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リアクション
「ラズィーヤさん、お帰りなさい!」
「お帰りなさい」
「瀬蓮もとーっても心配したよ! ラズィーヤさんが戻ってきてくれて良かったです!」
「……お帰り、ラズィーヤさん」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が口火を切って、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)、高原 瀬蓮(たかはら・せれん)、アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)が次々とラズィーヤにお祝いする。
「皆さんにもご心配をお掛けしましたわね」
「よかったね、ラズィーヤさん。静香もよかったね」
美羽が二人にそう声を掛けると、静香はしみじみと頷いた。
「……うん。ありがとう」
ひとしきり六人は再会を喜ぶと、美羽とコハクは、瀬蓮とアイリスと共にお菓子を楽しみに行った。
サーブされ始めた巨大ケーキを受け取ると、席を探す。
「美羽、こっちに座って」
ほぼ立食形式ではあるが一角に椅子の用意されたテーブルがあり、コハクがそこに美羽を誘った。
「ありがとう」
いつも元気な美羽だが、今日はコハクに促されて座る。
ふわふわのケーキと、中央に盛られていた高級そうなお菓子を頂きながら、美羽は白百合会のスタッフが注いでくれた紅茶を飲む。
「……美味しいね」
「うん、この上品な味は久しぶりだなぁ」
瀬蓮は懐かしそうに言う。
瀬蓮もアイリスも、元々百合園女学院の生徒だった。今はヴァイシャリーを離れてキマクに行ってしまったが。
今はどんな生活をしているのか、美羽は気になった。
「静香も元気になったみたいだし、ラズィーヤさんが帰ってきて本当によかったよね」
「うん! やっぱりラズィーヤさんは百合園にいるのが似合うと思うもん」
「……そうだね。無事に帰ってきてくれて、僕もほっとしたよ」
喜ぶ瀬蓮を優しく見守りながら、アイリスも頷く。
アイリスもパラ実校長の一人ではあるけれど、清い乙女の園に創立から関わってきたほぼワンマンなラズィーヤと、フリーダムなパラ実に途中から関わったのではまた事情が違うのだろう。
「ヴァイシャリーとキマクじゃ、やっぱり違う?」
「うん。ヴァイシャリーはこう絵みたいに綺麗だけど、キマクは都会と野生が同居してるっていうか……でも、楽しいよ!」
「瀬蓮は、たまたま乗ったパラ実イコンを気に入って乗り回しているんだけどね、それで像賊――イコンに乗った盗賊団たちに一目置かれているんだ」
アイリスは笑って話した。
「僕は相変わらずパラ実の校長だけど、ドージェイコンの研究資料などの石原肥満が各地に残した遺産を探索している。
キマクは……順調に発展しているが、発展には弊害もつきものだからね」
「そうそう、最近はねー、ネットの問題も起こってるんだ!
この前見たニュースだと、『ドラゴン牧場のバイト中、ドラゴンの口の中に入って見せる動画をアップしてバイトをクビになる』とか『自分たちが種もみを強奪している動画をSNSにアップしたのがキッカケで捕まる』とかね」
「アイリスなら、きっとキマクやパラ実を立派にしていくだろうね」
コハクが言えば、アイリスは微笑した。
「そうなればいいな」
二人が楽しい毎日を送っているなら、美羽もコハクも嬉しい。ただ、ヴァイシャリーからキマク、ツァンダからキマクの距離を考えると、以前よりも旧友たちと会う機会が減ってしまっているのではないかというのは、少し気にかかっていた。
「美羽ちゃんは最近どう?」
「……えーっと……」
美羽は珍しく口ごもると、頬をほんのり染めてコハクと顔を見合わせた。そしてはにかみながら、
「私ね……もうすぐお母さんになるんだよ」
外見はまだまだ少女と少年のように見える美羽とコハクだが、互いに成人しており、今年の6月には結婚した。
その二人が遂に親になるのだ。
心なしか、二人とも前より大人びて見える――いや、本当に少し大人になったのだろう。
「おめでとう、美羽ちゃん!」
瀬蓮が目を真ん丸にして、息を止めて驚いて、それから満面の笑顔で美羽の手を取ってぶんぶん振った。
「ありがとう瀬蓮ちゃん」
「ちょっとセレン。ということは、無理させたら駄目だってことだよ。……おめでとう、二人とも」
アイリスは瀬蓮の肩をそっと抑える。瀬蓮はそれで少しは落ち着いたのか、紅茶をごくごく飲んでから、
「……うん、とってもびっくりした……でも、本当におめでとう! 瀬蓮も嬉しいな!」
コハクも頬を赤らめて照れつつ、
「今日はヴァイシャリー出会ったけど、今度は娘を連れてキマクに遊びに行くから」
と言うと、瀬蓮は美羽のお腹を嬉しそうに見ながら、
「女の子なんだ……そっか……楽しみだね」
「どちらに似るのかな? やっぱりお転婆な女の子になるのかな」
アイリスが悪戯っぽく言うと、コハクは、
「だから、その時は立派になったキマクやパラ実を見せてもらえないかな?」
「……立派に、ね。……うん、今より良くなっていると約束するよ。その時は瀬蓮と二人で出迎えよう。何年後になるかな」
「それより前に、美羽ちゃんはしばらく動けないでしょ? 産まれたらまず瀬蓮たちが会いに行こうよ!」
こうして、四人は再会の約束をし――数年後、約束は果たされる。
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