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リアクション
プロローグ
とあるホテルの一室。
窓から見える夜景がいつもよりもやけに騒がしく見える。
「ついに……ついにこの時がやってきたのね」
遠藤寿子(えんどう・ひさこ)は手にグッと力を込めて、窓ガラスから外を眺めた。
高層ビルが立ち並び、ネオンが輝く街に雑踏の音が遥か彼方に聞こえる。
遠くにうっすらと存在を主張しているのは、明日の戦いの場である空京ろくりんピックスタジアム。
場内に響く歓声、人で埋めつくされた客席、スタジアムに反響するマイクの音。
目を閉じて目蓋の裏に浮かぶのは、今まで見てきたよりも圧倒される会場の空気。
雰囲気にのまれないようにと何度も深呼吸をして、端から端まで何度も見返してすこし傷みはじめた楽譜に目を落とすのだった。
――夢にまでみたグランドチャンピオンまで、あと少し。
“IDOL LiveFesta jam”、通称ライブフェスタ。
歌やダンスなどのパフォーマンスを行い、観客と視聴者の投票によってどちらがよりアイドルとして輝いていたかを競い合うイベントだ。参加条件にプロ・アマを問わないので、アイドルを目指すなら必ず一度は通るとまで言われているのがこのイベントだ。
寿子も大勢いる参加者のうちの一人だった。
だが寿子はやり遂げた。
一週勝ち上がっただけでも大したものだが、さらに九週勝ち残ってきたのだ。
そして、明日の試合に勝てば寿子は十週連続チャンピオンとなり、晴れてグランドチャンピオンの称号を得ることが出来る。そうすれば、きっと……。
決戦は、明日。
ついに運命をかけたライブフェスタの幕が上がろうとしていた。
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