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正体不明の魔術師と同化現象

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正体不明の魔術師と同化現象

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 イルミンスールの街。

「エリザベートよ、退いた方がよい。魔物は減らぬ上に疲労はそうとうのはずじゃ」
 微笑みの魔女アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)は子供校長エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の背後を補佐をしつつ、減らぬ魔物に増えるこちらの疲れから一時撤退を口にした。こちらに来てから休む間もなく戦闘を続けている。
「大ババ様は補佐を続けるですぅ」
 子供校長エリザベートは掛けられる心配を受け流し、魔法で戦い続ける。
「いくらおまえでも(もう少し子供の部分があれば上手く撤退に持ち込めたのじゃが)」
 微笑みの魔女アーデルハイトは補佐を続けながら立派な子供校長に溜息を吐いていた。いくら類い希な魔法の使い手とは言えエリザベートは子供。疲れ切りすでに限界は来ているはずなのに無理をし校長として奮闘しているのは明らか。
 とうとう
「!!」
 無理が祟った子供校長エリザベートは捌ききれず、鋭い攻撃が彼女を襲う。
 しかし、
「……これは」
 魔物の攻撃は子供校長エリザベートを傷付ける事は無かった。代わりに目の前に氷の壁が現れていた。
 それに続いて
「エリザベート校長!」
 歌菜の呼ぶ声。
「……(間に合ったか)」
 胸を撫で下ろす羽純。子供校長エリザベートを守ったのは羽純の『アブソリュート・ゼロ』だった。
「助かったぞ。わしらは平行世界の者じゃ」
「……ありがとうですぅ」
 二人は救援に感謝。
「いえ、ここは私達の世界、守るのは当然の事」
 歌菜は当然と返答。必死になるべきはこちらの住人である自分の方。
「ふむ、エリザベートよ。ここはこの四人に任せて少々休んではどうじゃ」
 好機と思った微笑みの魔女アーデルハイトは再度休憩を願うも
「……大ババ様、私はイルミンスール魔法学校の校長ですぅ」
 エリザベートは校長としての誇りにかけ、聞き入れない。
 その時、
「それなら」
 陽一が現れエリザベートに愛の結晶を使い癒した。
「……身体が楽になるですぅ。ありがとうですぅ」
 子供校長エリザベートは軽くなる体に喜んだ。
「……また来おったぞ」
 微笑みの魔女アーデルハイトは地上と空から湧き出てこちらに攻めてくる魔物を示した。
「二人はここで……護衛はそっちに任せるよ」
 平行世界陽一は漆黒の翼で空へ飛び、巨大光剣ソード・オブ・リコで片っ端から斬り付けて侵攻を止め、地上の陽一は光剣の『ブレイドガード』で広範囲の攻撃からエリザベート達を守る。

 一方、歌菜達。

「これは世紀のオンステージの開催ですね♪」
「そうだな。滅多にないステージだ」
 アイドルである二人の歌菜は互いに目配せをするなり口を開き、歌を紡ぐ。
「♪♪(自分とデュエットって不思議なカンジ)」
「♪♪(まさか自分と歌う事になるとは)」
 『エクスプレス・ザ・ワールド』で歌を無数の槍に変えて周囲の魔物を薙ぎ払った。
 そんなアイドル達を守るために
「平行世界の俺、しっかり付いて来いよ」
「えぇ」
 羽純達は『ショックウェーブ』による衝撃波で歌う歌菜達の守護に勤しんだ。

「……まだまだいるな。どこから出て来るのやら」
 男歌菜はうんざり気味に新たに現れる魔物をにらんだ。
「さぁ、どんどん行きますよ!」
 歌菜は笑顔で歌のスタンバイ。
「あぁ、そうだな。めげるにはまだ早かったな」
 男歌菜は軽く笑みを浮かべるなり準備に入った。
 そして、二人は歌う。
「♪♪(不謹慎かもしれないけど……とても楽しい)」
「♪♪(こういうのも悪くないな)」
 自分とのデュエットを楽しむ心から生み出された歌は『ハーモニックレイン』で雨となり魔物の頭上に降り注ぎ攻撃。
 それに混じって
「歌に合わせて剣の雨を叩き込むぞ」
「ちょっとした演出ね」
 歌菜達の歌に合わせ、『【剣の舞】剣の花嫁用』で剣の雨を降らせステージを盛り上げた。
 華やかなステージによって魔物達が弱ったところで
「行くよ!」
「行くぞ!」
 ダブル歌菜のかけ声を合図に
「あぁ、俺達も」
「えぇ」
 ダブル羽純が加わり四人による連帯技、息の合った乱撃『薔薇一閃』で魔物を殲滅した。
 それからも次々と音を得た言葉は攻撃に姿を変えて無礼な観衆を粛正していくのだった。
 この後、数え切れないほど夢のようなステージをこなした末、世界はすっかり歌菜達の見覚えのある姿に戻っていた。
 それは皆に騒ぎが解決して分離現象が行われている事を告げるものであった。世界の次は人であると。
 歌菜達は別れの時を迎えるのだった。
「ありがとう。あと、貴方は凄く男前でセクシーだけど、私も負けません!」
「そっちは女の子なのに凄く逞しくてこっちも負けてられないな!」
 二人の歌菜は握手をし、言葉を交わした。
「羽純くんと、何時までも幸せに」
 歌菜は握手の手を離す前に彼らの幸せを願ってから離した。
「あぁ、そっちもな」
 男歌菜は笑顔を浮かべ同じように幸せを願った。

「これからも振り回されるだろうが……まぁ、お互い、楽しんで行こう」
「そうね。気苦労は尽きないけど、幸せの証拠だものね(しかし、同族嫌悪って奴かしら……何だか気障なのよね。けど共感が凄く出来るのは自分だからかしら)」
 二人の羽純は握手をして歌菜に振り回される未来を労っていた。ただ女羽純はじっと羽純を見つめながら少々考え事をしていたが。
「何時までも、歌菜と仲良くな。心配ないと思うが」
 羽純は握手の手を離す前に彼女達の幸せを願ってから離した。
「そちらもね。まぁ、言う必要は無いでしょうけど」
 女羽純は軽く苦笑を浮かべながらも同じように幸せを願った。
 こうして歌菜達は無事に平行世界の自分達と別れの言葉を交わす事が出来た。