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2023年ジューンブライド

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 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)は、既に夫婦となってはいるが、もう一度結婚式をしたい、ということで模擬結婚式のイベントに参加を決めた。
 二年前、歌菜たちが結婚式を挙げたときは、緊張して感極まって余裕がなかった。だからこそ、今度は目一杯式を楽しんで、幸せを噛みしめたいと思ったのだ。
 歌菜たちは高級ホテルに向かうと、早速ウェディングドレスとタキシードに着替えてきた。
「やっぱり、羽純くんのタキシード姿も…素敵だな」
 久しぶりにタキシード姿の羽純を見て、歌菜は「流石私の旦那様」と少し照れたように頬を染める。羽純も、正直に言えばタキシードは窮屈だったが、喜んでいる歌菜を見ていると大したことではない、という風に微笑んだ。
「記念写真もいっぱい撮ろうね♪」

 式場の一室で、二人きりの模擬結婚式が始まった。
(ニ年前の本番では、歌菜は泣き虫だったな)
 羽純は歌菜と並んで立ち、結婚式の日のことをいろいろと思い出していた。
 結婚前も結婚後も、色々な事があった。けれど、歌菜は歌菜で、羽純は羽純。そこには、変わらない想いと絆がある。それが何よりも得難く、大切なことだ--と、羽純は改めて思う。
「羽純くん、あのね、一つお願いがあるの」
 歌菜が、控えめに声を掛けた。
「ん、何だ?」
「あのね……、この姿でお姫様抱っこ、して欲しいな……って」
 羽純は、そう言って自身を見上げる歌菜が可愛くて、愛おしくて、つい笑いがこみ上げる。
「あー、どうして笑うのっ?」
「ごめんごめん」
「お姫様抱っこはね、女の子のロマンなのっ! 折角のウェディングドレスだから……お姫様抱っこで記念写真が撮りたいんだもん!」
 羽純に笑われ、思わず子供のように駄々をこねる歌菜。呆れられてしまったかな、と心配そうに歌菜が羽純を見上げる。羽純はふっと小さく息を吐いて、微笑み--歌菜をお姫様抱っこした。
 歌菜の中で、幸せが胸一杯に広がって行く。その幸せを表現したくて、歌菜はブーケを高くトスした。
「羽純くん」
 歌菜は羽純に、お礼のキスをする。
「今までも、これからも--よろしくね、私の旦那様。……だいすき!」
 歌菜たちは幸せを噛みしめながら、幾枚もの写真を撮ってもらった。今日という日の幸せを、形として見える思い出にして撮っておくために……。