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第14章 青空の下で

 空京のオフィス街。
 大きな公園の側に、ワゴン車が数台とまっている。
 弁当等を売る、移動販売車だ。
 販売されている様々なお弁当目当てに、多くの会社員たちが公園へと訪れていた。
「さーて……ん?」
 お目当ての車に行こうとしたルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、不機嫌そうに歩いてくる青年の姿に気付いた。
「どうしたの、そんな顔して! 珍しいねえ、こんなところで会うなんて」
 すぐに青年――キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)に近づいて、ルカルカは彼の肩をぺちんと叩いた。
「あん? なんだてめぇらこそ。ロイルガードの宿舎も、宮殿もこっちじゃねーだろ」
「ルカ達はちょっちアソコに用事が有ってさ」
 ルカルカはそう言い、役所を指差した。
 途端、キロスの目の色が変わる。
「そうか、てめぇら結婚したのかッ、リア充めが!」
「ど、どどどどーしてそうなるの!? 大体ルカのフィアンセはここにはいないし」
「いるだろうが、そこに。いつもラブラブっぷりを見せつけやがって」
 キロスが剣先で示したのは、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だった。
 ダリルはルカルカのパートナーで一緒に住んではいるが、恋人ではなく、互いに大切な人は別にいる。
「らぶらぶじゃなーい。どうしてルカがダリ……」
「ふっ、笑わせてくれる」
 ダリルがあり得ないというように、冷笑した。
「なんかその笑い方、傷つくんだけど」
 ルカルカがむくれる。
「パートナーとして一緒に暮らしているし、仲は悪くはないが、2人は恋人同士ではないぞ」
 2人と同居しているコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)が真面目な口調で言う。
「恋人すっ飛ばして、事実婚か! クソッ」
「いや、そうではない。俺も一緒に暮らしてるし」
「多重婚か!」
 キロスはますます誤解?していく。
「あーあー、わかったわかった。何かあったのね。話聞いてあげるから。その誤解はもうやめて!」
 周りの人々がこそこそ噂を始めており、ルカルカは焦ってキロスを落ち着かせようとした。

 空京で待ち合わせをしていた男友達が逆ナンにあって、そのまま女の子達と遊びに行ってしまったらしい。
「ちっとばかり、待ち合わせ時間に遅れたからっておいていきやがって」
 そんな理由でキロスは荒れていたようだった。
 なんとか落ち着かせて、ルカルカは「一緒にご飯を食べよう!」と、キロスを出店へと誘った。
「ルカはカツ丼。まずは定番メニューでしょ♪ あ、タマゴカツ丼ね」
 ルカルカはまずカツ丼を注文する。
「卵以外のカツ丼とかあるのか?」
「うん、ほら……」
 コードの問いに、ルカルカは和風や洋風のソースカツ丼を指差してみせる。
「ふーん。食べ比べてみるか」
 キロスが、和風と洋風のソースカツ丼を両方注文し。
「フカヒレ中華丼で」
「俺は……オマール丼とステーキ丼だからミニサイズダブル」
 ダリルとコードもそれぞれ注文していく。
「あ、それならルカも」
 ルカルカはそれら全てをも注文しようとするが。
「お前は食べてからにしろ」
「う……っ」
 ダリルに止められてしまう。
「それじゃ、中華丼とオマール丼、ステーキ丼も」
 代わりにキロスが平然と全て注文した。

 それぞれ食べ物と飲み物を買うと、木陰でシートを広げて一緒にランチを楽しむことにする。
 ルカルカは自分のカツ丼を食べながらも、皆の弁当への興味も尽きなくて。
「あ、美味しそう。一切れちょうだいー」
 結局キロスの、和風洋風カツを貰ったり、コードのステーキを貰ったり、ダリルの中華丼に手を伸ばして避けられたり。
 やっぱりそれだけじゃ足りずに、ミニサイズの注文に行ったりしていた。
「よく食べるなあ」
「よく食うな」
「まったく、いつまで食べ盛りなのか」
 コールとキロスが口をそろえて、ダリルはため息交じりに言う。
「あなた達に言われたくなーい。そういうダリルも選んでるくせにっ」
「俺はミニサイズだったからな」
 ダリルも中華丼以外にも注文し、数種類楽しんでいる。
「キロスは普通サイズよね、一体いくつ食べる気!?」
「俺はお前の倍くらいは体重あるし、その分食わねぇと足んねーんだよ」
「筋肉は重いしねー……」
 ルカルカはキロスの均整のとれた体つきにため息を漏らす。
「脂肪は軽いから、お前はでかくてもそう重くないんだろうけど」
「デカい? ルカそんなに身体大きくないよ!?」
「いや、ソコだよソコ。ココだけ大きいだろ……」
 キロスが指差したのは、ルカルカの大きな胸だった。
「そ、それともなんだ。それは偽パイってやつか? 本物かどうかちょっと確かめ……」
「何いってんのよ、バカッ。そういうエロオヤジみたいなこと言ってるから、女の子に逃げられるのよ」
「う……っ。事実婚してるくせに、恋人までいる分際で」
「だから、違うって……。ああごめん、ごめん。落ち着いてキロス〜。ルカのマーボ丼あげるからー。代わりに肉貰うけどっ」
 暴れ出しそうになるキロスを再び宥めて。
 弁当を追加注文したり、デザートを買いにいったり。
 笑い合いながら楽しい時間を、過ごしていく。