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リアクション
餌の時間
AM12:00(タイムリミットまであと12時間)
「あ……あぁ」
仁科 美桜(にしな・みおう)は木の影に隠れたまま、声にならない声を漏らしていた。
その眼前の光景に。
「う……書いてない、書いてない書いてない書いてない……」
「どうしましたぁ、お嬢さん。オレは何もしませんよ。ただ、とってもいい事を教えてあげるだけでね!」
「あ、ああ、紙、紙がぁ……」
手の中の紙切れを握りしめているのはグラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)と、名乗る少女。
そして彼女に話しかけているのは、ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)だった。
横須基地から生き残りの応援に出て、そして同行していた山葉 聡(やまは・さとし)や、堂島 結(どうじま・ゆい)らとはぐれてしまった美桜は、知らなかった。
ルースが既に死人であることに。
しかし、この状況が異常であることは十分理解できた。
「紙、何も書いてない……」
ぐしゃり。
グラルダは手の中に、今まで大事そうに持っていた紙を握りつぶす。
異形の死人に追われ、逃げ出したグラルダもルースが死人であることは知らない。
だけど、簡単だ。
そう。こんな簡単な事、どうして分からなかったんだろう。
「誰も信じるな」
「え?」
ぼそりと呟いたグラルダの言葉は、ルースの耳に届かない。
「私は生きる。周りは全部敵なんだ……っ!」
握りこんだ拳から、炎が上がる。
その拳を炎ごと振り上げる。
「おっと、面白い事してくれるじゃねえかっ!」
その拳をあえて全身で受けるルース。
「!!」
ルースの意図に気づいた時には、もう遅かった。
体を焦がしながらも、ルースはグラルダに接近していた。
抱きしめるように覆いかぶさる。
そしてその首筋に食らいつく。
「あ、ああ、あああ……」
グラルダの体から力が抜ける。
「……いいものでしょう?」
ぐたりと倒れこんだグラルダをそっと地面に横たえる。
「それでは、次と行きますか」
「はっ」
ルースは美桜の隠れている木へと向かう。
「隠れんぼは、終わりにしましょう」
美桜の目の前に、ルースの笑顔が広がった。
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