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ユールの祭日

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ユールの祭日
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●●● 王様の剣

ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)は誰よりも早くこの戦いに馳せ参じた一人である。

「誰か知らないけど……感謝するわ。この絶好の機会に!」

ヘイリーは長いあいだノルマン人に深い恨みを抱いてきた。
この恨みを晴らす好機である!

「なんだかわかんないけど、ヘイリーが凄いことになっちゃってるわね……
 何かの罠じゃないといいんだけど」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)は興奮するヘイリーを見て心配しながらも、応援と見張りのために随行した。

そのヘイリー初戦の相手はアーサー王であるという。

「うーん。アーサー王はノルマン人による征服以前の王のはずだからノルマン人ではないけれど……まあ仕方ないか。
 ここで勝てば次こそは!」

とヘイリーが意気込んでいると、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が小さな女の子を連れてくるのが見えた。
アネイリン・ゴドディン(あねいりん・ごどでぃん)、アーサー王の英霊である……らしい。
そのあとからぞろぞろとついてくる屈強の男たちは、どうも円卓の騎士のようである。

ヘイリー、だいぶ拍子抜けだ。


「聖剣エクスカリバーを地面から抜いて……抜いて……ちょっと、まちぇてね!
 抜けない……がりゅ〜、抜けないよ……抜いて、わーん!」

アネイリンは泣き出した。

「お前本当はサー・ケイじゃないのか?」
ヘイリーがジト目で突っ込む。

サー・ケイとはアーサー王の義理の兄である。
彼は馬上試合で自分の剣を忘れてしまい、アーサーに剣を持ってくるよう命じた。
アーサーは途中で岩にささってエクスカリバーを思い出し、それを抜いてケイのところに持っていったのである。

その後ケイは自分で試してみたが、結局抜けなかったという。

「おまちゃせしまちぃた!」
抜けた。アーサーだったようだ。

「さぁ、騎士の中の騎士の王がもちゅ、エクスカリバーの威力を見ちぇる時!
 ……重くて、うごかちぇない
 びぇ〜んびぇ〜ん!」

大泣きしはじめた。

「……不戦勝でいいかな? あいたっ」
「不敬である! 王の御前だぞ!!」

謎の爺さんが、手に持った樫の杖でヘイリーをブン殴った。

「誰よ、爺さん?」
「ワシはこの子の保護者マーリンじゃ!」

魔術師マーリンといえばアーサー王の助言者として知られる人物だ。
有名人なので詳しい説明はいるまい。

「マーリンが何か謎の動きをしている!?
 まさか魔術か!?」

ヘイリーが警戒していると、マーリンは荷物から大きなラジカセを出した。
大音量の「カ・エ・レ・!」コールがスピーカーから流れだす。

「こ、これはひどい……
 まるであたしが悪者みたいじゃない!」

恐るべきマーリンの計略である!

「大丈夫です。やれば出来る子です!」
「これが終わったらご褒美に大好きなチョコレートパフェをた食べましょう」
「働いたら負けかな〜」
「グィネヴィアちゃんとデートしてくる」

円卓の騎士もよくわからないがアネイリンを応援だ!

「うん。みんなありがとう! ボクがんばる!」
アネイリンはエクスカリバーをよろよろと掲げ、よろよろとヘイリーに近寄っていった。

べち。

ヘイリーは弓で叩いた(打ったのではない)。
アネイリンはその場にぺたんと座り込む。

「うわあーーーん!」

「……ねえ、相手を泣かせたんだから勝ちでいいよね?」

珠代はうーんと唸ると、
「この戦い、いつまで続くかわからなんないから中断ね!
 特設会場を用意するからそっちで決着をつけてちょうだい!」
という異例の指示をだした。

こうしてヘイリーとアネイリン一行はそこから離れた公園のような場所に移されて、えんえんと戦いを繰り広げた。


最終的にアネイリンが疲れて寝てしまったので、ヘイリーの勝利となったらしい……。