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【終焉の絆】滅びを望むもの

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【終焉の絆】滅びを望むもの

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情報整理と通信網

 洞窟の外。情報の統括を行うために待機していた沙 鈴(しゃ・りん)にセレンとミリアから洞窟内部のマッピング情報及び爆発時の様子が送られてきた。
「成程。すぐにまとめましょう」
「了解」
 鈴は綺羅 瑠璃(きら・るー)にも声をかけて、すぐさま情報の整理に入る。
 彼女達は兵站の様に活動していた。
 まず、この聖なる山に地元宗教にて何らかの禁則地になっていないか。
 これについては特に問題となるような箇所がないことがわかっていた。
「中は入り組んでいるのですわね」
「……地盤はそれほどヤワじゃないみたい」
 鈴は洞窟内部の情報を、瑠璃は爆発した際の様子を事細かにまとめ、分かりやすく整理する。
 地形データの把握は重要だ。
 これがあれば行かなくていいところがわかり、自ずと行くべき場所が導き出される。
 更に鈴達はイコン戦闘の衝撃に備えて、様々なルートを構築していた。
 脱出ルート、いざという時の進軍変更ルート。
 如何なる状況においてもスムーズに行動ができるようなルートの選定も怠ることはない。
 その隣、秦 良玉(しん・りょうぎょく)は空を見上げていた。
 そして大きく息を吸い込み、吐き出すと同時に「マンダーラ!」と叫んだ。

 ……………………
 ………………
 …………
 ……

 何も起きない。オリジンならば、マンダーラが出現していたはずだが。
「オリジンとは勝手が違うのか、はたまた洞窟内部で忙しいのじゃろうか……」
 瑠璃は少しの間考え込むが、すぐに前を向いた。
 考えたところで答えは出ないだろう。
 ならば、二人の手伝いをするほうが有益だ、そう判断を下した。
「何かあるかのう?」
「自力で下がれない負傷者が出た際、回収班を指揮してください。
 やることがない間は情報整理を共にお願いしますわ」
「了解じゃて」
「瑠璃。一旦整理を良玉に任せて。過去の資料も利用しつつルート構築をより入念に」
「わかったわ」
 鈴の息もつかせぬ指示に二人は即応していく。
 ある程度洞窟内部の情報が取りまとめられたところで、その情報は洞窟攻略をする部隊に転送された。
 その情報を元に、コリマとカケラとルシア、それを護衛する契約者たちが洞窟内部へと進んだ。


「リファニー……」
 ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)が小さく呟いた。
 月で出会った友達、リファニー・ウィンポリア(りふぁにー・うぃんぽりあ)が心配で仕方ない様子だ。
『ルシア、しっかりして下さい。リファニーを前にそのような顔では、声は届きませんよ』
 カケラがルシアに言葉をかける。
「……そうね。しっかり、しないと」
 そう言うルシアの顔は未だ暗く、その心には暗闇が充満しているようだ。
(『もし帰ってこなかったら』という恐怖があるのやもしれぬな)
 コリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)がそう言う。カケラもそれに頷き、だが今はどうにもできそうにないと感じ、洞窟を進むことに専念する。

 その一団に極力目立たぬように同行していた裏椿 理王(うらつばき・りおう)桜塚 屍鬼乃(さくらづか・しきの)
「通信状況どうだ?」
「意外と良好だね」
 洞窟内部の通信状況を懸念し、通信に関する機材を持ち込めるだけ持ち込んでいた理王。
 外で情報整理を行っている鈴とも協力し、常に通信を繋ぎ情報の共有をしている。
「それじゃ何もない今のうちに画像を取っておくか」
 理王の言葉に屍鬼乃が反応し、デジタルビデオカメラを取り出した。
 これには地形や地質等のデータを収集し、持ち帰った際に比較分析が出来るようにとの意図がある。
「出来れば村の人にも話を聞きたかったけど……さすがにそこまでの余裕はなかったな」
 オリジンとこの地域の相違点が気になり、村の様子なども調査しておきたかった理王だが、
 それを行えるだけの時間はなく、通信手としての役割を優先していた。
『こちら叶 白竜(よう・ぱいろん)。……通信は良好だな』
「抜かりはないよ旦那。あんまり無茶はしないようにね」
『そのつもりだ。よろしく頼む』
 短いやりとりで通信は切れた。
「さて……よろしく頼まれた以上は、お仕事しないとな」
 理王は周囲に気を配りながら、先行している偵察部隊や外にいる部隊との連絡を絶やさぬように、注意を払っていく。