リアクション
ヒラニプラの休日 「るんるるるるーん♪」 教導団の施設の前で、ベンチに座ったラブ・リトル(らぶ・りとる)が脚をブラブラさせながら鼻歌を歌っていました。 施設内では、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)のメンテナンスを受けています。 コア・ハーティオンの調子がよくなっていくせいか、ラブ・リトルの調子も同調してよくなっていくようです。 「鈿女博士、皆。ありがとう。皆の心と歩めたおかげで、私は本当に幸せだった」 「えっ?」 調整用のコンソールにあるモニタに映し出されたデータを見ていた高天原咲耶が、コア・ハーティオンの言葉に、ちょっと驚いて振り返りました。 今現在、計測機器に繋がれているコア・ハーティオンは、寝ているのと同じ状態のはずです。だとすれば、今のは寝言なのでしょうか。 「そんなこともあるのかな」 ちょっと面白く感じて、高天原咲耶がクスリと笑いました。 「何、今の、最終回死亡フラグみたいなセリフは……」 中をのぞき見したラブ・リトルが、ちょうどそのセリフを聞いて呆れ顔を作りました。 そこへ、機材をかかえた夢宮 未来(ゆめみや・みらい)が戻ってきました。 「これは、どこにおけばいいの?」 「ああ、それはこっちにおいて。ちょうどいいから、ラブも一緒に運ぶの手伝ってくれる?」 「ええーっ……」 あからさまに、ラブ・リトルが嫌な顔をしました。いえ、嫌というよりは、めんどくさいという感じです。 「それよりも、お腹空いたかな。あっ、さっき、外でトカゲ見つけたんだよ。捕まえて丸焼きにしたら美味しいかも……」 夢宮未来の言葉に、高天原咲耶とラブ・リトルがあからさまに顔を顰めました。 「いらないの?」 当然です。 夢宮未来たちがほのぼの?している間、コア・ハーティオンは夢を見ていました。いえ、はたして、それは夢なのでしょうか。正確には、コア・ハーティオンの記憶領域をアクセスして最適化しているわけですが、人間でいえば寝ている状態です。 見た目はロボットですが、コア・ハーティオンは一応人間のはずです。遺跡からの発掘物ですが……。 記憶の中で、パラミタでの様々な経験が不連続に再生されていきます。同時に、いつの時代か分からない映像も、断片的に浮かんでは消えていきました。 遥かな未来、それとも悠久の過去、機晶姫らしき女性の姿がありました。それは、コア・ハーティオンの母親だったのでしょうか、それとも娘でしょうか、あるいは、まだ見ぬ伴侶かもしれません。そばに誰か男性がいるようですが、朧すぎてはっきりとはしませんでした。 パラミタでは、人の手で作り出された機晶姫や剣の花嫁もまた人です。それどころか、魔導書やギフトでさえ、人でした。種族を越え、何がしからの方法で彼らは子孫を残したのです。それが自然の摂理に依るものであれ、人の手に依るものであれ、陣地を越えた魔術に依るものであれ……。 そして、物語は続いていくのでした……。 ★ ★ ★ 「ああ、ただよりステキなものはないわ」 教導団の施設であるプールで泳ぎながら、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)がつぶやきました。 一緒に来ている鬼嫁のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に財布の紐のほとんどを締められているため、自由に使えるお金は雀の涙です。 本当は、宝くじに当たったり、そこそこのお給料ももらっているので、十分に趣味の散財ができるはずなのですが、結婚してからはそれも叶いません。 おかげで、精神衛生上ちょっとかんばしくありません。さすがにちょっとイライラしています。 そんなストレス解消のための水泳ですから、スタイルなど無視して思い切りバタ足なんかをしてみます。それがちょっといけませんでした、思いっきり足が吊ります。 「しまった……ごぼごぼごぼ……」 まずいと思ったときには、脚が動かなくて沈み始めました。 「そこ、溺れてる!?」 同じプールにいたジェイス・銀霞が、逸早くそれに気づきました。 「セレン!!」 ジェイス・銀霞がプールに飛び込むよりも先に、側で泳いでいたセレアナ・ミアキスが大あわてで駆けつけました。すぐに水に潜って、プールの底で沈んでいたセレンフィリティ・シャーレットを引き上げます。 プールサイドに寝かせて呼吸を確認すると、すでに活きをしていません。セレアナ・ミアキスが急いで人工呼吸を始めました。 「こんなことで死なないでよ……」 数度息を吹き込むと、幸いなことにセレンフィリティ・シャーレットが息を吹き返します。 目を開けると、心配そうなセレアナ・ミアキスの顔と、微かに唇に残る彼女の感覚がありました。 「もう、だ丈夫だから」 「よかった」 セレンフィリティ・シャーレットの言葉に、心底セレアナ・ミアキスがホッとします。 それを見て、セレンフィリティ・シャーレットは、ああ、自分はセレアナ・ミアキスを好きなのだと、こんな状況で再確認します。 でも、これでお金もくれれば最高なのにと思うセレンフィリティ・シャーレットでした……。 ★ ★ ★ 「もう少しだからな」 「やっぱり、手伝いますわ……」 「いや、大丈夫だ……」 キッチンに立つジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)を心配して声をかけたフィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)でしたが、やんわりと夫に断られてしまいました。 「お前は、ダイニングで待っていてくれ」 そう言うと、ジェイコブ・バウアーは、料理との戦いを再開しました。あらためて考えると、妻は毎日こういうことをしていたのかと感心してしまいます。ある意味、普段の任務よりも強敵です。 こんな仕事を、妊娠五ヶ月の妻にさせるわけにはいきません。せっかく内勤になったのですから、もっと身体を大事にしてほしいものです。 と考えるジェイコブ・バウアーをどうしたらいいのかと、フィリシア・バウアーの方はちょっと困ってしまいます。それが心配でもあり、ちょっぴり嬉しくもあり……。 「さあ、できた。食べよう」 そんなフィリシア・バウアーの幸せな悩みをよそに、ジェイコブ・バウアーが料理をならべ終えて言いました。これが、意外とできがいいのです。妙に小技の利く男というところでしょうか。フィリシア・バウアーとしては、嬉しいというか、ちょっと複雑な気分でもあります。 そこでジェイコブ・バウアーの携帯が鳴りました。緊急の出動のようです。 「行ってくる」 素早く気持ちを切り替えて、ジェイコブ・バウアーが家を出ます。 「無事に帰ってきて……」 少し心配になりながらも、フィリシア・バウアーがジェイコブ・バウアーに言いました。 「もちろんだとも」 次世代のためにもと、ジェイコブ・バウアーが答えました。 担当マスターより▼担当マスター 篠崎砂美 ▼マスターコメント
休日シリーズ、最終回です。 |
||