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校長帝国を倒せ!

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《VS 山葉 涼司》

 その頃、コハクのパートナー小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、4人の仲間たちと協力して、ニセ涼司と激しい戦いを繰り広げていた。

「これ以上、好きにさせる訳にはいかない!」
 高円寺 海(こうえんじ・かい)に変身した杜守 三月(ともり・みつき)は、【ヘルハウンドの群れ】の吐きかける炎の息を、《超感覚》《殺気看破》で避けながら、ニセ涼司に斬りかかる。

「遅い!」

 だが涼司は《サイドワインダー》による連撃を、【梟雄剣ヴァルザドーン】で易々と払いのけた。
 その背後から柚が《雷術》を浴びせるが、これも【破壊者の鎧】に阻まれ、有効なダメージを与えることができない。

「これで!」

 想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)の唱えた《氷術》が、涼司の動きを鈍らせる。
 夢悠は、オリジナルヒーロー『マスク・ド・マサラー2号』に扮しつつ、さらに雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)に変身していた。

「やぁーーー!」

 そこに、同じく『マサラーメイド』に扮する想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)が【ランスバレスト】で突撃する。
 しかし涼司は、身体を覆う氷を吹き飛ばしながら、《ブレイドガード》で防いだ。

 続く涼司の反撃を横に飛び退いてかわす三月と瑠兎子。そこに、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に変身した美羽が、【曙光銃エルドリッジ】で牽制を加える。
 ちょうどそのタイミングで、三月と夢悠の変身が解けた。

「今のうちに、キーを!」

 涼司を三月に近づけまいと、銃を乱射する美羽。

「柚!」
「瑠兎子!」
   
 キーをキャッチして、海に変身する杜守 柚(ともり・ゆず)
 一方瑠兎子は、ベルトの『M』字バックルを回転させて『3』に変えながら、キーを左胸に挿す。

「マスク・ド・マサラー!エム・スリャー!」

 どれほど激しい乱戦の最中でも、名乗りだけは忘れない。

「涼司ぃ!!」

 変身する2人を他所に、美羽は【伝説の十円玉】を握り締め、涼司に接近戦を挑む。
 どのキーにしようか散々悩んだ末、目をつぶって適当に選んだキーだったが、コレはコレで中々扱い易い。
 なんだかんだ言って環菜のコトはよく知っていて、感情移入しやすいのがいいのかもしれない。

「援護する」

 美羽と距離を取ろうとする涼司の足元めがけ、高円寺になりきった柚が、《氷術》をかける。
 一瞬涼司の足が凍りつき、その動きが止まる。

《ゴッドスピード》で、一気に剣の間合いの内側に入り込む美羽。

「ダダダダダッ――」

 裂帛の気合と共に、涼司に連打を浴びせる。
 《金剛力》で威力を増した拳が、《歴戦の必殺術》で涼司の鎧の隙間を的確に捉えていく。

「ダーーーーッ!」
「グゥゥゥ!」

 《則天去私》で極限まで威力を高めた強烈な一撃を、涼司に見舞う。
 涼司の身体が、数メートル程吹っ飛ばされる。

「行くわよ!必殺技!!」

 腰のバックルを更に回し、『3』を『W』に変えるエム・スリャー。
 【バントラインスペシャル雅羅式】を抜き、涼司を狙う。

「バントライン“クライマックス”スペシャル――紅蓮式!!」

 タイミングを図っていた柚の《火術》と夢悠の《ファイアストーム》、更に一瞬遅れてエム・スリャーの全弾射撃が涼司を襲う。、
 火と爆煙に包まれる涼司。

「や、やった……?」
「わからない……」

 煙の向こうに目を凝らすが、何も見えない。
 立ち込める煙と土埃は、中々収まる気配がなかった。

 やがて、3人の変身が解けた頃――。

 煙の向こうから、全身ボロボロになりながらも未だ闘志を失っていない涼司が、姿を現した。

「流石に今のは効いたぜ……。だが、今度はこっちの番だ!」

 手近な所にある自動車のスクラップを片手で引っこ抜くと、美羽に殴りかかる。

「じ、《自動車殴り》はカンベン!」

 車の軌跡を慎重に見極め、回避に徹する美羽。
 モノが大きいとは言え、涼司が凄い力で振り回しているので、下手にかすっただけでも大ダメージになりかねない。

「わ!うわ!うわわ」

 必死に避け続ける美羽。
 他の4人も、慌てて距離を取る。

(とにかく、何とかして後10分稼がないと――)

 美羽の背中に、冷たいモノが走る。



 その時、美羽と涼司の上に影が差した。
 何かが、陽の光を遮ったのだ。

「ナニ!?」

 空を振り仰ぐ美羽。
 逆光の中、宙を飛ぶ2台のバイク。
 その内の1台から、何かが飛び降りてくる。

「ソークーツァンダー、日輪キィィッックッッ!」

 銀色のスーツに身を包んだ風森 巽(かぜもり・たつみ) が、赤い【マフラー】をなびかせながら、涼司に三連続で飛び蹴りを食らわす。
 その蹴りを、車で受け止める涼司。
 巽は車を足場にして更にジャンプすると、《龍飛翔突》で威力を増した必殺の蹴りを見舞った。
 その強烈な蹴りは車をバラバラにし、さらに涼司を5メートルほども吹き飛ばした。

「な、何者だ!」

「通りすがりの仮面ツァンダーだ、覚えとけ!」


(〜 ナレーション 〜)

 仮面ツァンダー風森 巽は契約者である!
 校長帝国の魔の手からシャンバラの平和を守るため、ソークー1は今日も戦い続けるのだ!

(〜 ナレーション 終 〜)


「変身だ、八重!」

 着地したバイク型機晶姫ブラック ゴースト(ぶらっく・ごーすと)が、その背に乗る永倉 八重(ながくら・やえ)に叫ぶ。

「心に宿すは情熱の炎!その手に灯すは焦熱の焔!ブレイズアップ!メタモルフォーゼ!」

「変身だと!?」

「紅の魔法少女、ダブルド・ルビー!」

「他人の力で大暴れとは、正に外道の衆団だな!」
「悪人どもは成敗です!」
「ライダーに魔法少女か。面白い!」

 仁王立ちになって、ヴァルザドーンを構える涼司。

「行くぞ、ルビー!」
「ハイ!」

 ルビーに声をかけると同時に飛び上がり、先制の飛び蹴りを見舞うソークー1。
 下段から【大太刀『紅桜』】で突きかかる八重。
 だが涼司は左手一本で蹴りを、右手の剣で紅桜を受け止める。

「何っ!」
「そんな!」
「おらあァァァ!」

 涼司は2人を、《金剛力》で力任せに押し返す。

「成程……。だいたい分かった」
「ここからは、本気です!」

 2人は、同時にキーを取り出すと――

「「キャラクターチェンジ!!」」
「「シィーーーズル!」」

 同時に加能 シズル(かのう・しずる)に変身した。

「日曜の朝に外道と来たら、相手は侍と相場が決まってるんでね!」
「18代目と19代目当主の、夢の共演です!」

「訳の解らんことを!」

 今度は涼司の方から、2人に向かって行く。

「「加能シズル、参る!」」

 2人のシズルも、同時に涼司に向かって駆ける。
 ガキィン!という剣戟の音を合図に、激しい斬り合いが始まる。
 2人は、同じ姿という利点を生かして、右に左に動き、入れ替わり立ち替わり斬りつけて、涼司を幻惑する。
 涼司も《ブレイドガード》でこれを防ごうとするが、全てを受けきる事はできない。

「キャラクターキーが、校長キーのフィールドを中和している!これは行けるぞ!!」

 【ハイドシーカー】による測定結果を見て、ブラックゴーストが叫ぶ。

「そいつはな、何かにつけてメガネメガネとネタにされながら、二度と後悔しない為に覚悟を決めた漢の力だ!」

 巽の一撃が、涼司を切り裂く。

「あなたみたいな悪人が、自由にしていい力じゃないんです!」

 一太刀受けて怯んだ涼司に、連続して打ち込むシズル。

「は、早い……!」

 その全てをモロに喰らい、棒立ちになる涼司。
 
「これまでだ!乾坤一擲、百火繚乱!」

 《ヴォルテックファイア》を纏わせた【乾坤一擲の剣】で、上段から袈裟斬りに斬り下ろす巽。

「必殺!フェニックスブレイカー!

 金色の炎に包まれ、不死鳥の様になって涼司に突撃する八重。
 涼司の身体に、深く突き刺さる紅桜。

「こ、これが、キャラクターキーの力……」

 両手をだらりと垂らし、がっくりと膝を突く涼司。

「「成敗!」」

 両断された校長キーが大爆発を起こす中、涼司の身体がみるみる巨大化していった。