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ユールの祭日

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●●●張飛対馬超(仮題)

馬 超(ば・ちょう)「むむむ、関将軍はイコンをも倒してしまわれたか」
張 飛(ちょう・ひ)「なにがむむむだ」

そんな次第で両雄は戦いの場に立った。

張飛サイドにはパートナーである月島 悠(つきしま・ゆう)をはじめ、麻上 翼(まがみ・つばさ)遠山 和美(とおやま・かずみ)と3人の応援が付いている。

今日の悠は教導団の制帽をかぶっていない。
教導団員として来たのではなく、一個人として『他人の戦いぶりを見る機会だから』と見学に訪れていたのだ。
和美は一見すると筋骨隆々たる男児だが、実のところは女性である。



馬超の側もパートナーのコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)と、ハーフフェアリーのラブ・リトル(らぶ・りとる)が応援していた。

ラブはポンポンを手にして、応援歌を歌いながらチアリーダーのように踊っていた。

「ん? なんだこれは、ラブ……?」
「ハーティオン? これ知らないの? 『ポンポン』って言うのよ。
 あんた何時もこういう武術大会は参加する側だったから知らないかもしれないけど、応援する時はこういうのを両手に持って応援するのよ。

 さー、それじゃあたしも張り切って応援するわよー!」



  ムッツリだけどー♪
  やるときゃやるー♪
  馬超ー♪
  がーんーばーれー♪
  勝ったら今日は目玉焼きよー♪


「ほら、ハーティオンも恥ずかしがらず声出して!」


がーんーばーれー馬ー超ー♪
相手をぶっころせー!おー♪
ふれーふれー馬超ー♪
心臓一つきだー!おー♪



ハーティオンは「これでいいのか?」という疑問が拭えない。


「それでは参るぞ!」
張飛は馬にまたがり、一丈八尺の鋼矛「蛇矛」を振りかざす。

「天より賜りたこの一日に感謝を。馬 孟起、参る」
馬超は屈盧之矛という2メートルを超える大槍を握り締めた。

三国志演義において張飛は関羽をも超える武勇の持ち主として描かれている。
対する馬超も同じく、関羽が武勇において一目置いているとの記述が見られる。
いずれ劣らぬ豪傑ということだ。

馬超は羌族というチベット系遊牧民の血を引いていたという。
そのためもあってか、彼の馬捌きは並々ならぬ技量であった。
この恐るべき突進を、張飛は蛇矛で受け流そうとする。
張飛は一騎打ちの名手であり、この程度の突きならば払いのけるという自信があった。

が、馬の速度が乗った槍は思いのほか重い一撃であった。
衝撃で乱れた体勢を立て直しつつ、蛇矛での打撃を試みる。
しかし時遅く、馬超はすでにそこにいなかった。

素早く馬を駆って位置を変え、再び槍で突きかかる。
死角からの一撃を受けて、張飛はよろめいた。

「なんの!」

無双の剛力で振り回された矛が、馬超の鎧を捕らえる。
馬超は落馬しかかるも、かろうじて馬上に留まった。
さらなる反撃の一打で、張飛は馬から落ちた。

張飛は立ち上がった。
まだ戦えると矛を手にしたが、場外から関羽が止めた。

「そこまで。落馬したのだ、今回の戦いはお前の負けとせよ」
張飛は食ってかかる。
「しかし兄者、俺はまだまだ戦えるぞ」
「そんなことはわかっておる。
 だが、お前たちは葭萌関で一昼夜に渡って戦い、結局決着がつかなかっただろう。
 今日はそれだけの暇がない」

騎馬での戦いでは馬超にいくぶん分があったということであろうか。
徒歩(かち)ではどうなっていたかわからない。

張飛は納得行かぬという顔つきであったが、渋々その場から下がった。