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正体不明の魔術師と同化現象

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正体不明の魔術師と同化現象

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第四章 遺跡・魔法凍結装置の破壊


 イルミンスール、魔法中毒者の遺跡前。

「あたしらは先駆けで侵入し、凍結装置を破壊するわよ」
「その方がよさそうね。あの魔物やそれ以外の相手をするのに魔法が使えないのは不便だものね」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は誰よりも先に侵入し、魔物討伐が楽になるようにと凍結装置破壊に向かう事にした。
 その時、
「……魔法中毒者の遺跡とはここかな?」
 二人の背後から青年の訊ねる声。
「えぇ、ここよ……って、どうしてここに!?」
 振り向き、答えたセレンフィリティは相手の顔を見て驚愕。
 立っていたのは薔薇の学舎生のセレアナとその恋人である百合園女学院生徒のセレンフィリティだった。
「……どうやら平行世界の私達みたいね」
 セレンフィリティの驚きにセレアナも振り向き相手を確認。
「そうみたいだ」
 平行世界セレアナが冷静に返した。
「……通りで事情を聞いてここに来たのだけど」
 平行世界セレンフィリティは恐る恐る訊ねた。上映会で見た通りこちらとは真逆の性格で几帳面で繊細で物静かという大富豪のご令嬢である。
「つまり、あたし達に協力してくれるという事ね?」
 セレンフィリティは確認を入れる。
「……えぇ」
 平行世界セレンフィリティはじっとセレンフィリティを見ていたかと思いきや恥ずかしそうにうつむいた。
「どうかした? 何か顔についてる?」
 相手の反応に何かを感じたセレンフィリティは追求。
「……いえ、こちらの自分がそんな格好をしているとは思わなくて……」
 平行世界セレンフィリティは顔を上げ、理由を明かした。令嬢である彼女には公衆の面前でビキニ姿のセレンフィリティは困惑ものらしい。
「あぁ、この格好の事ね。美しい女にはね、余計な装飾は無用なのよ!」
 セレンフィリティは両腕を腰に当て、自信満々に言い放った。
「……そう……でも、あまりにも」
 平行世界セレンフィリティの困惑は解けず、一層深くなっていた。
「……大変だな」
 平行世界セレアナがセレアナに労いの言葉をかけた。
「もう、慣れたわ……」
 セレアナは溜息を吐きながら力無く答えた。ちなみに本日のセレアナは国軍制服を着用している。
「そうか。しかし、こちらの自分が女性だったとは」
「あぁ、そう言えば性別が違っていたわね」
 平行世界セレアナは改めてセレアナを見て感想を述べた。セレンフィリティの印象が強いが、こちらも驚くべき事ではある。
 出会いを楽しんだ所で
「人も増えた事だし、装置を破壊しに行くわよ! と、その前に二人に遺跡のデータを送らなきゃね」
 セレンフィリティが合図を出し行こうとしてふと思い出し、籠手型HC弐式Pを取り出した。
「えぇ、お願い」
 平行世界のセレンフィリティが籠手型HC弐式Pを取り出し、遺跡のデータを受け取った。
 それが終わるなり
「さっさと片っ端から片付けて行くわよ!」
 改めてセレンフィリティの合図で一行は魔法凍結装置破壊のため遺跡へ侵入した。

 遺跡内部。

 侵入してすぐ。
「さてとどこから行きましょうか」
 セレンフィリティは籠手型HC弐式Pとにらめっこをしながら皆にこの先の事を相談。
「あの空を飛んでいた魔物へ向かうルートはどうかしら」
 平行世界セレンフィリティが案を出した。
「討伐者が通る道というわけね。早速ルートを確認するわ」
 セレンフィリティは手早くルートの確認を始め、
「装置は恐らく敵にとって守りやすく、いざという場合には制御しやすいような場所に設置しているはずね。まずはこの場所から」
「えぇ」
 平行世界セレンフィリティも同じくデータを確認しうなずいた。
 それから二人のセレンフィリティは『ディメンションサイト』で空間認識力を高めてから周囲の探索を始めた。
「探すのに骨が折れそうだな。あまり時間も掛けられないようだし」
「そうね。警戒もしないといけないわね」
 二人のセレアナは『殺気看破』で警戒をしつつ魔法凍結装置探索を始めた。
 しばらくして
「見付けたわ」
「……見つけた」
 セレンフィリティと平行世界セレアナが発見し、セレンフィリティは衝撃波『ショックウェーブ』で平行世界セレアナは機晶爆弾で粉砕した。
「……発見場所を入力して他の侵入者に伝えて」
 平行世界セレンフィリティは粉砕を確認するなり手早く籠手型HC弐式Pを弄り、こまめに情報を更新した。
「……(こっちのセレンと違って几帳面ね)」
 セレアナはご令嬢を見て思わず胸中で溜息を洩らしていた。
 こちらのセレンフィリティというと
「さっさと次行くわよ、次!」
 次へと皆を促していた。
 セレンフィリティ一行は、次々と両セレンフィリティの『グラビティコントロール』での圧壊や衝撃波や両セレアナの機晶爆弾で魔法凍結装置を破壊していく。

 時には魔物に遭遇する事もあった。
「セレン、敵が近くにいるわ」
「こちらに来る」
 『殺気看破』を有するセレアナ達が敵の接近を告げた。セレンフィリティ達は装置探索を主にして動くためこちらは後方支援担当として守りを固めてしっかり警戒していたのだ。
「ここは取り壊し予定の遺跡、迷惑を気にする必要は無いわね」
「そうだけど、通行不能にはしないのよ」
 やる気十分のセレンフィリティとツッコミのセレアナ。
「……来るわね」
「あぁ、セレンの身はしっかりと守るから何も心配は無い」
 気を引き締める平行世界セレンフィリティと恋人を気に掛ける平行世界セレアナ。
 魔物は大量に来て戦闘が始まった。
「今よ!」
 セレンフィリティは相手が予想しずらい行動『メンタルアサルト』で隙を誘い、
「……任せて」
 『行動予測』で相手の動きを読んだ平行世界セレンフィリティが青のリターニングダガーを投げてとどめを刺す。
 時には『ポイントシフト』で高速に移動し背後をとり魔物を斬り付けたり。
 二人の援護であるセレアナ達は
「……次から次へと多いわね」
 『二丁拳銃』を有するセレアナは二丁のラビット・ショットの威力を高め、『スナイプ』でセレンフィリティの不意を狙う魔物の頭を撃ち抜き、援護する。
「助かったわ」
 礼を言いつつセレンフィリティは別の敵を斬り倒していく。
「……セレン!」
 『二丁拳銃』を有する平行世界セレアナは『陽動射撃』で平行世界セレアナに向かう敵の注意を逸らし、こちらに向かせ、二丁銃で一掃する。
「ありがとう」
 平行世界セレンフィリティは安堵の笑みを浮かべ礼を言うなり戦闘に戻った。
 何とか無事に戦闘を終え、一行は装置を破壊し次に向かった。
 途中、討伐の者に出会ったり、他の装置破壊組と情報のやり取りをしたりしたが、任務は魔術師回収を考え現場だけを残して無事に完了し討伐終了後の現場で皆と合流した。