リアクション
キマクの休日 「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)! ククク、今日も世界征服日和だな! さあ、出撃準備をするとしようか!」 割烹着兼白衣を着て、清掃用の竹箒を持ったドクター・ハデスが言いました。世界征服の前には、やはり世界を綺麗にしておかねばなりません。今日は、御近所の共同清掃の日です。 なんとも、悪の大幹部にはあるまじき姿のようですが、昨今の悪の組織なんてこんなものなのかもしれません。 さあ、いざ出かけようとした、そのときでした。 ごすっ! ざくっ! どん!! 突然何者かに襲われて、ドクター・ハデスが倒れました。ドクター・ハデス殺人事件の発生です。 「はっはっはあー。事件だぜ。解決は、この武装メイド探偵朝霧 垂(あさぎり・しづり)に任せろ!」 事件を聞きつけてやってきた朝霧垂が、自信満々で言いました。 容疑者は三人。 第一の容疑者は、奇稲田 神奈(くしなだ・かんな)。 「ま、待つのじゃ。わらわは、ずっと道場で稽古をしておって、そんな暇などない」 思いっきり否定します。 「じゃあ、その手に持っているメイスはなんなんだ」 「メイスなど……、はっ、いつの間にこんなものが! む、無実じゃ。これはわしの持ち物ではない!」 慌てて、奇稲田神奈が否定しました。 「はいはい、弁解は後で聞くから」 とりあえず、現時点での最有力容疑者です。 第二の容疑者は、聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)。 「決まったな、武器そのものだし」 「ちょっと待て、俺は自分の部屋にある『王の選定の岩』に刺さって精神統一してたから、誰とも会ってないぜ? 俺が目覚めるときは、選ばれし王に抜かれるときと夕飯のときだけだからな!」 「だが、しかし、足許にある槍はなんなんだ?」 「はっ、まさに横槍!?」 誤魔化そうとしても無駄です。 「だが、奇稲田神奈は、ドクター・ハデスの元許嫁だ。動機なら、一番あるだろう」 「待て! 凶器が何を言うのじゃ」 「凶器ちゃう!!」 ええと、収拾がつかなくなりつつあります。 第三の容疑者は、機晶戦闘機 アイトーン(きしょうせんとうき・あいとーん)。 「完全に、こいつも武器だな」 「俺様は、ドックで機晶エンジンのチェックをしてたぜ? だいたい、戦闘機型機晶姫の俺が、どうやってハデスを撲殺するんだ?」 「では、そこにある棒はなんだ? 撲殺した証拠だろうが」 「だから、どこに手があると言うんだ!」 「変形するかもしれん」 ドきっぱりと、朝霧垂が勝手に決めつけました。 「そういえば、二人とも最近出番が少ないからのう、恨んでいても当然じゃろうて」 語るに落ちたなと、奇稲田神奈が証言しました。 「いや、機晶合体もできなくなった奴と一緒にしてほしくないな」 「アイテムと化している者が何を言うか」 もうしっちゃかめっちゃかです。 「で、どれが犯人だと思う?」 朝霧垂が、傍聴人の二人に聞きました。 「えーっ、ほんとにこの中に犯人がいるの?」 色っぽい獣人のお姉さんが、首をかしげました。相変わらず遊ぶときは変装していますが、デクステラ・サリクスのようです。 「全員犯人じゃないのか?」 シニストラ・ラウルスが、ボソリと言いました。すでにちょっと飽きてきているようです。 「よし分かった、犯人は、ドクター・ハデスだ!」 朝霧垂が、犯人を指名しました。 「ちょっと待て、なんで被害者の俺が犯人なんだ!」 死んだはずのドクター・ハデスが、急にむくりと起きあがって言いました。全身打ち身で、頭にはでっかいコブができています。 「ねえ、みんな、何やってるの。他の所で遊ぼうよ。マスターたちも待ってるよ」 突然そこに現れたケンちゃんが、みんなに声をかけました。 「ごめーん」 「あそんでたのー」 「ごあいさつしてたー」 ポンと、人の姿に変わったメイちゃん、コンちゃん、ランちゃんが、ケンちゃんと一緒に走り去っていきました。 「犯人は、あいつらだー!」 ドクター・ハデスが叫びました。どうやら、朝霧垂の推理は大外れだったようです。 「つまんない。他のアトラクションいこー」 デクステラ・サリクスが、シニストラ・ラウルスを引っぱって、建物を出ていきました。 外は、アトラスの傷跡近くにできた遊園地です。 「ちょっと、あのアトラクション、人気ないじゃない、どーなってるのよ」 魔威破魔 三二一(まいはま・みにい)が、浦安 三鬼(うらやす・みつき)を捕まえて文句を言っています。 「えーっと、須藤さんって人の、鳴り物入りの企画だったんだけど……」 謎解きアトラクションは人気だと言うことで、ストゥ伯爵の持ち込み企画を採用した浦安三鬼だったのですが、思いっきりあてが外れてしまったようでした。 ★ ★ ★ 「ただいまー」 「お帰りなさい」 アトラクションから戻ってきたメイちゃんたちを、アリクビ・オッキデンスたちが迎えました。 突っ込んでくるランちゃんを、ヒーク・オリエンスが難なく捕まえてだきあげます。さすがに、御挨拶を喰らうようなことはありません。 「アトラクションとやらは面白かったかい?」 ゆったりとした感じで椅子に座ったイックリーク・メリーディエが、コンちゃんに訊ねました。 「つまんなかったー」 あっさりと、コンちゃんが答えます。 「あらあらあら。じゃあ、何か別の乗り物にでも乗りに行きましょうか?」 「うん、そうしようよ」 イビ・セプテントの言葉に、ケンちゃんがうなずきました。 |
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