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とあるイベントスペースでの最終舞台

――とあるショッピングモールの一角にあるスペース。そこはイベント等が行われる際に使われる場所で、この日は四角いプロレスリングが設置されていた。
 周囲はまだ誰も集まっておらず、リングの周りに設営の為の人数が数名いるだけである。
 そしてリング上では、天野 翼が走っていた。四方に走り、ロープに体を預け張り具合を確かめると、反動を利用し飛び上がり、受け身を取る。
「んー……大丈夫みたいですね。問題なく使えると思います」
 翼がリング下の佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)に言う。
「そうですか、良かったですぅ」
「ええ……しかしまぁ、本物と大差ないですねこれ。キットで作ったとは思えませんよ」 
 降りてきた翼がリングを眺めて呟く。このリングはルーシェリアが持っていた【特設リング作成キット】によって作成された物である。
 キットで作成されたと言え、試合をするには十分の代物であった。
「流石レティゴスローリ製ですぅ」とルーシェリアもリングを眺めて呟いた。ここまで完成するのに、総合でいくらになるのだろうか考えてはいけない。
「これだけあれば場所も場所だし、ファイヤーリングとかできたかもしれないんですけどねー……うちがもうちょっと人数貸し出せたら良かったんですが……」
 少し残念そうに翼が呟く。
「それは仕方ないですよぉ。けど忙しい時に申し訳ないですぅ」
 ルーシェリアが翼に言う。今回このショッピングモールのスペースを利用し特別興行を企画していたのだが、肝心の現在プロレスリングHCは倒産しており、所属していた選手達を始めスタッフは後処理の為駆けずり回っていた。その中で偶々翼だけが今回参加する事が出来たのである。
 企画に穴を開けるわけにはいかない、と参加を了承したが、リングこそ用意できるものの、選手の数は圧倒的に少ない。
「お母さん、悠里は準備できたよ!」
 佐野 悠里(さの・ゆうり)が過去にリングに上がったコスチュームを纏い現れた。
「あらぁ悠里ちゃん、良く似合ってますぅ。それじゃ私も準備しませんとねぇ」
 そう言ってルーシェリアは自分のコスチュームが入った袋を手に取り、着替えに行く。彼女にも選手として参加してもらうのだ。
――現在の状態で普通の興行を行うのは不可能、ということで方向性を変え、一般人にも興味を持ってもらおうとイベント色の強い物にしようという事になったのである。
 まず悠里は小さい子にも興味を持ってもらえるように、という為に参加。スパーリング形式で翼と戦うのである。
 悠里が動き回る姿を見て、興味を持ってもらえたならば実際にリングの上を体験してもらおうというのだ。
 そしてルーシェリアにはエキシビジョンではあるが、実際に試合を見てもらう為に参加してもらう。契約者とはいえ流石に幼い悠里相手では技の掛け合いは絵面的にも問題がある。
 試合数は少ないが、そこはイベントと割り切った。
「さて、私も準備しないとな。これが最後のリングになるだろうし」
 軽く身体の筋を伸ばす様に捻りつつ翼が呟く。
「最後のリング? どういうことですか?」
 その呟きを聞いた悠里が問うと、翼が少し悩む仕草を見せてから口を開く。
「あー……別に引退するってわけじゃないんだけど、実は団体のみんなと一緒に地球へ戻ろうっていう事になっててね。恥ずかしい話だけど倒産しちゃったし、これから興行とか難しいからねー……」
 そう言って翼が苦笑する。団体の人間全員で地球へ戻るとなると、興行が開催できない現状でこれが彼女にとってパラミタでの最後のリングとなる可能性が高い。
「あの、このイベントが最後の試合って、いいんですか翼さんは?」
 悠里がちらりとリングを見て呟く。正式なリングではなくキットで作成した物で、ショッピングモールのイベントスペース。観客も通りすがりの一般客を狙っている為そもそも集まるかどうかもわからない。御世辞にも最後を飾る場所としては良いとは言えない。
「ん? 悪くないと思うよ。元々うちらもこういう感じだったしね、最初は」
 だが翼はあっけらかんと答えた。
「……わかりました」
 悠里は翼を見て理解した。その言葉に嘘はないし、強がっているようでもないという事に。
 そして自分がどうすべきかという事を。
「なら悠里も翼さんの最後のリング、恥ずかしい物にならないよう精一杯やらせてもらいますね」
「うん、期待してるよ」
 その言葉に、翼は笑みで返した。
「私も準備できましたよぉ」
 その時、準備を終えたルーシェリアが戻ってきた。

――このイベントがどういう結果に終わったのか、リングの上でどのような出来事があったのか。それはまた、別の話である。

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

【森水鷲葉】
ご参加いただきありがとうございました。
森水鷲葉(もりみずしゅうば)です。

改めまして、
『北関東プライベ 2014』にてお会いした皆様、
どうもありがとうございました!

当日は、普段お会いできない、
プレイヤーの皆様と交流でき、とても楽しかったです。

『蒼空のフロンティア』フィナーレに向け、
引き続き、何卒よろしくお願いいたします。

【革酎】
 運営さん、後は宜しくお願いします。(逃亡用の荷物をまとめつつ、革酎一礼)
 
【篠崎砂美】
 どもです。
 今回、バラバラなアクション四つだったのですが、だったのですが、だったのですが……(大事なことなので、三段エコー)。
 なんだか、思いっきり絡んでます。まあ、いつものことです。
 
【寺岡志乃】
 今回初めてフリーシナリオを体験させていただきました。
 どんなアクションが来るのか、ドキドキして待っていましたところ、ファンタジーあり、日常あり、ラブロマンスありの、1粒で4度おいしいリアクションを書かせていただくことに。
 執筆の間じゅう、大変楽しませていただきました。わたしを選んでくださった参加者さまにも、そう思っていただけているといいのですが……。
 
【沢樹一海】
Windows8を買ったはいいけど重すぎて結局XP&7を使っている沢樹です(XPはオフラインですよ!)
という時事ネタは置いておいて……。
今回も恋愛からシリアスから日常、そしてコメディまで色々な1日を書けて楽しかったです。舞台日時の都合もあり一部ネタバレが入っているような気がするかもしれませんが、肝心なことは何も書いておりません(当然だ)。
なので、何だ平和になるんだ〜と油断せずにシリーズをお待ちいただければと思います(意味深)
それでは、この度はご参加ありがとうございました!

【高久高久】
ぬああああああん疲れたもおおおおん。
(某S県の一部地域にて『この度は御参加頂きありがとうございました。皆様に感謝の言葉を述べたいのですが地球の高重力に抗えず立ち上がる事すらできません』という意味)