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第13章 どこに行きたい?

「お店は翔くんに任せるよ」
 桐生 理知(きりゅう・りち)は、恋人の辻永 翔(つじなが・しょう)と共に、空京に遊びに来ていた。
「ええっと、ファミレスでいいかな? 色々なもの食べられるし」
「うん、マナーとかあまり気にしなくていいから楽だよね」
 特別な日じゃないし、かしこまった場所じゃない方がいいなと理知も思っており、ランチの場所はすぐに決まった。

 お昼のファミレスはとても賑やかだった。
 それでも、騒がしいのとは違って、店内は楽しい雰囲気に包まれていた。
 メニューには、和食に中華にイタリアンにと、色々な料理が載っている。
「私は……パスタにしようかな」
「俺はサンドイッチ」
「あ、サンドイッチも食べたいって思ってたの」
「それじゃ、取り皿もらって、半分ずつ食べよう」
「うんっ」
 料理と飲み物を注文した後。
 理知は少し前の事を思い出して、ふふっと笑った。
「サンドイッチといえば、この前のパン競争も楽しかったね。翔くん参加してたら応援したよ!」
「はは……。ゴールできたかどうか。借りれないようなパン…もあったみたいだから」
「大丈夫、パン探しも協力するし」
 勿論理知は、普通のパンのことを言っている。
「翔くんはどんなパンが好きかな。美味しいと悩むよね」
「う、うん。ええっと……白いパンが食べたい気分。だから生……トーストしてないサンドイッチということで」
 理知が普通のパンのことを言っているのだと分かっていても、翔はパン…まつりの多種多様なパン…のことをつい思い浮かべてしまうのだった。
 届いたパスタとサンドイッチを、半分ずつ食べて。
 デザートには、翔はアイスを。理知はババロアを頼んで。
 それぞれ味見として一口ずつ相手のデザートを食べた。

「翔くんはこの後どこに行きたい?」
 食後にお茶を飲みながら、理知が尋ねる。
「百貨店のギャラリーで、小規模のイコン写真展が行われてるみたいなんだ。そこちょっと行きたいかも。理知は?」
「私もそこ行きたい! で、そのあとは……翔くんの家でゲームしたい!」
 理知の言葉に、翔は軽く驚きの表情を浮かべる。
「イコン対戦ゲームで翔くんに勝ちたいもん。家で練習したんだから!」
「そっか、うー……ん」
 翔は嬉しそうな、だけれど少し困ったような表情をしている。
「イコプラも増えたか気になるな」
「最近、カスタマイズ機のイコプラ化も進んで増えて、集めるのが大変でさ。今は寮にいるからそんなにスペース取れないしな」
「そっか」
「うん、だから、寮の部屋に来てもらうのは、ちょっと難しいけれど、近々、海京でアパートを借りるつもりだから、その時は……」
 翔の言葉はどことなく真剣だった。
「うん! それじゃ、約束ね。すっごく楽しみー」
 理知はとても嬉しそうな笑みを浮かべる。
 彼女の笑みを見て、翔の顔にも微笑みが浮かぶ。

 食事を終えて外へ出て、2人は百貨店へと向うことにした。
 ポケットに手を入れた翔の腕に、理知は自分の腕を絡ませて。
 明るい光の中、一緒に歩いて行く。