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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair
アリサ・イン・ゲート -Rest Despair アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

リアクション

 彼ら一同はジオフロントの研究所に戻っていた。
 今後の方針を決めるためだ。
 だが、そのなかに肝心のアリサはいないことに、キョウマが気づく。
「アリサはどうした?」
 アリスが答える。
「あ〜あいつはほっといてやってくれ」
 アリスが普通の声でそう言った。キョウマは「そうか」と追求はしなかった。
「まずは私を復元してくれた礼を言っておくぜ。ありがとよ。ちーっとばかし動きづらいがようやく一人用の体が手に入ったわけだし」
 ヴェルリアが尋ねる。
「本当にアリサを一人にしておいて大丈夫なの?」
「アノ程度でどうにかなるような精神してないぞあいつは。私の持っているあいつの記憶からすれば、どんどん周りが実験と薬物で廃人になっていく中、一人だけ正気のままでいられるような異常者だ。だからあんな能力使っても平気でいられる」
 フレリアが言う。
「そういえば、あの時、佐野を操ったのはあなたなの? あれはあなたの能力なんでしょう?」
「いや、ちがう。あれはもともとアリサの能力だ。前は私がアリサの能力を借りてやっていただけだ。まあ、能力増幅装置が有ったから使えたところもあるけど、私の使っていた能力はあいつが全部使えるはずなんだよ」
 唯斗が言う。
「つまり、今まで使っていなかっただけと?」
「さあな? ほかの能力に関しては知らねぇけど、無意識に干渉するってのはあいつの《精神感応》の範疇だぜ」
 舞花が話題を変える。
「そろそろ本題に入りましょう。私達がここに来た本当の目的はアリスさんの復元と【第三世界】の崩壊を止めるためです。RAR.が猶予をくれましたけど、誰も犠牲にしない方法はあるのでしょうか?」
 むしろ犠牲を払う方法を彼らは取れなくなった。誰も犠牲にしない方法を選んだ良心というエゴイズムを肯定しなければならない。それは相対的正義で犠牲をやむなしとした者への反抗と礼儀でもある。
 ハデスが言う。
「悪である俺が言うのもあるが、方法について考えがある」
 ダリルも続く。
「俺もだ。RAR.の前回答とは違うが、アリサとアリスが不可欠なのはかわりないが。協力してくれるか?」
 アリスがため息をもらす。
「おまえらには借りがあるからな。しゃあねぇが手伝ってやるよ。お礼はするっていっただろう?」

 そこから長い議論と方法の模索が始まった。
 いくつか出た案を整理検討評価しつつ、ときにRAR.にシュミレーションをしてもらい、実現できるかを模索した。

 そして計画実行のため、彼らはその準備に奔走することになる。
 虚構の世界を救うその約束の日に向けて。


 アリスがアリサに話しかける。
「よう。いつまでべそかいてるんだ私?」
「……」
「てめぇが引き金引いたんだからしゃあねぇけど。ああしないと私もあいつらもこの世界の奴らもやばかったんじゃねえか? 結局誰かがああするしかなかったんだよ」
「……」
「やれやれ」
 アリスはうなだれるアリスの胸ぐらを掴み持ち上げる。
「思ったよりも軽いな私」
「……」
「おまえはあいつを殺した。それは事実だ。同時に私達は救われた。引き金を引いたのがおまえだっただけ。おまえは選んだんだよ。この世界を救うための犠牲を。おまえが考えるのは犠牲にした奴への弔いじゃなく、おまえが選んだ道にいるまだ救い切れていない奴らのことを考えろ」
「……ひどい話ね。死んだ人も今から死ぬ人の重みもどちらも背負えっていうの」
「死ぬヤツのことまで考えんじゃねぇよ。おまえはおまえが救えるだけの命を考えればいい。ただそれだけだ。わかってんだろう私」
「そうね、私。結局私になにかやれってことでしょう?」
「そうだ。私たちはどうやらこの世界を救わねえぇといけないってことだ。方法はあいつらが考えてくれている。いいな?」
「ええ、やるわよ……どうせ私しかできないんでしょう?」
 アリサは自分で立ち、アリスに向かって言う。
「おかえりなさい。Alice」
「ただいま。Alice」