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リアクション
第一章 パラミタ防衛・平行世界の人々と共闘
同化現象によって平行世界が歪に出現したり魔物が溢れ続け天変地異があちこちで起き、パラミタ全土を災厄の渦に巻き込んでいた。
空。
「本当にどうかしてるわ。人一人を元に戻すのにこんな事になるなんて……」
呆れるリネン・エルフト(りねん・えるふと)は事情を知るなりヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)が団長を自分が副団長をする『シャーウッドの森』空賊団を率いてタシガン空峡〜ツァンダの街の防衛をしていた。
「リネン、さっき情報が入ったわよ。メイド服を着たリネンをツァンダの街で見掛けたと」
飛竜“デファイアント”に跨るヘリワードは『シャーウッドの森』空賊団員からもたらされた情報をリネンに報告。
「……私を!? おそらく平行世界の私ね。まずいわ、彼女に戦う力は無いはず。急がないと」
情報を聞いた途端、リネンは表情を変え、ペガサス“ネーベルグランツ”を駆って目撃場所に直行。
「えぇ」
ヘリワードも飛竜“デファイアント”を駆ってリネンに続いた。
ツァンダの街。
「……お姉ちゃん、どこに行ったんだろ。さっきまでお姉ちゃんと一緒に避難していたはずなのに」
リネン・ロスヴァイセは困り果てた様子で周囲を見回していた。なぜならこの騒ぎの中自分を護衛しながら避難場所へ導いてくれたお姉ちゃんことフリューネ・ロスヴァイセが消えていたからだ。こちらではフリューネはリネンの恋人だが彼女にとっては自分を助け引き取ってくれた姉のような存在なのだ。
「……とにかくどこかに」
リネン・ロスヴァイセはとりあえずどこかに避難しようと巡らす視線を前方に向けた。
途端、
「!!」
顔色が真っ青に。その眼前には二足歩行の凶暴な魔物が立ち塞がり、行く手を遮っていた。
「……ど、どうしよう」
冒険経験無しの唯のメイドであるため身体は震え、足がすくんで動かない。
そして、眼前に迫った魔物は小さな獲物を引き裂こうと腕を振り上げる。
「お姉ちゃん!!」
リネン・ロスヴァイセは恐怖から悲痛な声で叫んだ。
降り下ろされる鋭い爪の餌食になるかと思いきや
「もう大丈夫よ」
空から見覚えのある女性が現れるなりあっという間に剣で魔物を片付けてしまった。
「……あ、あなたは」
救われたリネン・ロスヴァイセはリネンの姿に驚き、言葉が出ない。
「……そう私は」
リネンは笑みを浮かべ、正体を明かそうとした時、
「リネン、お喋りは後よ。どうやら囲まれたみたい。速攻で片付けるわよ!!」
ヘリワードの鋭い注意喚起。空と地上に敵の姿。お喋りは後回しだ。
「分かった。空は私が」
リネンは素速くペガサスに跨り、ヘリワードが率いてきた空賊団 親衛天馬騎兵と共に飛行系の魔物の相手をする。
「地上はあたしが担当と」
『優れた指揮官』を有するヘリワードは『シャーウッドの森』空賊団員を指揮し、『歴戦の武術』持つヘリワード自身も片っ端から片付けていった。
「……あれは」
リネン・ロスヴァイセは『コークスクリュー・ピアース』で蹴散らすリネンの戦いぶりを食い入るように見守っていた。見覚えでもあるかのように。
とにもかくにも何とか敵を退ける事が出来、
「怪我は無いわね?」
リネンは地上に舞い降りリネン・ロスヴァイセの無事を確認する。
「えぇ、無いわ。あなたは私よね?」
リネン・ロスヴァイセはうなずいて答えた後、リネンの姿を驚きを含みつつまじまじと見つめる。
「そうよ、リネン・ロスヴァイセ。ただ姓は残念だけどエルフトよ」
リネンは軽い笑みを口元に浮かべながら答えた。よく考えればおかしな話。自分が自分を助けるとは。
「……やっぱり(お姉ちゃんと同じお揃いの服に技……この人……この世界の私は)」
リネン・ロスヴァイセはフリューネと同じ衣装と技からフリューネとの関係にも見当が付いた模様。
「で、あたしはヘリワード・ザ・ウェイクよ。よろしく。もしかしてそちらにもあたしがいたりするのかしら?」
続いてヘリワードが自己紹介と興味を含む質問を投げかけた。
「いるわ。お姉ちゃんの仲間で良いライバルみたいな感じよ」
リネン・ロスヴァイセは笑顔で答えた。こちらとは違い全く明るい普通の女の子だ。
「……そう、あのフリューネがねぇ(リネンと契約していないから向こうでは空賊団を作らずフリューネの仲間という事なのね)」
フリューネやリネン達の成長を見守る立場であるヘリワードは思わず感慨深くなった。
「そちらにも騒ぎの事は通達されて避難するように言われているはずだけど」
リネンは気になった事を訊ねた。向こうにも手紙が届いたのなら避難勧告は出ているはずなので。
「通達を受けてお姉ちゃんの護衛で避難していたんだけど、気付いたらここに迷い込んでいて……お姉ちゃん、心配しているかもしれない。それとも私と同じように……」
リネン・ロスヴァイセはこちらに迷い込む少し前の事を思い出し、悲しそうに顔をうつむかせた。心配なのははぐれたお姉ちゃんの事。
「大丈夫よ。どちらであってもフリューネは心配無いわ。そうでしょ?」
フリューネを知るリネンはリネン・ロスヴァイセの肩に手を置き、励ました。
「当然よ」
リネン・ロスヴァイセはリネンの方に振り返り、力強く言った。
その時、
「!!」
三人の足元が激しく揺れた。
すぐに揺れは収まるも
「地震ね。そう言えば、天変地異も起こると言っていたわね」
ヘリワードは警戒は解かずに魔物以外に危惧すべき事を口にした。
そして、
「リネン・ロスヴァイセ、こちらにいる間は私達が守るわ」
「向こうの事はともかく、こっちじゃあたしたちが此処の守護者だから何も心配はいらないわ」
リネンとヘリワードは改めてリネン・ロスヴァイセに守る事を約束。
「ありがとう。でも不思議な感じね。自分が自分に助けて貰うなんて」
リネン・ロスヴァイセはクスリと笑みをこぼした。大変な状況ではあるが自分というこれ以上になく頼りになる人が護衛のため恐怖は少し引っ込んでいた。
「……そうね。とりあえず、この子、ネーベルグランツに(彼女は平行世界とはいえ私だからきっとネーベルも乗せてくれるはず)」
リネンは愛馬に跨ってからリネン・ロスヴァイセに後ろに乗るように促した。実は、愛馬はワイルドペガサス変異種の中では比較的おとなしいが、名付け親であるリネン以外には背を許さない頑固な性格なのだ。
「……おとなしい子ね」
リネンに手伝って貰いながらリネン・ロスヴァイセは何とかネーベルグランツの背に乗る事が出来た。
「やはり、リネンはリネンね」
ヘリワードはリネン・ロスヴァイセに背を許しているネーベルグランツの様子を見て笑みを口元に浮かべてからデファイアントに跨った。
リネンとヘリワードは空から狙う魔物群れを突っ切って空へ飛び立った。
そして、騒ぎが終わるまで奮闘し続けた。
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