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リアクション
遺跡内部。
装置破壊組から受け取ったデータを元に進むも
「……北都の言う通り、酷い事になってやがるな」
魔物の攻撃により崩れ足場が不安定になっていたり行き止まりになっていたりと酷い事になっていた。
「遠回りになりそうだ(彼の体調が保てばいいけど)」
北都は思いの外手間取る状態に息を吐いた。心配は撮影者の衰弱だ。辿り着く前に落命する展開は避けなければならない。
とはいえ、言葉通り遠回りをするしか道はなかった。
進路変更後。
「装置破壊かな」
「みたいだな。とりあえず、声をかけてみるか」
北都と白銀は辿り着いた場所に先客がいて何やら作業をしている事に気付いた。
「おい、装置の破壊をしているのか?」
白銀が代表して先客達に訊ねた。
どうやら作業は終了していたらしく
「……あぁ、そうだ。そっちは撮影者の護衛か」
「マスター、ようやく合流出来ましたね」
ベルクが北都達に声をかけフレンディスは撮影者を発見するなり喜んだ。本来は装置破壊ではなく撮影者護衛を主な目的で来たので。
「あぁ。これで聞きたい事も聞ける」
ベルクはうなずき、顔がはっきり見えないその人物を見やった。
「随分、弱ってるな。大丈夫か? 犬、そのでっかい犬に乗せてやれば? 犬はその姿だから歩け」
ジブリールは撮影者の様子から弱っている事を察し、からかいたっぷりにビグの助に乗るポチの助に言った。
「下等生物を乗せる余裕は無いのですよ。生意気ターバンが回復でもするがいいです」
ポチの助はむぅとし、噛み付くように反論するなり端末機を弄り、装置解除の情報を入力していた。
「面白いな……魔法も使えるし」
ジブリールは反論されても何のその、むしろ面白がっている。とにかくジブリールは『ナーシング』で撮影者の衰弱を緩和した。
その間、
「それで俺達も護衛に加わりたいんだが」
ベルクは元々来た目的を果たすために護衛参加の承諾を得ようと訊ねた。
「いいぜ。護衛は人手が多い方が対応しやすいからな」
白銀はあっさり許可をした。
そのため、ここから六人での盤石な護衛となった。
道々。
「結局、事件の真相はどうなんだ? 一つが二つに別れて元に戻るために救援信号で事件を起こしていたとは手紙で知ったが、真相や特殊な平行世界、名も無き旅団の手記について間違い無いのか。それだけでなくその一番最初は何なんだ?」
ベルクは早速撮影者に訊ねる。これまで幾度となく関わった騒ぎの真相と最初を知りたくて。
「……それは……何もかも手紙の通り……最初についても……手紙に」
撮影者は衰弱による疲れを見せながら言った。
「最初については聞いていないんだよね。受け取った二人が口外しないと決めたらしく僕達には知らされていないんだよ」
「オレ達の知り合いの可能性が高いとかでな」
北都と白銀が自分達が知らない理由を相手に伝えた。
「……あぁ」
撮影者は納得したようにうなずいた。
「おじいさんが家族を失った悲しみで生み出したと聞きました」
フレンディスが妖怪の宿でエリザベート達から聞いた事を話した。
「……ずっと話は聞いていた……眠りと一緒に水槽で……あの人の姿を見たのは……目覚めたあの時だけだった」
撮影者は途切れ気味に答えつつ思い出していた眠りの中で聞いた悲しみと喜びの思い出話と最初で最後の生みの親との対面を。
「……あの時とはお前が完全に生まれた時か」
ベルクの確認に撮影者はうなずき、
「……あの人が指揮を執った魔法実験で……無茶な事をして……でも下の兄弟の制止も聞かず……」
手紙に詳細が書かれながらも明らかにされなかった事実の一つを話し始めた。
「無茶のまま実行したのか?」
白銀の問いかけにこれまた撮影者はうなずく。
「……それで魔法実験は暴走……あの人を庇って亡くなった……」
撮影者は心地の良いまどろみの中聞いた悲しい話を語る。
「それでお前を生み出したのか」
ベルクのこの言葉にうなずき、
「……亡くした日から……若い時から老いの時にかけて……長く研究して……後悔と寂しさで……生み出そうとしていた。その間ずっと思い出を語っていた」
語りは続く。
「ところであんたには名前はあるのか? 無いと不便だろ」
ジブリールは至極基本的な事を訊ねた。よく考えると真っ先にするべき質問でもある。
「……名前を貰う前に……脱出したから無い……訊ねられたら……ロズと言っている。ただ」
撮影者はようやく名前を名乗るも歯切れが悪い。淡々とした中に疲れが滲み出るのは変わりないが。
「ただ?」
「……あの人が付けようとしていた名前は別の物だったと思う」
先を促すジブリールに撮影者は推測止まりの事を話し始める。
「亡くした家族の名前か」
白銀に言い当てられた撮影者はこくりとうなずいた。
「そう思うならどうしてその名前を名乗らないんだ?」
ジブリールの当たり前の質問に
「……その名前や存在を必要とするあの人はいない……もう必要が無いから」
撮影者は手紙には載っていない自身の心情からの理由を明らかにした。
「とても大切な家族だったんですね」
フレンディスが撮影者の事を思い少々悲しそうな顔で言った。
「……そうだと思う……どこの平行世界でもそうだった」
失ったものを探して数多の平行世界を歩き回ったこれまでの事を思い出していた。時折見る様々な年齢、性別の生みの親と故人となった家族の仲の良い姿を。
「……(前と今聞いた話を合わせると……)」
「……(僕達の知り合いである可能性に……暴走した実験……姿がはっきりと見えないけど)」
ベルクと北都はこれまでに集まった情報から何と無しに見えてくるものがあった。口にはしないが。
「他の平行世界にもいたんですか!」
天然のフレンディスは思考するベルク達とは裏腹に素直にびっくりしていた。
とにもかくにも北都達とフレンディス達はこのまま撮影者を護衛しながらグリフォン退治の現場へ向かった。
途中、グリフォン討伐完了の情報が討伐者の一人からポチの助にもたらされた。