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学生たちの休日18

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学生たちの休日18

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 王 大鋸(わん・だーじゅ)の孤児院でも、今日はお月見会が開かれていました。
 月見里 迦耶(やまなし・かや)が、太神 吼牙(おおかみ・こうが)ペイジ・ペンウッド(ぺいじ・ぺんうっど)と一緒に、孤児たちを楽しませようとまた押しかけてきたのです。
「さあさ、どんどん食べてくださいね」
 太神吼牙が作ってくれた縁台に座った子供たちに、月見里迦耶が言いました。
 同じく側に作られたテーブルの上に、温野菜や、月見団子ふうにならべたウズラの卵入り肉団子をならべていきます。お月見団子と一緒に並んだそれらの食べ物は、ちょっとお月見という感じからは離れてはいますが、食べ盛りの子供たちには、こちらの方が合っているでしょう。
 代わりに、庭の金木犀の花びらがほろほろと散ってきて紅茶に落ち、なんとも秋らしい風情をかもしだしています。他にも、テーブルの上にはススキを初めとして、子供たちと一緒にみんなで摘んできた秋の七草などが飾られていました。
 お団子などをみんなで食べた後は、子供たちはなし崩し的に自由に遊び始めました。元気いっぱいです。
 月見団子用のお餅をついていた太神吼牙は、ハーシェルに乗って、もっと近くでお月様が見たいという子供たちを空の散歩に順番に連れていっていました。
 順番待ちの子供たちは、王大鋸がシー・イー(しー・いー)と共に遊んでくれています。そのモヒカンの上には、お花を持ったペイジ・ペンウッドが乗っかっていました。半ばモヒカンに埋まっているので、見た目は王大鋸がモヒカンに花を生けいてるかのようです。それを見て、子供たちもやんやと喜ぶので、王大鋸もちょっとまんざらでもないようでした。
「綺麗な月ですね」
 うさ耳をぴょこんと生やしながら、月見里迦耶がひときわ大きなお月様を見あげました。その月の前を、ハーシェルに乗った太神吼牙と子供たちが通りすぎます。
「ああ、そうだな」
 満足そうに、王大鋸もつぶやきました。


ニルヴァーナの休日



「えっ、もう到着した? 早いわよ!」
 連絡を受けて、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は慌てて地下に設置した照明装置の操作盤へとむかいました。
 アイールという都市は繊月の湖の上にありますが、アイール水路警備局は湖畔に立てられています。地上三階、地下七階の建物です。
 そこから、教導団の所持するサーチライトを総動員して湖にライトアップ演出をしようというのです。まあ、公私混同もはなはだしいのですが、とりあえず緊急出動するようなこともなさそうなので、お目こぼしというところでしょう。もっとも、経費はきっちりと後でホレーショ・ネルソンに請求するつもりです。
「いかがですかな、パラミタとは一味違う風景も面白いものでしょう」
 光に照らし出された湖の上をボートで軽快に滑りながら、ホレーショ・ネルソンが新妻に聞きました。
「うーん、おんなじ海上都市と言っても、ヴァイシャリーとはやっぱり違うねー」
 マサラ・アッサムが、まあまあ楽しめたかなと少し気を遣いながら答えました。もともとヴァイシャリー出身なので、こういった風景はむしろ見慣れた懐かしいもののように思えます。とはいえ、長い時を経て保存されているヴァイシャリーの町並みと、急造された近代的なアイールの町並みでは、同じ古風なデザインを中心としてはいてもどこか趣が違います。それぞれに、長所や利便性があるので、どちらがいいとは単純には言えませんが、それを比べてみるのもまた面白い見方でしょう。
「にしても、やたらピカピカしてるなあ」
 岸の建物からのびている色とりどりのサーチライトを見て、マサラ・アッサムが言いました。
「あれは、実は私が設計して建てた施設なんだ」
「へえ、それって凄い」
 ホレーショ・ネルソンの言葉に、マサラ・アッサムがちょっと目を輝かせました。
「あそこからは、アイールの街や湖を照らし出すことができる。そういう場所にしたかったのでね。もちろん、君に見せたい景色を照らし出すという意味もあるのだけれど」
「うん、ありがと」
 サーチライトに照らされながら、マサラ・アッサムがニッコリとホレーショ・ネルソンに微笑みました。そんな二人の影がいつしか一つに重なります。
「あーっ、ライト外して外して。今は照らっしちゃだめ!」
 それに気づいて、ローザマリア・クライツァールが慌てて照明を二人から外しました。