シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

2021年…無差別料理コンテスト

リアクション公開中!

2021年…無差別料理コンテスト
2021年…無差別料理コンテスト 2021年…無差別料理コンテスト

リアクション


第10章 燃える料理人魂

「作るからには、1位を目指さないとなっ」
 浴衣を着てコンテストに参加した健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)は、勝利を手にしようと燃えている。
「お湯が沸いたぞ。セレア、麺を!」
「健闘様、了解致しましたわ!」
 セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)はタイマーをセットしてパスタを茹でる。
「パスタなんだし、普通の油類よりこっちだよな」
 ツー・・・。
 勇刃の方はフライパンにオリーブオイルを入れて弱火にかける。
「さっそく見に来たな!」
 香りにつられてきたエリザベートをちらりと見ると、牛肉を投げて破邪の刃を放つ。
 シュッ・・・シュパパパッ。
 肉に切れ目が鮮やかに光り輝いたかと思うと、きっちり真四角のサイコロのように斬る。
「お肉がキレイに切れちゃいましたぁ〜っ」
 パチパチと拍手され、“フッ・・・決まったな”と刀を鞘に納めた瞬間。
 サイコロステーキはフライパンへ落ち、ジュージューと香ばしい香りを放った。
「私はニンジンやほうれん草、赤ピーマンを切ります」
「野菜切りもわたくしもお手伝い致しますわ、咲夜様!」
「お願いします、セレアさん。まず、ニンジンを切りましょうか」
 天鐘 咲夜(あまがね・さきや)は片足かを軸に、ぐるりと身体を回転させチェインスマイトで、殺ぐようにしゅるしゅると皮を剥く。
 柄でトンッと叩き空中へ飛ばす。
 ズパパパ。
「食材を床へ落としてはいけませんから・・・」
 セレアは宙を舞うニンジンを切り、ボウルへボトトトと落とす。
「ヘタやタネはわたくしが切りますわ」
「―・・・はあっ!」
 ザシァアアーー。
 ほうれん草と赤ピーマンも切るというより、もはや斬るという感じだ。
「いよいよ私の見せ場が来たわね。フフフ、お姉さんに任せて!」
 キラリと目を輝かせた文栄 瑠奈(ふみえ・るな)は、火を通した肉と新鮮な野菜たちを炒め、ミルで軽く塩胡椒していく。
 バターを加えると熱でトロリと溶ける。
「瑠奈様、パスタが茹であがりましたわ!」
「セレアちゃん、お湯を切ってこっちへ持ってきてちょうだい」
「はいっ!」
「それと醤油を少々・・・っと」
 茹でたてのパスタを入れ、醤油をちょっと回し入れる。
「隠し味にこれもねっ」
 ゆず胡椒をこっそり加えて完成させる。
「気炎万丈スパゲッテイ、お待ちどうさま〜♪」
「ずいぶんと気合いが入っていますねぇ〜。これは期待できそうですぅ〜」
 色んな具が入ってる鮮やかなパスタ、西洋の焼きそばを頬張る。
「柑橘系みたいな香りがしますけど、これは・・・」
「秘密はな・・・これだ!」
「それが入っているのですかぁあ!?」
 味を飽きさせないゆず胡椒という正体に驚く。
「素材の大きさもバラバラじゃありませんわね」
「火もちゃんと均一に通ってるね」
「これくらい簡単よ♪」
 静香とラズィーヤの評価に瑠奈は得意そうに言う。
「おぉ〜いい匂いっ!はむ・・・うめぇえっ。短時間でこんなのも作れるんだな!」
 椿も西洋の焼きそばを満足そうに食べきる。



「シュクレ生地から作りましょうか」
 巫女服を着た葉月 可憐(はづき・かれん)は、ボウルに無塩バターを入れて滑らかになるまで練る。
 グラニュー糖を加えて白っぽくなるまで混ぜ、卵とバニラオイルをトロトロと少しずつ加える
「薄力粉をぱたぱた♪さっくりと混ぜてちょっとだけ」
 寝かしておくこと数分・・・。
 生地を2ミリくらいに伸ばし、星形の型に合わせてキレイに型抜きをする。
「オーブンを20分にセットして・・・。この間にカラメルソースを作っておきましょうね♪」
 ティアマトの鱗を両手に装備し、クルミやアーモンド、ヘーゼルナッツとカシューナッツ、ピーカンナッツを刻む。
 刻まれたナッツ類がボウルの中へ入っていく。
「とっても華麗ですけど、浴衣を着ていませんねぇ?」
「―・・・和服ですし、問題ないですよね?」
「参加するのは自由ですよぉ〜。参加するのは・・・♪」
「へぇ〜そうなんですね」
 ひっかかる物言いのエリザベートに疑問を持たず、刻んだものにヨーグルトと、ブランデーを香り付けするくらいの量を加えて混ぜる。
 無塩バターを鍋にぽとんっと入れ、水飴とハチミツをトロリと入れる。
 グラニュー糖も加え、コンロの火をつけて強火にかける。
 ぽこぽこぽこ・・・。
「泡が出てきましたね。ちょっと火を弱くして・・・」
 中火に弱め淡い飴色になるのを待つ。
「火を止めてさっき馴染ませておいたナッツ類とヨーグルトを♪」
 トロトロと注ぎいれて粗熱を取る。
 その頃アリス・テスタイン(ありす・てすたいん)は、屋台の看板を飾りつけをしている。
「ガーゴイルさん、ちょっと動かないでねー。照明がつくと思うけど、念のためにもっておいて」
 “たると屋さん”の看板を立てかけさせ、夜でも目立つように可憐の光る箒をガーゴイルに持ってもらう。
「2人とも、じっとしててねー?」
 ガーゴイルの頭の上にわたげうさぎをぴょこんと乗せる。
「なんかわたあめっぽいね。うん、可愛いよ」
 綿のふわふわマフラーをガーゴイルの肩にかける。
「後でご褒美にしっかり磨いてあげるから。我慢してねー?」
 無邪気な笑みを向けて2人の頭をよしよしと撫でる。
「向こうの準備は終わったみたいですね」
 香ばしく焼きあがったシュクレ生地にカラメルソースを盛りつける。
「あの屋台だけ明るいね?」
 光る箒の明りを見つけた静香は照明を覗きにいく。
「静香校長も来たようですし。こちらも仕上げといきましょう♪」
 ドォオオオンッと、機昌爆弾で爆発させる。
「―・・・わぁっ!?」
 爆風に驚いた静香はとっさに屋台から離れる。
「わたあめをふわ、ふわっと飾って・・・。これを子供に配ってきましょう」
「静香校長、怖がらないで!こっちにおいで♪」
 大丈夫だからとアリスが手招きをする。
「うん・・・」
「すごい音が聞こえたけど何?」
「おいで〜子供大歓迎だよ♪」
「僕・・・子供!?」
 ちょっと幼そうな雰囲気で北都は“子供”と言われてしまう。
「アヤ・・・私も今から子供になってきます。そう見えません?」
「クリス・・・」
 きゃるん☆とした瞳で見つめられ、止めるのも無駄だね、と諦める。
「あたしも子供だよ!」
 椿は外見を利用してタルトを齧る。
「年下を優先するですぅう〜っ」
「子供同士なんだし、ここは平等にいこうぜ!」
「ナッツいっぱいで、おいしぃですね」
「ずるいぞクリス!あたしのエリアを食べるなんてっ」
「えぇ〜?そんなのあったんですか?子供ですし、わかんなかったです」
「美味しそうなのに、食べに行きづらいよ・・・」
「うん僕もちょっと・・・」
 北都と静香は取りあうのはちょっと恥ずかしいかも、と3人を眺めている。
「また作ってあげますから、そんなに取りあわないで・・・」
「戦争だね♪」
 おろおろと困っている可憐の傍ら、アリスは子供ってそういうもんだよっというふうに言う。
「マシュマロもありますねぇ」
「―・・・マシュマロ?そんなのないけど」
「エリザベート校長、それはっ」
 がぶっ
 ぴきゅうぅうう!!
 北都が止めようとするものの、エリザベートにわたげうさぎが齧られる。
「ぎゃぁぁあ!!私のわたげうさぎさんがーっ!?」
 それを見たアリスは絶叫する。
 大パニックの末、タルトはあっとゆう間になくなってしまった。



「ふふふ。お祭りの出店といったらお好み焼きでしょ!」
 ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)はヘラを手に客を待ち構える。
 その浴衣姿でめっちゃ気合いが入っているように見える。
 ズタタタタタ。
「お好みには、このたっぷりのキャベツ!」
 ボウルいっぱいに切る。
「大きいボウルに少し移して、天かすもたっぷり♪ポイントのこれもっ」
 やまいももごりごりとすって種に入れる。
「隠し味に、いわしのすり身を入れておきましょう」
「おこのみやきどーですかー?ぜったいおいしいのよー。おはしつかわなくてたべられるからたべやすいのー」
 フランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)の方は屋台の前で、大きな声で呼び込みをする。
「みーなはおむねがちいさいからぽろりはないのー。せくしーろせんのやたいじゃないの。あじとくふうでしょーぶなの」
「ちょっとー!!それは余計ですよっ」
「だって、うそはよくないし。ちゃーんとよびこみしないと、とおののところにまけるよ?」
「くぅ、味で勝負するのですから、体形は関係ありません!」
 ムッとしたミーナはお好み焼きを分厚く焼いて、豚肉を乗せてひっくり返す。
 ヘラでスティック状にカットして紙でくるむ。
「くださぁ〜い♪」
「みーなのおむね、ちいさいけど。あじはほしょーするよ」
「それで評価するわけじゃないですよぉ♪」
「シャンバラ風お好み焼き、どうです?」
「ん〜・・・定番ですけど。手も口も汚れないですし〜。べちょっとしたイヤな感じ、しないですねぇ」
「味の方は・・・っ」
 ミーナは息を呑みコメントを待つ。
「どのあたりにシャンバラ風・・・の感じがするのか、気になりますねぇ?」
「いつでも食べ歩けて、いざっていう時に走りながらでも、栄養とれるのですよ!」
「ゆっくりと食事している暇がない時も、ありますし〜」
「栄養もあるみたいだけど。まだまだ無差別とは言えないね」
「料理の道って厳しいのですね・・・」
 主催者より厳しいミルディアのコメントに、ミーナはしょぼ〜んとする。
「でも改良するともっと、凄いのが出来るかもよ?」
「シャンバラ風を頑張って完成させてください〜」
「はい!もっと修行して、これをミーナのものにしてみせます!」
 改良してこれぞシャンバラ風!といえるのもを作ろうと、修行することにした。



「ここはやっぱり、校風に合わせるべきよね」
 白地に桃色の芍薬の花の絵柄の、描かれた浴衣を着て藤林 エリス(ふじばやし・えりす)は定番料理で勝負をする。
「5月の花ですねぇ?」
「そうよ、校長。季節感も大事だもの」
「さすが、私の生徒ですねぇ〜。お料理もドイツがメインみたいですし」
 80度のお湯でボイルされているフランクフルトを見る。
「もう食べていいんですぅ?」
「ううん、まだよ」
 中心部がほんわか温まった網の上にのせ、炭火の網焼きをする。
「ん〜、こういうのって。待つものなんですぅ〜?」
 遠火でゆっくり焼るそれを見つめ、時間がかかるのかと、むぅ〜とおあづけ状態だ。
「もっと火を強くするですぅっ」
「でもね、火が強いと中まで焼けないのよ」
「シンプルでも時間をかけているだね?」
「いくつか焼いてるから、綺人たちのもあるわよ」
「うん、ありがとう」
 両面にきつね色の焦げ目がつくまで数分・・・。
「熱いからね。気をつけて」
 エリスは手にミトンをつけて、ドイツ産の串付き、ジャンボフランクフルトを客たちに渡す。
「クリス、先に食べていいよ」
「いいんですか?ではケチャップをつけて・・・・・・」
「日独娘の出店風フランクフルトよ!本場の味はいかがかしら?」
「外の皮はパリッとしているのに、中はジューシーですね」
「僕にもちょうだい。―・・・うん、縁日とかより全然美味しいよ」
「急いで作っていたり、作り置きっぽいのもあるからね。一緒にされちゃ困るわ」
「日本とドイツの融合ですねぇ〜」
 炭火で焼いた味わいに、にぱぁ〜っとする。
「ソーセージを1から作ってくれると、もっと素晴らしいですよぉ〜?」
「それは、他の機会にね」
「かわぃ〜私の生徒なら、それくらい出来て当然ですぅ〜♪」
 まるで要求するかのように、フランクフルトにぱくつきながら言う。