リアクション
☆
「さあ……最後の仕上げと行こうじゃねぇか!!」
ブレイズ・ブラスは叫んだ。傍らの風森 巽と物部 九十九に手を差し出す。
「ああ……我も協力しよう。今夜は、この街の皆が……全員がヒーローだ」
その手を取った九十九に、ブレイズは言った。
「そういや、名前聞いてなかったな」
「あ、うん……九十九……物部 九十九」
「よし、九十九だな! いくぜ、先輩、九十九ぉっ!!!」
三人は気合を入れて、すでに眩しい光を放ち始めている情熱クリスタル本体へとビームを放つのだった。
「ジャスティス・ヒーロー・ビィィィムッッッ!!!」
「どうじゃ、皆無事か!!」
その眩しい光を放つ情熱クリスタルの元へ、多くの仲間と共に駆けつけたカメリア。
途中で天津 麻羅や水心子 緋雨と共に、友でありライバルである南部 ヒラニィとそのパートナー、琳 鳳明と合流していた。
そこに、アキラ・セイルーンが話しかける。
「あ、カメリアンレッド!!」
「あ、このバカ者が!! この間はよくも!!」
本当ならこの場で殴りかかりたいカメリアだが、さすがにそんなことを行っている場合ではない。
そのカメリアに対して、アキラは言った。
「よし、最後のとどめをカメリアにもお願いしようじゃないか!!」
「……え?」
間髪入れずにアキラの額から打ち出される巨大化ビーム!!!
「何じゃこりゃあああぁぁぁっっっ!!!」
気付いた時には、身長10mほどのウルトラカメリアが誕生していた。
「……アキラ」
「……なに」
「……後で覚えとれよ」
「……はい」
だが、とりあえずはウルトラカメリアも強力な助っ人には違いない。
実体が巨大化したわけではなく、中心にいるカメリアの周りを、ビームが覆っているような状態なのだ。
「ええい、麻羅とヒラニィもこの際じゃ、何でもいいから撃っておけ!!」
それを見たウィンターとスプリングは、叫んだ。
「す……すごいエネルギーでスノー!!」
「これなら……きっと大丈夫でピョン!!」
喜ぶ二人の精霊をそっと撫でて、ヴァル・ゴライオンは言った。
「よし……ならば、この夜と共に終わらせようじゃないか、この騒動を……キリカ!!」
ヴァル合図を受けて、キリカ・キリルクが自分の情熱クリスタルを握り締め、叫んだ。
「はい、行きます!! トラクタービーム!!!」
大きな網のようなビームがキリカの両手から発せられ、上空の巨大クラゲを一気に情熱クリスタル本体の上空へと集めた。
そこに、ヴァルの叫びがこだまする。
その声は、情熱クリスタルを通じてツァンダの街の全ての人間に届いた。
「さあ、最後のビームだ!!! 我らの日常を取り戻すため――叫べえええぇぇぇっっっ!!!」
その声に合わせ、人々の声が上がる。人が、道が、家が――街が、叫んだ。
「ツァンダからビィィィィィィィィィムッッッ!!!」
情熱クリスタルの本体から、皆の想いをのせたビームが発射された。それは、様々な想い、全ての感情を乗せた、真っ白な光になって撃ち出されていた。
その放射はいつまでもいつまでも続き――明け方の空に、幻想的な風景を映し出していた。
若松 未散と共にその光景を眺めていたハル・オールストロームは呟いた。
「……少しは、すっきりしましたかな?」
思えば、ハルの前でかなり弱音を吐いてしまった気がする。未散は、ハルのほうを見ないで、ぽつりと返した。
「……まあな」
「……」
そんな中、ルーツ・アトマイスは目を覚ました。
「あ、目が覚めた?」
そこにいたのは四葉 恋歌。吸血衝動にさ迷っていたルーツのい押し倒され、そのまま気を失ったルーツを放っておくこともできず、とりあえず公園へと運んだのである。
「そうか……我は気を失って……?」
ルーツは、妙にすがすがしい気分であることに気がついた。
事態には困惑しているが、身体のほうは妙に充実している。
ふと、なんなく口を拭うと、少しだけ赤いものが付着していることに気付いた。
「あ……ごめん、勝手に飲ませたよ」
恋歌はこともなげに言った。左手の手のひらをルーツに見せると、ナイフかかにかで切ったのだろうか、そこには小さな切り傷があった。
「……それは……自分で切ったのか!? 我に地を飲ませるために!?」
ルーツは驚く。直接吸血をしたわけではないので、恋歌が吸血鬼になることはないだろうが、それにしても無茶といえる行動だった。
「ん……だって……血、飲まないと落ち着かないでしょ? いいじゃない……互いに影響はないんだし、さ」
あくまでも軽く言う恋歌。しかしルーツはどうにも納得がいかなかった。
「恋歌……このような状況で、我が言えたことではないかもしれないが……」
その言葉に恋歌は振り向く。公園から眺める空は、情熱クリスタルから放たれるビームで眩しく照らされて、美しい情景を見せていた。
「どうして恋歌は……すぐに好きな相手を変えたり……我にもこうして……考えなしに行動しているように見える。
以前、言っていたな、恋人や友人を作るのは利用するため……目的があるのだと」
さすがに、恋歌も少しだけ言葉を失う。しかしルーツは、静かな声で続けた。
「……よければ……事情を教えてはくれないか……?」
恋歌は、意を決したように、自分のペンダントを見せた。先端についたロケットには、肌の黒い少女の写真がある。15歳くらいだろうか。
「これは……?」
「うん……これはね」
恋歌は、そっとルーツに耳打ちした。
「あたしの……一番大事な人なの。たった一度しか会ったことのない……けれど、大事なひと。
彼女はね、あたしのせいで人生をめちゃくちゃにされたんだ。だから……今は地球にいる彼女を、あたしはいつか迎えにいかなきゃいけない。
でも……今はそれができない。今のあたしには、一人で生きていく力はないから。地球でも、パラミタでも。
だから……協力してくれる人が……必要なんだよ」
恋歌は、話しながらぎり、と歯噛みした。
くやしい。くやしい。くやしい。
何もできない自分が悔しいと、恋歌の瞳が訴えていた。
「分かった……ありがとう……今はいい……まだ……」
ルーツは、そんな恋歌をそっと抱きしめて、その頭を撫でた。
今度は、恋歌は逃げなかった。
ルーツに頭を撫でられて、眩しいビームの光と朝陽に照らされて、むせび泣くのだった。
☆
ようやく長い夜が明け、朝陽が顔を出した。
神楽坂 紫翠とシェイド・ヴェルダは騒動を振り返りながら、帰途についていた。
「やれやれ……さすがに疲れましたね」
笑う紫翠を眺めながら、シェイドは呟く。
「ああ、そうだな。だがまあ……暗闇は元々オレの住処のようなものだしな……。
それに、ビームに照らされるお前を見るのも、悪い気分じゃなかった」
少し顔を赤らめながら、シェイドから視線をはずして、紫翠は言った。
「……何を言っているんですか。さぁ、さっさと帰りますよ」
結局、ウルトラカメリアは最後のビームが発射された際に、身体を覆うビームがクリスタル本体に吸収され、特にことなきを得た。
ヤジロ・アイリとネイジャス・ジャスティーの勝負は引き分け、それに便乗したライカ・フィーニスの一人負けとなった。
その結果としてレイコール・グランツが猫耳ミニスカメイドなったのかどうかは、記録に残されていない。
だが、アキラ・セイルーンとアリス・ドロワーズはカメリアの住処に拉致され、そこで一週間ほど猫耳ミニスカメイドとして働かされたとのことである。
☆
ようやくツァンダの街にも電気が回復し、平和な日常がやって来る。
人々はまた、それぞれの生活に戻っていった。それぞれの立場、それぞれの日常へと。
だが、そのひとつひとつが集まって、重なり合って街になる。
そのつながりを失っては、街は街としての姿を失ってしまうだろう。
だがもし、そんなことが起ころうとした時には思い出してほしい。
目からビームを放つこともできた、この日の情熱を。
皆がひとつになった、あの瞬間のことを。
『目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!』<END>
皆さんこんばんは、まるよしです。
今回のシナリオが11作目にあたります。
少しでも皆さんに楽しんでもらえれば、いいのですけれど。
まずは、イラストレーター更科 雫様に最大の感謝を。
更科様の個人企画に乗っかる形で持ちかけた話にご快諾いただけて、今回はシナリオを発表することができました。
本当にありがとうございました。
そして、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました、そしてお疲れ様です。
前回のシナリオで体調を崩してしまい、今回も微妙にそれを引きずった状態でしたが、どうにか間に合わせることができました。
暖かい私信もありがとうございます。まずは間に合うだけの最低限の『作品』を作ることができました。
こうしてスペシャルシナリオを二本担当してみて、自分はやはりまだまだ実力不足だなぁ、と感じる次第です。
少し期間をおきまして、ガイドの書き方やストーリーの練り方など、自分なりに考え直しながら、次の話を考えようと思っています。
皆さんのおかげで、こうして10回を超えてシナリオを出すことができました。本当に、ありがとうございます。
次回の予定はまだ決まっていませんが、おそらく7月になると思います。決定しましたら、またマスターページでお知らせできると思います。
例によって誤字、脱字が多いと思いますので、キャラ名や口調等、おかしいところがありましたら、遠慮なく運営様にメールでご依頼ください。
可能な限り対処させていただきます。
ご参加いただきました皆さん、そして読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。