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リアクション
この道は死へと続く
AM12:00(タイムリミットまであと7時間)
ひたすら暗く、そこにいるだけで異臭と湿気が押し寄せてくる。
ねとり。
べちょり。
靴底が、踏み込むたびに離れるたびに嫌な音を立てる。
衣服は先程通り抜けた汚水で汚れ、異臭の元は周囲なのか自分自身なのかも分からない。
「……死んでいても、臭いものは臭いのね」
先頭を歩いていた祥子が、自嘲ぎみに笑う。
彼女の周辺に浮かぶ光精が、その笑顔を浮かび上がらせる。
「大丈夫。もう麻痺してしまって分かりませんわ」
静かな秘め事が、そっと祥子に寄り添う。
「ク、さ……ゴメン、ごめんこんな臭い思いをさせてううん大丈夫一緒なら平気……!」
「ああ、そうですコハクさん、美羽さん、大丈夫、大丈夫ですから……!」
混乱しそうになる美羽とコハクの接ぎ死体を、慌ててベアトリーチェが落ち着かせる。
彼らが潜入を開始してから、もう何度目かの光景だった。
祥子と美羽たちは、横須賀基地の下水道を伝って内部に潜入しようとしていた。
下水までは、何度かコームラントジェノサイドをやり過ごしたものの、入ってからは静かなもの。
「そろそろね。気を付けていきましょう」
出口のひとつに当たりをつけ、そこに爆弾を付ける。
ゴゥウン!
爆破音。
「さあ、早く……」
静かな秘め事たちに手を指しのべながら、破壊された床の穴から顔を出して。
祥子は見た。
自分たちを取り囲んでいる、米兵たちを。
その向けられた銃の先の、穴までも。
「やれ!」
タタタタタタタ!
妙に軽快な音が響く。
急いで体を沈めた祥子は、間一髪無事だった。
しかし、それを見ていなかった静かな秘め事とイオテスは……
「静っ! イオテス!」
一瞬で体中に穴が開き行動不能になったパートナーの名を呼ぶ。
そんな祥子にも、再び銃が向けられる。
ばっ。
祥子の横を、風が通り抜けた。
風は、取り囲んでいる米兵の一角をなぎ倒す。
「行ってください!」
ベアトリーチェだった。
「美羽さんとコハクさんを、お願いします……」
それが最後の言葉だった。
銃弾の雨が降り注ぐ。
その隙をついて、美羽とコハクは祥子を抱え、高速移動で米兵の輪を突破する。
「やってくれたわね…… 後で後悔なさい」
犠牲は大きかったものの、横須賀基地への潜入は成功した。
これからは、死者の時間だ。
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