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賑やかな秋の祭り

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賑やかな秋の祭り
賑やかな秋の祭り 賑やかな秋の祭り

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■朝・祭りが始まり前に


 イルミンスールの町、朝。

 茶色基調で紅葉や銀杏、葡萄など秋らしい飾りが付いた落ち着いた屋台があった。
 そこを切り盛りするのは二人の可愛い店員さん。
「衣装もバッチリ揃って貸衣装屋さんが出来ます。これも王さんの孤児院の子供達が手伝ってくれたおかげですね。イメージした通りの秋の妖精そのものです」
 子供用の衣装を纏った月見里 迦耶(やまなし・かや)は並んだ大人、子供、幼児の3サイズの衣装を見回した。色は紅葉をイメージした赤系の物、銀杏をイメージした黄色系の物、落ち着いた茶色系と緑系の物が用意されており、服だけでなくストール、靴、帽子もあり、単品のみも貸出可能としている。
 近くの看板には、
「もし希望者がいたら空を飛ぶを魔法を使ってみんなを楽しませたいですね。それに木の葉が舞い散る中、妖精さんがたくさんいたら素敵ですし」
 皆が楽しめるサービスが書かれてある。
「おちゃもいっぱいあるね。フルーツハーブティーにハーブティー、ホットとアイスあるし、つかれたときにすわるいすも」
 ペイジ・ペンウッド(ぺいじ・ぺんうっど)はお茶屋の準備が出来ている事も確認していた。フルーツハーブティーは柿は紅葉型、梨は銀杏型にくり抜き葡萄、林檎、無花果等使用しており、ハーブティーは菓子に合い飲みやすく疲れに効く物を数種用意。
「王さんも来てくれたらいいですね。孤児院の子供達と遊びに来るとは言っていましたが……」
「……きっとくる。おまつりはたのしいから」
 迦耶とペイジがそうして噂を始めた時
「よぉ、店はどうだ?」
 王 大鋸(わん・だーじゅ)が自分が経営する孤児院の子供達を連れて現れた。
 同時に
「!!!」
 花妖精ペイジは照れて普段潜んでいる迦耶の髪に隠れてしまった。
 髪の毛に隠れられる事は慣れているため気にせずに
「……王さん、おかげさまで無事に開店する事が出来ました。ありがとうございました」
 迦耶は丁寧に衣装製作を手伝ってくれた事に礼を言った。ちなみに売り上げは孤児院に寄付しようと思っているが遠慮されたくないため大鋸には言っていない。
「そりゃ、良かった。で、もう一人、ここにいたろ? どうした?」
 大鋸はニカっと軽く流すなり先程いたペイジがいなくなった事に気付いた。
「……ここです……少し照れてるんです」
 迦耶は頭を指さしながらにっこり。
「……照れてねぇ……照れられるような外見してねぇんだがな。んじゃ、俺様はこいつらと祭りを一巡りして気が向いたら、また顔を出すぜ」
 参ったなと頭を掻いた大鋸は子供達と一緒に祭りを楽しみに行った。
「はい。楽しんで下さい」
 迦耶は手を振って見送った。
 その入れ替わりに
「おっ、ここはお茶とか売ってるんだな」
「頑張ってるな。良かったらお菓子をあげるぞ」
 元気な悪戯好きの双子ヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)キスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)が満を持して登場。手には可愛い飴玉。
「お菓子ですか。是非下さい」
「……たべたい」
 同時に手を差し出す迦耶とペイジ。
 そこに
「……子供相手に酷い悪戯はしないようにな」
 ロズが釘を刺し、双子をじっとにらむ。
「分かってるよ」
「いちいち、うるさいな」
 双子は文句を垂れながら別の飴玉と取り替えて渡した。
「ありがとうございます。お礼に三人に好きなお茶をサービスしますよ」
「……おいしいよ」
 飴を貰った迦耶とペイジはお礼にお茶を御馳走した。『調理』を有する迦耶が淹れた物なので味は保証済み。
 双子はアイス、ロズはホットでお茶を楽しんだ。
 その横では迦耶達が双子に貰ったお菓子を早速口に放り込んでいた。
 途端
「ふわぁ、小さくなりましたよー」
「おっきくなった」
 迦耶とペイジは互いの身長を交換した大きさになった。
「本当に妖精さんです」
 迦耶は『空飛ぶ魔法↑↑』で飛んで行動出来るので支障は無い。
「その効果、飴玉を全部舐めきったら終わるから」
「お茶美味しかったぜ」
 双子は自分達の悪戯の出来に満足するなり店を出た。
「……美味しかった、ありがとう」
 ロズも続いて店を出た。迦耶達が悪戯を楽しんでいる事にしっかりと安堵していた。

 三人を見送った後。
「本当の妖精さんの気分です」
「……ふしぎなかんじだよ」
 迦耶とペイジはそれぞれの変身を楽しんでいた。
 客が来てお茶を用意したりなどが必要の場合
「……いらっしゃい」
 ペイジが迦耶のフォローに回り事なきを得ていた。
「お茶、美味しいですよ」
 迦耶は華麗に飛び回りながら宣伝をしていた。仕事に支障はなかった。
 しばらくして、飴玉は全て溶け、二人は元の大きさに戻った。
 時間は朝から昼になり祭りを楽しんでいた大鋸が子供達を連れて迦耶の仕事の様子を見に来た。

 昼。
「すまねぇな、面倒を掛けちまって」
 大鋸がすまなさそうに言った。何せ子供達が迦耶達の店を手伝うと言ったためここに厄介になる事に。
「いえ、いいですよ。とても賑やかですし。いい宣伝になります」
 迦耶は笑いながら言った。ペイジはまだ髪の毛の中。まさにその通りで何やかんやと賑やかな子供達の様子を見て引き寄せられる客も少なからずいた。
 それからしばらくして
「……」
 何とか大鋸に慣れたペイジがもそりと迦耶の髪の毛から出て来てモヒカンにぶら下がった。
 しかし、
「おい、あんま、邪魔済んじゃねぇぞ」
 大鋸は主に連れて来た子供達の監督に勤しみ気付くどころではなかった。
「だってぇ、宣伝しないとみんなで作ったお洋服着て貰えないんだもん」
「喉渇いたし」
「ねぇ、ねぇ、あたしもお茶いれたい」
 子供達は朝から変わらず元気一杯であった。
 ふと
「あっ、頭に何かいるよ?」
 小さな男の子が大鋸のモヒカンにぶら下がるペイジを発見して指さした。
「ん、頭に……虫か?」
 虫が付いていると勘違いした大鋸は叩き潰そうと手を伸ばし、つまみ上げた。
「……って、てめえか。あぶねぇな。ほら、大人しくしてろ」
 その大鋸の手にいたのは花妖精のペイジであった。言葉と裏腹に小さな子がした事としてそれほど怒ってはいなかった。
「……はい」
 ペイジは元気に返事をして元気にひらひらと大鋸の周囲を飛んだ。
 しばらくして大鋸は子供達におやつを食べさせるために離れた。
 おやつから戻って来てはまた迦耶達を手伝い、夜は花火を見るために店を後にした。

 後日。
「お祭りの売り上げを子供達のために使って下さい」
 迦耶達は売り上げを寄付として大鋸に差し出した。
「あぁ、すまねぇな。感謝する」
 大鋸はありがたく迦耶達の思いやりを受け取った。