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正体不明の魔術師と同化現象

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正体不明の魔術師と同化現象

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 魔法中毒者の遺跡前。

 魔法凍結装置破壊組といくつかのグリフォン討伐組が遺跡に侵入した後。
「……これで例の魔術師の騒ぎは終わりという事か。しかし……」
 ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)が真に気に掛けているのは騒ぎの事ではなく、遺跡に設置されている装置が起動した事。
「遺跡内部は装置起動で魔法が使えないか(今の俺には痛いな。だが、ウルディカとアウレウスがいる。問題無い)」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)も装置起動は気掛かりだが、頼りになる仲間がいるのでそれほど気にはならない。
「そうだ。本当に行くつもりか、エンドロア(魔法が使えなくなるだけならいいが、魔力そのものが無効化されては、今使用している外部機能だけではエンドロアの生命維持が難しくなる)」
 ウルディカばかりが頭を抱えるばかり。答えは分かっているが念のために訊ねる。
「あぁ、行く。魔法が使えないくらい何でも無い。それに魔法凍結装置の破壊に向かっている者もいると聞く」
 グラキエスはウルディカの予想通りの返答をする。
「確かにいるとは言っていたが……」
 ウルディカは少々疲れの見える溜息を吐く。出来るならば関わって欲しくないというのが本心だろう。
 その時、
「主、我らの相手が見えますぞ」
 アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)がグリフォンが空を旋回し、遺跡に向けて炎を吐き出し攻撃する空を示した。
「あぁ、遺跡の天井を壊して空から、か」
 グラキエスは示された空を見上げ、大変な状況だと実感。
「……空か。ならば」
 空で多くの小型魔物を従え暴れるグリフォンを見やりある打開策を思いつくウルディカ。
「ウルディカ?」
 察したグラキエスが訊ねる。
「相手が空にいるのならば、飛行能力がある俺達はわざわざ遺跡に入る必要はない(余計な事態が起きる前に早々に魔術師を奪取し、事態を収めなければならないのは変わりないが)」
 ウルディカが閃いた打開策を明らかにした。だからといって危惧する気持ちは拭えない。なぜならグラキエスの体調は完全に健康という訳では無いからだ。何かの拍子で悪くなる事も無いとは言えない。
「確かに。ここから行けばすぐだな。スティリアとガディを好きに暴れさせるにも丁度いいはずだ。ただ、遺跡が取り壊されるのは少々勿体無いが」
 グラキエスは見やった。自分が連れて来た水雷龍ハイドロルクスブレードドラゴンのスティリアとアウレウスが連れて来た聖邪龍ケイオスブレードドラゴンのガディを。一見二龍は大人しく見えるが奥底には凶暴性を秘めている。それが今役に立つ時。
「俺は周辺の魔物を掃討する。言う必要は無いとは思うが、警戒は怠るな」
 ウルディカは念のためと注意を入れる。すっかり兄貴的な立場である。
 真っ先に反応したのは言われているグラキエス本人ではなく、
「ウルディカよ、それは杞憂だ。主の身は我が守る故」
 グラキエス至上主義のアウレウスであった。
「あぁ、頼りにしている。アウレウス、ウルディカ」
 グラキエスは軽く笑みを浮かべた。
「……あぁ」
 ウルディカはそう言うしかなかった。そもそも頼りにされなくとも守るだろうが。
「アウレウス、行こう!」
「主に頼りにされ、主と共に飛べるとは身に余る光栄、至上の幸福!」
 グラキエスとアウレウスはすぐさまスティリアとガディに騎乗し、空へ。アウレウスは主と共闘出来ると嬉しそうであった。
「……行くか」
 ウルディカは幻龍比翼で空へ行った。
 そして、三人は他の討伐者達に遭遇した。

 魔法中毒者の遺跡前。

「魔術師を救出に遺跡へ、か。さっさとこの乱痴気騒ぎを終わらせねぇとな」
「そうですわね。ようやく、終わるのですのね」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)はこれから侵入する遺跡を見上げていた。幾度も関わった魔術師の騒ぎに本当の終止符を打つ事が出来る今回、抜かるわけにはいかない。
 そんなシリアスな二人に接近する二つの影があった。

「……はぁ、判子押し係の次は平行世界の異常事態の収拾か。ミルザムの頼みだから断れねぇし」
 こちらの東京知事とシリウスの立場や種族、経歴が反転した平行世界に生きるシリウス・ツァンダが歩いていた。流されるまま来たためか卑屈で愚痴っぽい性格になったようだ。ちなみにこちらの東京知事は平行世界では自由な踊り子ミルザム・バイナリスタである。
「元気を出して頑張りましょう……あっ、あれは」
 ミルザム・バイナリスタの契約者であるリーブラは励まそうとしていたが、前方に見覚えがありすぎる人物を発見した。
「……ん、あれはオレ」
「ですわね。共闘を頼んでみましょう」
 シリウス・ツァンダとリーブラはもう一人の自分達の所に向かった。
 そして、互いに対面を果たす。

 対面後。
「あなたがあの平行世界のわたくし、本当に全く同じですわね(なんだか不思議な気分ですわね。ティセラお姉さまも最初、こんな気分だったんでしょうか?)」
 リーブラは平行世界の自分を不思議な面持ちで見つつ自分と瓜二つのもう一人の人物を頭に浮かべていた。
「そっくりですわ。ですが、やることは一つですわ。わたくし達はそれをするために来ましたもの。あなたもそのつもりでこの遺跡の前にいるのでしょう」
 平行世界リーブラもそっくり具合に驚くもすぐに本題に戻す。再会をたっぷりと楽しむ時間など今は無い。
「えぇ、その通りですわ」
 リーブラは真剣な顔でうなずいた。
「……区別がつかねぇな」
 二人のリーブラを見たシリウスは苦笑を浮かべながら感想を洩らした。
 リーブラ達からシリウス・ツァンダに視線を向け
「おいおい、戦闘前というのに何ふぬけた顔をしているんだ。わざわざ助けに来てくれたんだろうが、こっちの世界の女王候補はそんな顔は……」
 シリウスは、芯の無さが悪い方向に導いた有様に呆れた。こちらの女王候補とはミルザムの事である。
「……そんな顔というけどよ、ふぬけた顔にもなるさ。ミルザムは自由でそれに比べて自分は御飾りで流されてばっかで女王にもなれなくて挙げ句に地球に島流しされた上に何か平行世界にいるし……どう考えても陽気になれねぇだろ」
 シリウス・ツァンダはミルザムと比較されむっとした顔で愚痴をダラダラと並べた。
「……(もしかしてアイツも隠しているだけで本当はこいつのように辛いのか)」
 愚痴を聞いたシリウスは口を閉じて思考。こちらの東京知事ももしかしたら悩んでいるのかもしれないと。ただ口に出さないだけで。
 そして、
「……ごめん。酷い言い方をして悪かった。訂正する。お前の力が必要だ。頼む、力を貸してくれ! シリウス・ツァンダ」
 シリウスは無神経な発言をした事を謝り、改めて協力を頼んだ。
「……あぁ、分かってる。そもそもそのために来たんだからな。それに頼まれたからにはやらない訳にはいかねぇし」
 シリウス・ツァンダはふぬけた顔を引き締め、戦闘への覚悟を決めた。
 四人はすぐさま遺跡に侵入しグリフォンを目指して進んだ。

 遺跡内部、魔法凍結装置組が装置を破壊した場所。

「ありがたいな。ここなら魔法が使える。しかもあいつの攻撃で天井が崩れている。行くぞ!」
「あぁ、あの魔物を倒しにな」
 シリウスとシリウス・ツァンダは『変身!』で『魔法少女シリウス・ストライクC』に変身し、それに呼応して妖精鳴弦ライラプスは太刀形状に変化。シリウスは強化光翼で守護天使で強力なディーヴァであるシリウス・ツァンダは自身の力で空中戦へと参加する。
「わたくし達は飛べませんので現場に向かい、そこから援護をしますわ」
「ここからそう遠くはありませんから。すぐに参加しますわ」
 飛行能力がないリーブラ達は他の討伐者がいると思われる現場に赴き、グリフォンの高度が落ちた所を狙い攻撃を仕掛ける事にした。当然、シリウス達の足元であるこの地上を気に掛けながら。