたからきっとこの事件も載っているはずです!」
 ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)は名も無き旅団の手記に最近起きた古城変死伝説と同じ事件が載っていた事を思い出していた。
「……厄介な相手だな」
 スワファル・ラーメ(すわふぁる・らーめ)はあちこちで倒れている人々を眺めながら言った。
「手始めにヒスミや他被害者倒れた場所を聞き出し、地図を作り、その周辺から聞き込みや記憶を読み取って行くか」
 甚五郎は調査方針を決める。
「甚五郎よ、衛兵に連絡してみてはどうじゃ? 事件によっては目撃者もおった故今回もおるやもしれぬ」
「そうだな。見たまま魔法使い、という風体の者を見かけなかったすぐに確認を入れよう」
 甚五郎は羽純に言われるなり手早く衛兵に連絡を入れた。
 すぐに話は終わった。
「どうでしたか?」
 ホリイが連絡が終わったのを確認してから訊ねた。
「つい二日前に町に入るのを見かけた者がいた。それ以降姿を見た者はいない。しかし、目撃証言も寝不足で目撃した時間ウトウトしていたため明確には覚えていないと断りは入れられたが」
 甚五郎は証言そのままに仲間に伝えた。
「……ふむ。それが正しいとして二日前にここに入ったのは確かだがまだおるのかどうかは分からぬという事じゃな」
 羽純は肝心な事が不明確であるに事を指摘した。
「……そういう事だな。いるかいないかは調べればすぐに分かるだろう」
 甚五郎は魔術師には何度も遭遇しているためか慣れたものだ。
「わらわは出来上がった地図を元に被害者が倒れた現場を中心に4カ所ほど囲むように記憶を読み取るかのぅ」
「我は現場を見下ろせる場所にあるモノを読み取るとしよう。我には聞き込みは不向きであるからな」
 羽純とスワファルは『サイコメトリ』での読み取りで魔術師を追う事にする。
「儂等は主に聞き込みをしていくか。ついで例の手記についても知りたいところだな」
「それも聞いてみましょう。本なら本屋です」
 甚五郎とホリイは通常の聞き込みを担当する事に。
 分担を決めた所でキスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)や被害者達の関係者に会い、地図を作り上げ他の情報収集者達にもデータとして渡してから行動を開始した。途中、意識を取り戻した者に会った際も聞き込みをするが覚えている事は奇妙な声ぐらいで確かな手掛かりとはならなかった。途中、亡き声を聞く者に会い、協力を頼んだ。

 読み取り担当側。
「……何のつもりじゃ、これは」
 羽純は読み取った記憶に忌々しそうな声を上げていた。
「……確かに。これはまるでわざと読み取ってもらおうとしているようだ」
 付近の屋根で読み取りをしていたスワファルもうなずいていた。
 二人が見たのは騒ぎを起こす前と思われる通りを歩く漆黒のローブをまとった魔術師の姿。フードを目深に被り顔が分からない事、被害者と接触した記憶が無い事以外はこれ以上にないくらい明確だった。記憶を残さないように出来る者があえて残しているには何かある以外考えられない。
「そうじゃ、暴けるなら暴いてみろと戯れておるのか正体を暴こうとするわらわ達をはめる罠かそれともそれ以外か、分からぬが被害者には姿をさらしてはおらぬから用心はした方が良かろうな」
 羽純はなおも忌々しそうな口調だが、思考は冷静だった。相手は肝心な所はきっちりと姿を隠しているのだ。
「そうだな」
 スワファルも同意とばかりにうなずいた。

 本屋。

 ホリイは名も無き旅団の手記についての情報収集をしていた。甚五郎は別の場所で今回の事件の聞き込みをしている。
「……外の事件の事とかその魔術師は知らないが、不審者は来たな、その名も無き旅団の手記は無いかって」
 店主は眉を寄せながらつい先ほど来店した客について話し始めた。
「不審者のような人ですか?」
 また悪人だろうかと危惧しながらホリイが聞き返した。
「あぁ、こう顔全体を防護マスクで覆っていて冬山登山のような格好をした奴なんだが、本は無いし古そうな感じだったから古本屋でも行けと言って追い出した」
 店主は事件が起きる少し前に来た奇妙な客を思い出した。
「……そうですか。お話、ありがとうございました」
 ホリイが礼を言ってから店を後にした。

 通り。

「しかし、ここに来て不審者とは」
 甚五郎がホリイの話を聞いて開口一番口にしたのは当然不審者のような人の事だ。正体不明の魔術師の次は手記を求める不審者のような人。忙しい事だ。ちなみに甚五郎の目撃者への聞き込みは何も見なかったという証言だけだった。
 そこへ
「甚五郎、今回は厄介じゃ」
 羽純が読み取りの結果報告と聞き込みの具合を確認するためやって来た。スワファルは仕事中だ。
「そうか、羽純の予想通りかもしれんな。まぁ、遭遇したしてもどうにかなるだろう」
 と報告を聞いた甚五郎も羽純と同じ意見だった。今まで現場に記憶を残す事は無かった。残っていたとしても曖昧な記憶ばかりだったが今回はそうではない。それが余計に危険に思える。
「そちらの案配はどうだ?」
 いつの間にはやって来たスワファルが訊ねた。
「手記を探している人はいるみたいなのですが、その本屋さんが不審者として追い出した人なんです」
 ホリイが聞き込み内容を話した。
「……不審者とは。また……まぁ、調べてみるかのぅ」
 羽純は軽く息を吐いた。また何者か分からぬ者かと。
 とりあえず、甚五郎達はそれぞれ担当の仕事をこなしながら教えて貰った古本屋へ向かった。

 古本屋付近。

「甚五郎、教えて貰った古本屋さんですよ。もしかしてあの人じゃないですか?」
 ホリイが少し先にいる本屋の店主が言っていた通りの姿をした人を発見した。
「……そうだな。しかし、あの格好では追い出されても仕方無い気がするが。どうやら聞き込みは終わっているみたいだな」
 甚五郎は去って行く不審者を急いで追いかけるような事はしなかった。近くに聞き込みをしたと思われるフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)達がいたから。
 甚五郎とホリイは不審者について訊ねるためフレンディス達と接触を試みた。