|
|
リアクション
イルミンスール、魔法中毒者の遺跡前。
「まさか魔物に飲み込まれてしまったとは」
「面倒な事になったですぅ」
アーデルハイトとエリザベートは遺跡を見上げながら心配を洩らした。現在、討伐者達が派手に戦闘中。
そこへ
「心配無いよ、二人共! だって、頼りになる人達が行っているんだから」
「そうそう、あっという間に解決だよ!」
エリザベートを気遣うルカルカ・ルー(るかるか・るー)の元気な声が二つ。
「ほえ?」
先に声をかけたルカルカは不思議に思いそろりと声がした方向に振り返り、馴染み有り過ぎる金髪の女性と顔を合わす形になる。そう自分の顔と。
「……」
互いに顔を見合わす二人のルカルカ。
数秒後、
「あははは」
互いに声を出して笑い合った。
「……かしましいのが増えたか」
ルカルカ達の様子を見ていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は呆れが匂う一言を洩らしていた。両方とも同じテンションで違いはないので。
「そうじゃな」
アーデルハイトもダリルと同じく少し呆れを含んだ笑みを浮かべていた。
そんな事はつゆ知らず、二人のルカルカは出会いを楽しむ。
「こっちに来てくれたのはありがたいよ。でもどうして遺跡に?」
「だって、こっちのエリーが遺跡にいるって道で知って助けなきゃって」
ルカルカの疑問に平行世界ルカルカは即答。世界は違えどエリザベートを気に掛けるのは同じらしい。
「というか、こっちの世界にもダリルがいるんだ……ダリル、早く! こっちのダリルもいるよー!」
平行世界ルカルカは自分達を見守るダリルを一瞥した後、手を振って後から来る平行世界のダリルを急かした。
「ダリルもいるの。へぇー」
ルカルカは興味津々でこちらに来る平行世界ダリルをガン見。
「……いるのか」
ダリルは予想通りのためか驚きはなくやって来るもう一人の自分を静かに待っていた。
そして、運命的な出会いを果たす。
「……おかしな者が来ると思ったが外見に変わりはないな」
「……あぁ、中身は分からないがな」
ダリル達の対面はルカルカ達のハイテンションとは打って変わって静か。ちなみに先に話しかけたのはこちらのダリル。
「……もうそろそろ終わるかもしれぬな」
アーデルハイトは空を見て状況が収束しつつある事を読む。
「だったら、行くですよ〜。最後まで見る必要があるですぅ」
「そうは言うが、遺跡内では魔法は使えぬぞ。装置破壊に向かった者達がおるが、全ては破壊出来てはおらぬはず。おまえの気持ちは分かるがの。世界は違えどじゃから」
行きたがるエリザベートにアーデルハイトは留まらせようとする。
そんな二人のやり取りを見るなり
「なぁに? 遺跡に行くならルカ達が全力で護衛するよ!」
「魔法が使えなくともルカ達がいれば心配無いよ!」
ルカルカと平行世界ルカルカが会話に加わる。
「……世界は違えど、か(もしかして開示していない手紙の内容に関わる事か……とはいえ、この状況で追求するのは無理だろうな。撮影者の護衛が何か掴んでいるといいが)」
ダリルはアーデルハイトの最後の言葉に引っかかり、撮影者が送った手紙に答えがあると考える。なぜなら、妖怪の宿にて撮影者からの手紙の中身は開示されたが全てではなかったからだ。
「お願いするですぅ」
エリザベートは早速、護衛を任せるのだった。
「じゃ、いっこか」
ルカルカ達はそう言うなりエリザベート達を伴い遺跡へ。
遺跡内部。
途中、魔法が使用出来る所はあれど、出来ない所も有り、警戒は怠れ無い状況であった。当然、魔物にも遭遇する事に。
「ここは魔法が使えないから二人はルカ達が守るよ!」
平行世界ルカルカが『【常闇の帳】地球人用』で周囲に数秒間漆黒の闇を漂わせ、攻撃を吸収する。
吸収し切れない強力なものは
「ルカに任せて!」
ルカルカが腰部に装着した3−D−Eを使い、張り巡らせたワイヤーと『ポイントシフト』の瞬間移動で縦横無尽に魔物の相手をして葬り去っていく。
「ルカも手伝うよ!」
闇が消え去った後、ロイヤルドラゴンにエリザベート達の守護を頼み、平行世界ルカルカもルカルカと同じく軽やかに戦う。阿吽の呼吸の動きは舞っているかのよう。
一方、ダリル達。
「……(あっちの俺の光条兵器は大型剣か)」
ダリルは二丁銃終焉のアイオーンで次々と魔物を射貫きながら『光条兵器』である大型の剣で魔物を倒しまくる平行世界の自分を観察していた。
そんな時、
「お前、光条兵器部分にトラブルでも抱えてるのか?」
平行世界ダリルが訊ねてきた。
「……別段故障はしていないが、それがどうした?」
ダリルは魔物の急所を射貫きながら聞き返した。
「いや、主を前面に出してるからてっきり」
平行世界ダリルはダブルルカルカを一瞥してから質問理由を口にした。実は何も違いが無いと思われたダリル達にも違いがあった。平行世界ではこちらとは逆転しておりルカルカが後衛でダリルが前衛だったのだ。
「……ルカは主じゃない」
ダリルはむっとしながら答えるも作業を続けている。
「自分がどういう物か自覚しろ。それがお前の為だ」
平行世界ダリルはそう言いつつ敵を一刀両断。外見はともかく中身、考え方は違っていた。平行世界は自分をよくわきまえていた。
「……(分かってるさ。そんなことは……)」
ダリルは黙した。言われなくともルカルカが自分の封印を解いた特別な存在である事くらいよく分かっている。その事実から平行世界ダリルはルカルカを主と認識しているのだろう。こちらのダリルもだからこそこうしてルカルカを自ら望んで手助けをしているのだ。
この後、ルカルカ達はグリフォンを討伐し終えた現場に辿り着いた。
そして、統合した撮影者が分離現象を発生させ風景が元に戻り後は住人だけとなった時、ルカルカは平行世界の自分達を含む四人で記念写真を撮った。
写真撮影終了後、
「またね♪」
ルカルカは同時に別れの言葉を交わし、
「健闘を……」
ダリル達は握手を交わし
そして、別れを迎えた。