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リアクション
■ この父にしてこの子あり? ■
よく手入れされた広い庭園に囲まれるようにして、茅野 菫(ちの・すみれ)の実家は建っていた。
大正時代によく見られるような和洋折衷の建物で、日本家屋の所々に洋風モダンなデザインが施されている。
イルミンスール魔法学校に入学して以来、菫が帰省するのは初めてだ。たまには顔を見せないと父の茅野 虎太郎が寂しがるだろうからと、菫はパートナーのパビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)を連れて帰省することにしたのだった。
「パパ、ただいま!」
家に帰るなり菫は父に抱きつ……こうとしたけれど、虎太郎の方が速かった。
「おお、お帰り」
さっと手を伸ばして虎太郎はパビェーダを抱きしめた。
「えっ、あ、ちょっと……」
「ふむ、ふむふむ」
焦るパビェーダのお尻を撫で回し、虎太郎は心得たように頷く。背中から腰へのラインを手でなぞったりと、もうやりたい放題に触りまくる。虎太郎の銀縁眼鏡の知的な外見も、これでは台無しだ。
「パパ、変わらないわね」
陽気な女好きだからなぁ、と菫は呆れるけれど、菫自身かなり父親の影響を受けているのは否定できない。おかげで小学生なのに、エロガキと呼ばれてしまう始末だ。
しばらくはパパも好きねと眺めていたけれど、あまりに虎太郎がパビェーダに過剰なスキンシップをすることばかりに夢中になっているので、退屈になってきて注意した。
「パパ、そんなことしてるとまたママに怒られるわよ」
注意の効果は覿面。虎太郎はぱっとパビェーダから手を放した。
菫の母はまだ33歳。大学卒業と共に虎太郎と結婚した、若くて気が強くて怒ると怖い存在なのだ。といっても喧嘩していても、途中からは怒っているのかいちゃついているのか分からなくなるくらいのラブラブで、周囲に夫婦仲の良さを見せつけて終わるようなオシドリ夫婦でもあるのだが。
虎太郎がパビェーダを解放するとすぐ菫は入れ替わりに抱きついて、久しぶりの再会を喜んだ。
「どれ、菫はどのくらい成長したかな?」
パビェーダにしたのと同じように、虎太郎はやっぱり過剰なスキンシップで菫の成長を確かめる。
「もうパパ。あたしの成長はまだこれからよ」
菫はかわいく頬を膨らませて怒ってみせた。
「はは、これは失礼」
虎太郎は菫から手を放すと、微笑ましげに親子を見守っていたパビェーダに改めて挨拶をし、菫が世話になっている礼を言った。そしてパビェーダが片思い中なのを言い当て、軽くからかう。
虎太郎のスキンシップには驚きはしたけれど特に拒否はしなかったパビェーダだったけれど、片思い中なのを当てられると途端に真っ赤になった。
「ど、どうしてそんなこと……」
「分かるさ。もう少し触らせてくれたらもっと色んなことが分かるかも知れないな」
「パパー、ほんとにママに言いつけちゃうわよ」
菫が上目遣いにちょっと睨むと、虎太郎は両手を広げて肩をすくめてみせる。
つい笑ってしまった菫にあわせて、パビェーダも笑みをこぼすのだった。
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